2026年7月25日に開催されたマッスルゲート群馬大会で、女子フィジーク2位に輝いた新井理江(あらい・りえ)さん。競泳の日本選手権に出場した経験を持つ元アスリートでありながら、引退後には身長162.5cm、体重104kgまで増加。その後、「ギッテルマン症候群」の診断を受け、障害者手帳を取得するという大きな試練にも直面したが、体重52kgまで落としたメリハリボディでステージに立った。
【写真】新井理江さんの体重104kgあったとは思えないほど締まったバックポーズ
「障害者でも健全者に負けない」
その思いを胸に立ち続けたステージには、多くの人へ届けたいメッセージが込められていた。
「姉さん、死んだんだよ」──減量を決意した忘れられない一言
新井さんは学生時代、競泳で日本選手権に出場するほどの実力者だった。
現役時代は逆三角形の体型だったが、競技引退後は運動量が減り、気づけば体重は104kgまで増加してしまう。
その頃のことを、新井さんは今でも鮮明に覚えている。
「父と弟が街を歩く時、一緒に歩いてくれなくなりました」
さらにある日、弟の友人が自宅を訪れた際、「お前、姉さんいたよな?」と聞かれた弟が、「姉さん、死んだんだよ」と答える声を耳にした。
もちろん、その場をやり過ごすための冗談だったのかもしれない。しかし、その言葉は新井さんの胸に深く突き刺さった。
「減量しよう」
人生を変える決意をした瞬間だった。
体重104kgから再び歩み始めたボディメイク
今振り返れば、「大学卒業後も競泳や筋トレを続けていれば、104kgまで増えることはなかったかもしれません」と話す新井選手。
現在では愛知県で家庭を持つ弟から、Instagramを更新するたびに「姉ちゃん!群馬で生きとるよ!」と冗談交じりのLINEが届くという。
家族との関係も、筋トレを通して少しずつ変わっていった。
急に倒れて、障害者手帳を取得
しかし、新井選手の人生にはさらに大きな試練が待っていた。
3年前、委託パーソナルトレーナーとして勤務していたジムで自主トレーニング中に突然倒れてしまう。
搬送先で「低カリウム血症ミオパチ」と診断され、血液中のカリウム値は通常3.7〜4.8程度あるところ、わずか2.2しかなかったという。
その後、精密検査を重ねた結果、「ギッテルマン症候群」の可能性が高いことが判明した。
この病気は腎臓の働きに異常が生じ、カリウムをはじめとする電解質が尿として過剰に排出されてしまう病気だ。筋力低下やしびれ、麻痺などを引き起こすことがあり、日常生活にも大きな影響を及ぼす。
現在は医師の管理のもと、カリウム製剤などを服用しながら体調を維持している。
幼少期からしびれや麻痺を感じることはあったというが、原因は長年分からなかった。
だからこそ現在は、「筋トレライフを楽しめていること自体が幸せです」と笑顔で語る。
「障害者でもできる」を証明したかった
今回、マッスルゲート群馬へ出場した最大の理由は明確だった。
「障害者でも健全者に負けないことを証明したかった。」
その思いを込め、フリーポーズでは『ベルサイユのばら』の楽曲を選択。
憧れだったオスカルをイメージし、「女性らしい美しさ」を表現した。
大会を終えた今も、その思いは変わらない。
「障害者でもできることを、もっと多くの人に知ってほしいです」
重量よりもフォームを大切に
新井さんがトレーニングで最も大切にしているのはフォームだ。
「重い重量を扱うことよりも、自分でしっかりコントロールできる重量を選ぶこと」
チンニングやインバーテッドロウ、スクワットも同様で、フォームが崩れる重量なら潔く軽くし、回数を重ねるという。
無理をして怪我をするよりも、生涯続けられる身体づくりを優先している。
筋トレを一生の楽しみに
現在はトレーナーとして活動しながら、自身も毎日トレーニングを継続。日によってはダブルスプリットも行う。
そして今後の目標は、自身の競技成績だけではない。
「障害がある方だけでなく、介護や支援が必要でジムへ通えない方にもパーソナルトレーニングを届けたい」
筋トレには人生を変える力がある。
体重104kgだった過去も、病気との闘いも、すべてを受け入れながら歩み続ける新井さん。その姿は、「できない理由」を探してしまう私たちに、「できる方法」を考えることの大切さを教えてくれている。
【マッスルゲートアンチドーピング活動】
マッスルゲートはJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト大会である。
取材・文:FITNESS LOVE編集部 撮影:北岡一浩










