マッスルゲート選手 コンテスト

「去年はベットの上、今年は舞台の上」乳がんを乗り越え、憧れのステージに立つ56歳トレーニーの軌跡

「去年のジャパンカップは病院のベットの上でした」。船木千鶴子(ふなき・ちづこ/56)さんは、昨年もマッスルゲートに挑戦し、1年の集大成としてジャパンカップに臨む予定だった。マッスルゲートというのは、初心者でも出やすい登竜門として広く知られているボディコンテストだ。年間を通して全国各地で開催されており、毎年12月に『ジャパンカップ』が行われる。マッスルゲート各大会の上位成績者が集う、いわば、全国大会のようなものだ。

【写真】船木千鶴子さんのメリハリのあるレギンス姿

1年の締めくくりとしてジャパンカップに挑戦する選手は多い。船木さんもそのうちの一人だったが、去年はシーズン中に乳がんであることが発覚し、出場を断念。乳がんの手術や治療を乗り越え、今シーズンはステージへと戻ることができた船木さんの軌跡を尋ねてみた。

筋トレを始めたきっかけは「自分に自信を持ちたかった」から。仕事とプライベートでメンタルがひどく落ち込んだことが背景にあったのだという。ボディメイクをするための目標として、マッスルゲートのウーマンズレギンスの出場を決意。最初は自己流でトレーニングをしていたが、なかなか変化や成長に結びつかなかった。

「種目もやり方も偏ったトレーニングになってしまい、トレーナーさんを頼ることにしました。最初から大会出場のことも共有し、プロに指導してもらいました。その結果、目に見えて筋肉量も増え体型も変化したんです!」

マッスルゲート出場のため、準備を進めていた船木さんを異変が襲う。

「去年の減量時に胸のしこりを発見。8月のマッスルゲート仙台大会、JBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)宮城オープン大会、10月のマッスルゲート市川大会を終えた11月に検査結果が出て、乳がんが発覚しました。12月に手術をして各種検査の結果、今年2024年の2月にやっと治療方針が決定したんです」

その後トレーニングを再開するも、最初は傷の痛みや身体の引き攣れで、上半身は思うように動かなかったという。「こんな状態では、今年の大会挑戦なんて夢のまた夢……」と思っていた船木さんだったが、それでもトレーナーは根気強く向き合ってくれた。徐々に身体が動かせるようになり、回復してからは容赦なく鍛えてもらったおかげで、「今年のマッスルゲートに挑戦できた」と喜ぶ船木さん。

去年のジャパンカップは、乳がんの手術後だったためベットの上で過ごした。しかし今年は念願のステージに立つことができた。1年越しの夢を叶えた船木さんは、喜びを噛み締めるようにこう話してくれた。

「命というものに少なからず向き合った結果、やりたい事は出来るうちにやる!未来の自分が後悔しないように今日を生きる!と決め、トレーニングを頑張ってきました。今年、憧れの舞台に立てることに感謝しかありません。すべてに感謝の気持ちを込めて出場します」

船木千鶴子さん

【マッスルゲートアンチドーピング活動】
マッスルゲートはJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト大会である。

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取材・文:小笠拡子 撮影:中島康介

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佐藤奈々子選手
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