マッスルゲート選手 コンテスト

外国航路の航海士がメンズフィジークで2冠達成 「上船時はプロテインを10kg分スーツケースに詰める」

外国航路の航海士として働きながら、トレーニングと競技を両立する伴裕音(ばん・ゆうと/30)選手。6カ月間家に帰らず海の上で働く特殊な環境に身を置きながらも、肉体を鍛え上げ、今回『マッスルゲート川崎』メンズフィジーク新人の部と一般の部168cm以下級で2冠を果たした。「船の上でのトレーニングは難しいですが、できる範囲でやり続けました」と語る伴選手。

【写真】逆三角形でバキバキ腹筋の伴裕音選手

船には一応ジムがあるが、設備は限られており、ダンベルやベンチ、運が良ければラックがある程度。さらに、船は常に揺れているため、「気象情報をチェックして、トレーニングメニューを決めます。例えばスクワットができる日かどうかなどです。揺れがひどい日は全くトレーニングができないこともあります」と、その厳しさを語る。それでも、週に4~6日、1回2時間のトレーニングを確保。忙しい船上生活の中でも身体づくりに励んできた。

栄養補給も一筋縄ではいかない。船には調理担当がいるものの、減量が必要な場合は自炊が必須。食材の調達は、船が寄港するタイミングで注文し、鶏むね肉を10~20kgほどまとめ買いする。「次にいつ港に戻れるか分からないので、切らさないように計算しながら買っています」と、食事管理も工夫が必要だ。また、プロテインも10kg分をスーツケースに詰め込んで持参。「寄港時に買うサプリは品質が安定しないので、自分で持って行くのが安心ですね」と語る。

トレーニングを始めたのは大学2年生のとき。早稲田大学バーベルクラブに入り、学生大会を目指して鍛えていた。しかし、卒業後は船の仕事に専念し、約5年間トレーニングから離れることに。そんな中、2年前に再び筋トレへの情熱が蘇り、今回が競技デビュー戦。「ブランクの間に失った筋肉は多かったですが、マッスルメモリーのおかげで戻りは早かったですね」と、短期間での復活を果たした。

船上生活との両立について、「当直制なので、4時間働いて8時間休むというサイクルを繰り返しています。二等航海士である自分の当直は12時から16時と0時から4時なので、本来寝るべき時間に起きていないといけない。そのせいで身体作りの面ではハンディキャップがあると感じます」と、その厳しい生活リズムを明かす。しかし、メンズフィジークのトップ選手の中にも同じような過酷な環境で戦う人がいることを知り、「自分も負けていられない」と奮起。

今後の目標については、「まだ団体は決めていませんが、全国レベルの大会への挑戦権を得ることが第一歩」と語る。非常に限られたジム設備、船の揺れ、食事の管理、深夜勤務──想像を絶する環境の中で、伴選手は言い訳をせず、自分にできる最大限の努力を続けている。その姿勢から、「どんな環境でもやる人はやる」という、シンプルながら強い真実を学ばせてもらった。

伴裕音選手

【マッスルゲートアンチドーピング活動】
マッスルゲートはJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト大会である。

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取材:FITNESS LOVE編集部 撮影:中島康介

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