A-wearを愛用して5年━━。
「常日頃、トレーニングのことを考えている自分にとって、とても相性がいい」と坂本選手は話す。まさに、“相棒"のような存在だろう。どのように活用し、身体の変化を感じているのか。嘉陽久美講師との対談から、リアルな声が聞こえてきた。
構成:小笠拡子 写真提供:一般社団法人A-wear協会・坂本陽斗 Web構成:中村聡美

大学生として臨む最後の大会へ向け、過去最高の「坂本陽斗」を造り上げる。コンディショニングを重視してから「一度も怪我がない」という(撮影:村下心一)
嘉陽 まずは、A-wearというツールを知ったきっかけから教えていただけますか?
坂本 高校生のころ、愛知県の実家から『ゴールドジム栄』(現在は別の場所に移転)に通っていたんです。当時そこに通う方々がA-wearを着用しているのを見て、存在を知りました。
高校生時代は肩の可動域に不具合があり、コンディショニングツールとして使ってみたのが最初です。その後、ご縁があってA-wearの開発者・内田悠人さんに直接ご指導いただく機会がありました。
解剖学の知識がまだ乏しかった自分でも、効果的な使い方ができたことで結果につながる場面がいくつもありました。かれこれ5年は愛用しています。
嘉陽 実際に使ってみて、どのような変化を感じましたか?
坂本 特に左肩の可動域改善に効果を感じました。僕は左の広背筋が小さく、右が大きいという左右差があったんです。当時から、ローテーターカフの動きが悪いのは、モビリティの問題だと感じていました。ただ、アウターが強すぎると、インナーの活性化が難しくて……。筋収縮させる場面が多く、脱力する癖がなかったので、モビリティ系のエクササイズがやりづらかったんです。
A-wearを装着して上半身の基本3種目を行うことで、力みが減り、明らかに動きがスムーズになりました。結果的にトレーニング時間も短縮され、3時間から2時間でオールアウトできるようになりました。
嘉陽 効果を感じたとき、どのような装着方法とエクササイズを行っていたのか、教えてください。
坂本 基本の「尺骨パターン」で装着していました。僕自身のオリジナルメニューは15種目以上ありますが、特に効果的だったのは、上半身なら「肩回し」、下半身なら「ニーアップ」ですね。非装着から装着に切り替える工程が重要で、順序を守ることで効果がより実感できるんです。
嘉陽 その変化がきっかけとなって、活躍できた大会もあったのでしょうか?
坂本 はい、2021年の高校生ボディビル選手権ですね。当時は〝野生の勘〞みたいなものでコンディショニングとトレーニングを組み立てていました。A-wearを用いながら40分のコンディショニングを行い、2時間のトレーニングへ。今思えば、勘で上手に組んでいたな、と思います。
大学進学後は生活環境の変化でコンディショニングをおろそかにしてしまい、身体の調子が悪くなった経験もあります。筋力はあっても、体幹の弱さが目立つようになって、そこからインナーの重要性に気づかされました。

高校3年生の坂本選手。2年生のときから感じていた左肩甲骨の違和感に対して、A-wearでアプローチを始め、結果につながった
嘉陽 継続的に使用している理由は、どんなところにありますか?
坂本 自分の身体の癖を理解し、そこに対して正しいアプローチができるからです。例えば、僕は右股関節の動きが悪くて、スクワットでは右膝に負担がかかり、対象筋に対しての効きに違いを感じていました。そういった際には、「ニーアップ→ヒップジョイントビーティング→ヒップリフト→レッグサークル→ワイドスタンススクワット」といった流れで改善しています。モビリティエクササイズは可動域の改善に役立っています。
嘉陽 トレーニング以外での使用例もありますか?
坂本装着が問題ない状況であれば、日常生活の場面でもつけるようにしています。また、目的に応じて装着方法も変えています。最近では、アジリティトレーニングでかなりの違いを感じましたね。特にマラソンでは、着用時と非着用時で、長時間の走行距離に明確な差が出たことが印象的でした。
嘉陽 坂本さんが指導者側の立場で、A-wearの効果を実感した場面はありますか?
坂本 アルペンスキー競技者のお客様に下半身のA-wearワークを行ったときのことです。股関節の機能が劇的に改善され、実施前と同負荷のスクワットを指導したところ、「(大腿四頭筋への)負荷が軽くなった!」という印象的な感想をもらったことがあります。
嘉陽 最後に、この記事でA-wearに興味を持った読者の方へメッセージをお願いします。
坂本 私は当初その見た目から、A-wearを上半身のみへのコンディショニングツールとして認識していましたが、肩の問題が改善した現在、下半身を含めた全身のモビリティアプローチツールとして活用しています。今回、その内容を一部公開しましたが、詳しい実践方法についてセミナーやパーソナルトレーニングにてお伝えしております。皆さんとお会いできることを楽しみにしております!
あなたの“手のアーチ”は崩れていないか? 簡単チェック!
「全然違う!」
写真のような左右差があった方は、A-wearの装着や掲載のエクササイズを実施して、“崩れ”を正しましょう!
坂本選手が選ぶ、A-wearエクササイズ
装着方法 小指と中指にA-wearを装着し、薬指を挟んで安定させる。3本の指を折り曲げ、写真の形を作る。
橈骨(とうこつ) 前腕にある親指側の骨 尺骨(しゃっこつ) 前腕にある小指側の骨
さかもと・はると
2003年生まれの愛知県県出身。身長169cm、体重は76kg(オン)、84kg(オフ)。日本体育大学に通う現役大学生兼パーソナルトレーナー。A-wear協会公認講師としても活動し、各種セミナーを開催。2021年全国高校生ボディビル選手権優勝、日本ジュニア男子ボディビル選手権3位、2022年東京クラス別75kg超級優勝、ゴールドジムジャパンカップ75kg超級準優勝
かよう・ひさみ
(一社)A-wear協会 講師育成担当者。大手フィットネスクラブを含む企業向け講習や、各種スポーツ競技の世界チャンピオンへのパーソナル指導実績あり。身体の動きから問題発見する能力が高く、丁寧な言葉選びとその人柄が相まって、同業(運動指導)者からの評価が非常に高いことで知られる。
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