婦人科医として働く小泉絵理(こいずみ・えり/43)さんは、「大会に出た場合にどのくらいの減量で月経が止まってしまうのか、医学的に知りたい」との思いからボディコンテスト出場を決意した。
「妊娠していますか?」の一言で筋トレ開始
153cmという小柄な身体ながら、ステージではメリハリのある身体で存在感を示して、昨年の『サマースタイルアワード広島予選』のビューティフィットネスモデルショート部門で優勝、さらにはオーバーオール優勝、プロカードまで獲得している。小泉さんは医師としてレディースクリニックの副院長を務めながら、子育てと仕事の合間にトレーニングを続ける日々を過ごしている。
「第2子を出産後に体重が増えて、妊娠していないのに『妊娠していますか?』と言われたことがショックで、そこから宅トレを始めたのが最初の一歩でした。その後『もっと身体を良くしたい』と思い立ち、パーソナルトレーニングを受け始めました」
小泉さんは現役の婦人科医。フィットネスの大会に出場する女性の中に月経が止まってしまう選手がいるという現実を知っていたため、当初は大会への出場には慎重だった。だが、自分自身で「大会に出た場合にどのくらいの減量で月経が止まってしまうのか、医学的に知りたい」と思い、さらにその体験をもとにフィットネス競技者のための診療に生かしたいという強い思いから出場を決意した。
「無月経は放置しないで」。婦人科医としてのメッセージ
「パーソナルジム『MY FITNESS』の、信頼している重松祐介トレーナーの的確な食事指導もあり、結果的には月経を止めることなく減量することができました。体重でいうと、47kgから42kgまで減量しました。月経が止まらずに減量できたことは、自分にとっても大きな発見でしたね。具体的には、炭水化物を主にお米で摂取し、体重の増減を見ながら210〜230g/日ぐらい。脂質は40〜50g/日ほど摂取していました。大会直前もお米を食べられたのでストレスなく減量できました。やっぱり、知識と計画的なアプローチが大事だと確信しています」
婦人科医として、多くの女性を診てきた小泉さんは「無月経は放置しないで。ただの一時的なことではないです」と警鐘を鳴らす。
「女性ホルモンのエストロゲンが分泌されないと、子宮や卵巣の萎縮、骨粗しょう症、疲労骨折のリスクが上がるだけでなく、筋肉量や運動パフォーマンスにも影響します。減量中に無月経になった場合は、食事量を戻すことがいちばんの治療です。コンテストのために食事量を戻すことは難しいかもしれませんが、食事内容の見直しが必要です。また、急な減量が無月経の原因になることも多いので、減量期間の見直しも必要だと思います」
特に軽視されがちな栄養素は「脂質」だという。
「フィットネスの大会に出場されている方の減量方法で無月経になる原因は、炭水化物もそうですが、特に脂質を減らしすぎてしまうことです。脂質の摂取量が少なすぎると無月経になってしまいます。人にもよりますが減量中も脂質は少なくても40g以上は摂取してほしいです。脂質を極端に減らす減量法は女性に向かないので注意が必要です」
「また、無月経だけじゃなく、月経痛がひどい方も多いと思います。日々のトレーニングに支障が出ているなら、我慢せず婦人科に相談してください。今は良い薬もたくさんあります。『痛みは我慢するもの』という時代は、もう終わりです」
「脂質は悪」。このようや誤った認識はまだまだ世の中に溢れているだろう。小泉さんをはじめボディコンテストに出場する選手たちが良質な脂質摂取の必要性について語ることで、じわじわと世間に浸透していくのかもしれない。
【SSAアンチドーピング活動】SUMMER STYLE AWARD(サマースタイルアワード)はJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体である。全ての選手登録者はアンチドーピング講習の受講を必須としており、SSAから指名された場合はドーピング検査を受けなければならない。
取材:柳瀬康宏 写真提供:小泉絵理
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