3月23日に愛媛県で行われた『マッスルゲート Women’s contest』(以下、ウーマンズコンテスト)。ボディコンテストの登竜門とも呼ばれる『マッスルゲート』による初の試みで、女性限定の大会だ。
本大会のビキニフィットネスで優勝を収めた福留裕子(ふくどめ・ゆうこ/52)さん。トレーニングを始めた大きなきっかけは、「反抗期真っ盛りの息子に負けたくない」という気持ちだった。
母親である自分も頑張る姿を見せたい
福留さんがトレーニングを始めたのは今から5年前。当時、中学生だった息子さんは反抗期のど真ん中だった。
「力でも負けたくないし、バカにされたくなかったんですよ(笑)。母親の私も頑張るから、あんたも頑張りや!って。ボディメイクじゃなくていいと思うんですけど、仕事を頑張ってるって息子に言ってもピンとこんかなって思って」
強い気持ちを胸に、仕事・ボディメイク・育児すべてをこなした福留さん。計画的にスケジュールや段取りを組むようになり、やるべきことを細分化して考える癖がついた。
これは「ボディメイクでも一緒」だそうで、ここを鍛えるために必要なこと、期間を決めて減量するためにやるべきことなどを整理して取り組んできた。食事を例に挙げると、食べたものやタンパク質、カロリーなどを全て記録。
仕事終わりの飲み会も少しずつ減らし、仕事の後はトレーニングや家事のために使うような生活になったという。付き合いを減らすことのつらさが全くなかったといえば嘘になるが、「それでも自分を変えたいっていう気持ちの方が強かった」と声に力がこもる。
「トレーニングを始める前と今を比べると、体重は13kg落ちました。一番変わったのはお腹周り。ウエストはキュッと引き締まって、肌にハリも出てきたのがうれしいです!」
思春期の息子に背中を託す
現在は3日に1回トレーニングを休むようにしている福留さんだが、昨年まではほぼ毎日のように筋トレに励んでいたそう。出勤前もしくは出勤後の1時間ほどを使って、部位別にトレーニングを行う日々。
フィットネスを始めてから変わったこととして、身体の進化はもちろん「息子との親睦が深まった」と、福留さんは興味深い話をしてくれた。
「私が大会出場2年目のとき息子は中3でした。肌を黒くするセルフタンニングローションを背中に塗ってもらえないか、と息子にお願いしたのが最初のきっかけです。受験期と反抗期のダブルパンチで、初めは『はぁ?なんで俺が!』って言われたんですが、筋トレのおかげで私も負けん気が強くなっていて(笑)。息子も私の勢いに根負けしたようで、塗ってくれたんです」
この年から、息子さんは福留さんの背中にタンニングローションを塗る係になったという。以降、福留家の夏の風物詩になり、「今年もこんな時期やな」と言いながら背中を塗ってくれるように。これは息子さんが高校を卒業するまでの4年間、毎年続いた。
「回数を重ねるごとに塗るのが上手になってきて、『背中は任せてくれ』と言うようになりました。思い返せば、思春期の息子とコミュニケーションが取れるいい時間だったな、と思います。息子は去年、県外の大学に進学しました。もう塗ってもらえる機会があまりないと思うと、少し寂しいですね」
息子に負けたくない一心で始めたトレーニング。まさかこういった形で、子どもとコミュニケーションが取れるとは想像もしていなかったようだ。思い出を振り返る福留さんの声はとても穏やかだった。
【マッスルゲートアンチドーピング活動】
マッスルゲートはJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト大会である。
取材・文:小笠拡子 撮影:北岡一浩