4月6日(日)、大阪府・門真市民文化会館ルミエールホール(大ホール)にて、『マッスルゲート大阪大会』が開催された。女性カテゴリーの中でも近年人気が急上昇している健康的で引き締まったボディラインを競うレギンス部門。今大会のウーマンズレギンスフィットネス163cm以下級を制したのは、昨年から同カテゴリーで連勝をしている山本千佳(やまもと・ちか/41)さんだ。会社員として働きながら、産後の身体をポジティブに変えるべく、早朝トレーニングを欠かさない。現在は、マッスルゲートの各大会で1位を総なめにし、10年ぶりのビキニ部門への挑戦を控える選手だ。
一見すると順風満帆なフィットネス人生だが、過去にはボディメイクで苦しんだ経験をした。
「10年前、別の団体のビキニ部門に出たときはいわゆる『食べないダイエット』で、心も身体もすり減らし、ホルモンバランスを崩して、ほぼ拒食症一歩手前になっていました」
それがきっかけで、山本さんは「フィットネスとはなんだろう?理想の姿って何だろう?」と立ち止まり、トレーニングと食事への考え方を根本から見直すことにした。そして今、山本さんの軸となっているのが『自分を追い込まないボディメイク』だ。
「以前は、時間がないと焦って『とりあえず重たい重量でトレーニングしないと!』って思っていました。その結果、筋を痛めたこともありました。でも今は、一つだけでも丁寧にやろうと決めてるんです。どんなに忙しくても、焦らない。自分の筋肉と丁寧に向き合うスタイルは、私のメンタル面も成長させてくれたと思っています。自分の身体の声を聞ける人でいたい。ホルモンバランスに敏感な女性だからこそ、できない自分も受け入れられるしなやかさが大事かなって思います」
仕事や子育て、家族との時間もある山本さんは、時間がとれないときはトレーニング時間や方法も工夫している。
「あくまで趣味としてのフィットネスなので、家族や仕事に迷惑をかけるわけにはいかないので、朝早くに起きてトレーニングをしています。どうしても時間が取れないときは、子どもと公園に行ったときに、遊具で懸垂したり、やたらと子どもと鬼ごっこして有酸素運動をしてます(笑)」
まるで遊びの延長のようなトレーニングだが、これこそが山本さんの強さ。「とにかく楽しんでいるので、絶賛応援してもらっています。家族からみると、ジム=テーマパークです」と話すように、トレーニングは家族公認のお楽しみでもある。
減量中の食事も過去の食べないダイエットではなく、食べるダイエットに切り替えた。
「10年前の食べないダイエットは呪いのようで、なかなか洗脳が解けなかったです。でも自分の生活や食事を見直すことで、食べないと脂肪は落ちないことがわかりました。今は何を食べるのかを重要視しています。タンパク質、糖質、脂質のバランスを意識しつつ、自分に合う食材を選ぶことが最重要ですね。わたしの中で、手放せない食材が生ワカメ。お米、鶏、牛、豚、果物、海藻など、いろいろ試した中で、生ワカメは腸の調子がすこぶる良くなって。便通も肌も違いますよ」
山本さんにとって、食事は我慢ではなく快適さを生む手段となった。過去のトラウマを乗り越えて、今では10年ぶりの挑戦をしようとしている。
「今年は、10年前ぶりにビキニ部門へ再挑戦をしようと思っています。当時は間違ったダイエットで心も身体もボロボロになりましたが、やっと、今のわたしならチャレンジしてもいいと思えるようになったんです」
過去の失敗も、挫折を乗り越えようとしている山本さんの挑戦に注目だ。
【マッスルゲートアンチドーピング活動】
マッスルゲートはJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト大会である。
取材:柳瀬康宏 撮影:上村倫代
執筆者:柳瀬康宏
『IRONMAN』『月刊ボディビルディング』『FITNESS LOVE』などを中心に取材・執筆。NSCA認定パーソナルトレーナー,ストレングス&コンディショニングスペシャリスト、NASM認定コレクティブエクササイズスペシャリスト。メディカルフィットネスジムでトレーナーとして活動。2019年より毎年ボディコンテストに出場中。