ボディコンテスト団体『サマースタイルアワード』で活躍する玉島奈緒美(たましま・なおみ/49)さんは28歳のとき、「多発性硬化症(MS)※」と診断された。国が指定する難病であり、根本的に完治させる治療法はまだ確立されていないとされる病だ。
※脳や脊髄、視神経などの神経を守る「髄鞘(ずいしょう)」が炎症で破壊され、空間的・時間的に神経症状の再発と寛解を繰り返す指定難病
発症当時は未来を悲観し、深い絶望に落ち込んで何もできない日々を送っていた玉島さん。病状は決して安定していなかったが、当時子育て中であったため、幼い子どもたちの育児に没頭することでなんとか日々をつなぎ止めていたという。
【写真】49歳・玉島奈緒美さんが難病と向き合いながらもつくり上げた筋肉美

それから約20年が経った今、玉島さんは病気と向き合いながらも、心から生き甲斐を感じ、ライトが降り注ぐボディコンテストのステージの上に堂々と立っている。2024年、2025年、そして2026年。玉島さんはサマースタイルアワードのビューティーフィットネスモデル部門において、出場したすべての大会で入賞という実績を重ね続けている。
週5回のトレーニングを欠かさずこなし、働きながら3人の子どもを育てる母でもある。過酷にも思えるこの生活を玉島さんが続けるのは、決して「自分のため」だけではない。
難病と向き合いながら、発信し続ける理由
玉島さんがもともとトレーニングを始めたきっかけは、「食べてお酒を飲むのが大好きなので、太らない身体をつくりたい」という至ってシンプルなものだった。10年前に、一歩踏み出すように筋トレを始めた。
そこからボディコンテストという真剣勝負の場へ進むようになったのは、息子がトレーナーの道を歩み始めたことが大きな転機となった。
「息子の勉強や経験にもなると思って大会に出始めたら、自分自身にも明確な目標ができて、ボディメイクがどんどん楽しくなっていったんです」
しかし、玉島さんがストイックに競技へ向き合う背景には、もう一つの強い覚悟がある。
「28歳のときに診断された多発性硬化症は、脳や脊髄の神経系に影響を及ぼす難病です。症状は人によって千差万別であり、多くの場合は再発と寛解を繰り返します。自らの闘病とボディメイクの日々をInstagramを通じて発信することで、同じ病気や、似たような境遇で苦しんでいる方たちの、少しでも励みや希望になれたらという思いがあります」
病を抱えながら、並大抵ではない努力で引き締まった身体をステージで披露するその姿は、同じ状況にいる人々にとって何より説得力のあるエールとなる。
「人生、何があるか本当に分かりません。けれど、どんな困難があっても諦めずに努力し、自分の理想に向かっていったプロセスそのものに、自分自身で誇りを持てるようになってほしい。そうやって生きてほしいんです」
「ピーマン尻ではなく桃尻を」
49歳の玉島さんが、現在ボディメイクにおいて最も情熱を注いでいるのが「お尻の形」だ。
「マスターズ世代になると、お尻の側面のボリュームが削げ、下垂して四角くなる『ピーマン尻』になってしまう人が本当に多いんです。だからこそ私は、丸みを帯びてツンと上を向いた『桃尻』を目指しています。お尻に丸みがあるだけで、全体のシルエットが圧倒的に若々しく見えるからです」
年齢とともに筋肉が減少・下垂しやすいという大人の女性の現実に真っ向から立ち向かうため、玉島さんはお尻のトレーニング種目「ヒップスラスト」を中心に徹底的にお尻を鍛え上げている。
ヒップスラストを行う際、オフ期には自身の体重を遥かに超える高重量をセットする。重さに負けず、狙った大殿筋にピンポイントで刺激を届けるため、玉島さんはミリ単位のフォーム調整に妥協を許さない。
足を置く位置や角度、そして動作中の顔の向きまで細心の注意を払っている。「あごを軽く引いて、目線を常に前方(正面)に固定することで、背中が必要以上に反るのを防ぎ、骨盤の後傾をスムーズに誘導して、お尻の収縮感を最大化させられている感覚があります」
またサマースタイルアワードのステージで映えるエレガントな背中のアウトラインを構築するために、サイドレイズ、リアレイズ、ロウイングといった種目を取り入れ、部位別に細かく分割したメニューを週5回、集中してこなしている。
家族の応援を糧に挑戦し続ける
「毎回の大会では、専属トレーナーである最愛の息子がステージ裏で完璧なサポートを提供してくれ、客席からは家族全員が温かいエールを送ってくれています」
難病という大きな壁と対峙しながら、ステージに立ち続ける玉島さん。その姿は、身体を鍛えるという行為が単なる「見た目の変化」に留まらず、人生を前向きに、そして自らの意志で輝かしく生き抜くための最高の手段であるということを証明してくれている。
用語解説
ビューティーフィットネスモデル(SSA):モノキニを着用し、単に細いだけでなく、女性らしい丸みとしなやかさを残した引き締まった身体が評価される部門
【SSAアンチドーピング活動】SUMMER STYLE AWARD(サマー・スタイル・アワード)はJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体である。全ての選手登録者はアンチドーピング講習の受講を必須としており、SSAから指名された場合はドーピング検査を受けなければならない。
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取材・文:FITNESSLOVE編集部 写真提供:玉島奈緒美
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