ボディメイクは、適切な食事、睡眠、運動といった健康的な生活と密接に関係する。そのため、体型の変化だけでなく、体質や精神に大きな影響を及ぼすことは少なくない。ゆずさん(46)さんも、ボディメイクを通じて長年の悩みから解放された一人だ。
「私はヴァイオリン奏者をしているのですが、見た目の美しさも求められる職業ですので、太っていくとともに仕事が減りつつありました。身長163cmに対して体重が85kgまで増えたころには思春期のころからの持病であるアトピーが悪化、薬が上手く使えず象皮症となり紫外線過敏の痛みでゴミ出しすら行けない、という状況になりダイエットを始めました」
心身がボロボロになり、深夜に牛丼、頻回のスイーツ、深夜にイカ釣りに行ってそれをあてに飲むといった生活だったという。「バイクの後部座席から転がり落ちても脂肪がクッションになり無傷だった」と苦笑するほどの肥満体型から脱するべく、パーソナルトレーニングを受け始めた。
「その後、海外に在住していたんですが、あちらはパーソナルトレーニングの料金が日本と比較すると格段に安いんですね。なので毎日通い、食事指導も受けて鶏胸肉、ブロッコリー、オクラ、オーツといったローファットの食事を徹底しました」
みるみる体重は落ち、また筋肉もついた。2年で55kgまでのダイエットに成功したころに帰国、そこからは自宅にホームジムを作り、そのまま海外のトレーナーからオンラインでパーソナル指導を受け続けた。
「ただ、演奏用のドレスを着るためにどうしても体重が50㎏を切る必要があり、もう少し体型を絞りたいとなったときにケトジェニック(超低糖質・高脂質で行うダイエット法)を勧められました。炭水化物が大好きだったのでかなり躊躇しましたが、一度は試してみようとチャレンジしました」
MCTオイルを取ることから始め、ラム肉や鮭、鯖といった食材をメインに、炭水化物をカットした。
「驚くほどあっという間に体重が減って、47kgまで落ちました。また、私には体質的に合っていたようで、様々な変化がありました。まず、睡眠の質が良くなりました。続いて、耳鼻咽喉系とお通じの不調が改善し、ひどかった生理痛が全くなくなりました。一番の変化は、アトピーが治ったことです」
長年、悩まされてきたアトピーが治ったことで自分に合った食事の大切さを実感、野菜ソムリエとフィットネスフードマイスターの資格を取得した。
「うちは4人家族で、息子が重度の食物アレルギーです。栄養学で、個人で必要な栄養は違うということを学び、今は家族全員分、一人ひとりに合わせた食事を用意しています」
ゆずさんは現在、ヴァイオリニストとともに一風変わったパーソナルトレーニングも行っている。
「トレーニングのあとにヴァイオリンを聴いていただき、"オンとオフの両方で心身が整うセッション"をしています。また、会話を英語と日本語のミックスにしたり、その日の気分で楽器に触れることもできる、運動しながら学べるクラスとして好評を得ています。趣味で始めたのですが、口コミで徐々にお客様が増え、遠方の方からもご依頼があり、とても嬉しいです」
自分のボディメイクの体験を通して、家族、クライアントの方々にも良い影響を広げることができているのが何よりうれしい、と語った。
「身体が健康になるにつれ、心も健康になりました。ゆとりができ、食事、時間、自由、あらゆる選択肢があることに感謝できる気持ちを毎日持てるようになったのが、体型の変化よりも大きな実りかもしれません。これからも幸せの総和を広げられるよう、日々を丁寧に楽しんでいきます」
取材:にしかわ花 写真提供:ゆず(Instagram◼︎@yuzu_healthymusic)
『IRONMAN』『FITNESS LOVE』『月刊ボディビルディング』寄稿。広告・コピーライティング・SNS運用も行うマルチライター。ジュラシックアカデミーでボディメイクに奮闘している。