「ビフォーの写真は、行きつけの割烹料理屋にて好物のすき焼きを堪能しているときです。一体、卵を何個食べようとしていたのか……」
さかのぼること2年前(2022年)。ばちさん(30)は、奔放な食事に増えゆく自身の体重に危機感を覚え、ボディメイクを開始した。
「旦那がもともとトレーニングをしていたので、私もゴールドジムに入会し筋トレを始めました。ただ、頻度は週1日程度で、スクワットやデッドリフトなどフリーウエイト中心のトレーニングはしつつも、食事は変わらず好きなものを食べていました」
これ以上、太らなければいい……。最初の志はその程度だった。当然、体重や見た目もほぼ変わらなかったという。
「体内計測の数値も同じぐらいをいったりきたり。測定のあと、『何か目標はありますか?』と聞かれ、何も答えられずフリーズしてしまったことを覚えています」
転機は、2023年。とある選手のセミナーを受けたことだった。“ダンシーあずさ”。ビキニフィットネスで、世界的に活躍する彼女を間近で見た瞬間、あまりの美しさに絶句したという。
「セミナーでボディメイクのための食事・トレーニングについての基礎を知り、その徹底した食事管理やトレーニングの内容に驚きました。終了後、選手の方々に混じって場違いを承知であずささんに自分の悩みを相談したところ、『漠然とトレーニングしているだけでは結果は出ない』と気づきました。そこで目標として、大会に出てみることを提案されました」
ばちさんは、すぐさま出場を決意。自己流ながらも大会に向けて力を入れ直した。トレーニングの頻度を週に3日と増やし、高たんぱく・低脂質な食事へと切り替えた。
「よく食べる食材は鶏胸肉、ブロッコリー、シャケ、魚の刺身などです。鶏胸肉を低温調理器具で茹でるかオーブンで野菜と一緒に焼いて、クレイジーソルトをかけて食べることが多いです。 1日100gずつを3、4回に分けて食べます。 飽きたときに刺身や焼き魚を入れてます」
揚げ物などの脂質の高いもの、塩分の多いものは避け、大好きだったアルコールもやめた。ただ、順風満帆な道のりではなかった。生活を変化させた当初は、夜勤や不規則な勤務時間と増加したトレーニングとの並行で睡眠不足となり、体調不良に悩んだと語る。
「生活リズムやストレス解消法を見直すようにしました。 ヨガ、日光浴、スポーツイベントへの参加を積極的にして、定時に帰れる日は7時間以上睡眠を確保することを意識しました。夜に娯楽を楽しむのではなく早起きして予定を組むようにし、寝れなかった仕事のあとは無理に運動せず、しっかり休むことを優先するようにしました」
こうして同年に、念願の出場を果たす。しかし、そこで見たのは他の選手との圧倒的な差だった。
「身体つき、ポージングの違い……大会で勝つためには、このまま自己流ではダメだと思いました。 カテゴリーにあった身体づくりやポージング練習の必要性を痛感し、セミナーのあとからずっと自分を気にかけてくれていた、宗石知子(むねいし・ともこ)選手にパーソナルトレーニングをお願いするようになりました。そこから、本格的に身体が変わっていきました」
こうして紆余曲折の2年の努力の日々が過ぎた。
体重は−8kg。弛んだ贅肉は消え、スポーティな筋肉を搭載した肉体へと進化。今年(2024年)、マッスルゲート(ゴールドジムが主催するボディメイクコンテスト。初心者向けのカテゴリーもあり、大会出場者の登竜門として位置づけられている)浜松大会、ウーマンズレギンスフィットネス部門で5位を獲得した。
「大会に出場したことで、たくさんの美しく素敵な選手の方々と出会う方ができました。控室や舞台袖でお話をしたり、一緒に写真を撮ったりと打ち解けて、大会後も連絡を取り合っています。マッスルゲートの舞台裏は、和気あいあいとしていてとても楽しいです。上位のベテラン入賞者も分け隔てなく優しく接してくれるなど、ほかに体験してきたスポーツの雰囲気とは違う、素晴らしい世界だと思いました」
ばちさんは、今後も大会出場に意欲を燃やす。
「モチベーションは、大会に出場することそのものです。前の大会より、何か一つでも良くなりたい。私のボディメイクの成功には、一緒に頑張れる仲間がいたことがとても大きかったです。宗石トレーナーをはじめとし、職場以外の交友関係が広がって人生が豊かになりました。身体が変わったことももちろん嬉しいですが、夢中になれるものに出会えたことで、自分に自信が持てるようになりました。これからもさらに人生を豊かにするため、ボディメイクを楽しんでいきます」
執筆者:にしかわ花
フィットネス関連では『IRONMAN』『FITNESS LOVE』『月刊ボディビルディング』に寄稿。広告・キャッチコピー・SNS運用なども行うマルチライター。ジュラシックアカデミーでボディメイクに奮闘している。
取材:にしかわ花 写真提供:ばち