食べることを我慢していれば痩せられる──。そんな思い込みが、心も身体も追い詰めていった。
根津椎菜(ねづ・しいな/38)さんは、10代のころに過度な食事制限を始めたことをきっかけに、摂食障害に苦しんだ経験を持つ。そんな生活から抜け出し、今では健康的な身体づくりを伝えるパーソナルトレーナーとして活動している根津さんが気づいた『整える』ことの大切さを伺った。
【写真】根津椎菜さんのまんまるヒップとキュッと引き締まったウエストの艶やかボディ(ステージ写真含む11枚)

左2017年、右2025年
10代のころの根津さんは、痩せるためにはとにかく食べる量を減らさなければいけないと思い込んでいたという。
「自覚はなかったのですが、今思えば完全に間違ったダイエットでした。厳しい食事制限をして、運動もして、でも我慢し切れなくなって爆食してしまう。そうすると罪悪感で吐いてしまって、その繰り返しでした。当時の食事は、サラダだけ、春雨スープだけ、ご飯は80g以下など、とにかくカロリーを抑えることばかりを考えていました。1日まったく食べない日や、1日800kcal以下に抑える日もありましたね。でも食べない時間が長くなるほど夕方から夜にかけて強い食欲が出るようになって、甘いものやジャンクフードが止まらなくなってしまいました。食べないように頑張っているのに、最後には食べ続けてしまうんです。自分の意志が弱いからだと思って、どんどん自己嫌悪になっていました」
今振り返れば、それは意志の弱さではなく、身体が正常に働いていたサインだった。必要なエネルギーが足りていないからこそ、身体が強い食欲を出していたのである。しかし当時の根津さんには、その仕組みが分からなかった。
食べる量を減らすのではなく、食事を整えることで身体は変わった
転機になったのは、身体を変えたいと思ってトレーニングを始めたことだった。筋トレは初心者で、最初はやり方が分からず、膝や腰を痛めてしまったという。そこでパーソナルジムに通い、正しいトレーニングの方法を学び始めた。
「自己流でやっていたときは、頑張っているつもりでも身体を痛めることが多かったです。でも、正しいフォームや身体の使い方を教わることで、少しずつ安心してトレーニングできるようになりました」
食事についても、ただ減らすのではなく、必要な栄養をきちんと取ることへと考え方が変わっていった。独学でカロリー計算やPFCバランスを学び、その後は食育アドバイザーの資格も取得。炭水化物、タンパク質、脂質を極端に削るのではなく、バランスよく取ることを意識するようになった。
PFCバランスとは、三大栄養素であるタンパク質、脂質、炭水化物の配分のこと。ダイエット中でもこのバランスが乱れると、空腹感が強くなったり、身体の不調につながったりしやすい。
「私自身、食べる量を減らすことで何とかコントロールしようとしていました。でも結果的には、強い食欲、過食、自己嫌悪の繰り返しでした。大切なのは、減らすことではなく整えることだったんです。現在は1日3食をしっかり取って、我慢ではなく満たす意識を大切にしています。その結果、身体だけでなく心の状態も安定していきました」
トレーニングを続けるうえで支えになったのは、小さな変化を喜ぶことだと言う根津さん。
「挫折せずに続けるコツは、前のトレーニングより少しでもできたことや、身体の変化を喜びにすることだと思います。大きな変化だけを求めると苦しくなるので、本当に少しずつでいいんです」
今、根津さんは自らの経験を生かし、パーソナルトレーナーとして多くの人のサポートをしている。摂食障害を克服した経験があるからこそ、ただ体重を減らすことだけを目指す危うさも、食べることへの不安も分かる。
「今つらい状況にある方も、それは意志が弱いからではなく、身体が正常に働いているサインだと思ってほしいです。一人で抱え込まず、少しずつでも食べて整える方向にシフトしていけば、必ず変わっていきます」
これからもトレーニングを続ける理由について、根津さんは「自分で自信を持って、自分を好きでいられる身体でいたいから」と話す。かつては食べることを怖がり、自分を責め続けていた。だが今は、食べることも鍛えることも、自分を大切にするための手段へと変わった。その歩みは、ダイエットに悩む人にとって、我慢ではなく「整えること」が身体を変える近道であると教えてくれる。
【SSAアンチドーピング活動】SUMMER STYLE AWARD(サマースタイルアワード)はJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体である。全ての選手登録者はアンチドーピング講習の受講を必須としており、SSAから指名された場合はドーピング検査を受けなければならない。
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取材・文:柳瀬康宏 撮影:北岡一浩 写真提供:根津椎菜さん
『月刊ボディビルディング』『IRONMAN』『FITNESS LOVE』などを中心に取材・執筆。保有資格は、NSCA-CPT,NSCA-CSCS,NASM-CES,BESJピラティスマット、リフォーマー。メディカルフィットネスジムでトレーナーとして活動もしており、2019年よりJBBF、マッスルゲート、サマースタイルアワードなどのボディコンテストに毎年挑戦している。










