「やるからには全力で!」そんな思いでジム通いを始め、毎日のように筋トレに励んでいませんか?
でも最近、なんだか疲れが抜けない。やる気も前ほど出ないし、体重も変わらない…。それ、もしかしたら “やりすぎ”が原因かもしれません。
ボディビル元世界チャンピオン鈴木雅さんと、AthleteBody所属ボディビルコーチ本橋直人さんが“正しい疲労管理と回復の考え方”を解説。
「頑張っているのに成果が出ない…」と感じた時にこそ読んでほしい内容です。
筋トレ初心者の落とし穴⑦
やる気に満ちた状態でトレーニングをするのは良いことだが、何時間も何十セットも行うようなトレーニングは、かえってボディメイクには逆効果になってしまう可能性がある。
まだ若くて活力に満ちていたり、学生で時間があったりする場合は、ジムにいる時間も増えがちだ。しっかりと回復ができているならそのやり方でも問題はないが、不調が現れたり伸び悩みを感じたりしているならば、頑張りすぎを疑ってみても良いだろう。また、疲労が溜まった状態だと、正しい動作の習得が難しくなることも考えられる。

「筋肉にダメージがある状態では、運動学習に悪影響が出る可能性があるという研究結果が、2019年に発表されています。一度にたくさんのトレーニングを詰め込まないことで、フォーム習得にも良い影響が出ると期待できます。その上で、確実に漸進できているかは、、少しずつでも記録が伸びているかどうかを確認すると良いと思います」(本橋)
自分では頑張りすぎてしまっているかどうか気づきにくいこともあるだろう。その場合は、見た目や体組成の数値が変化しているかや、ジムでの使用重量が伸びているかどうかなどを指標にしてみると、客観的に現状を把握しやすくなるのではないだろうか。
トレーニングのやりすぎや頑張りすぎは、体調面への悪影響をもたらすこともあるという。

「疲労が蓄積してくると、寝付けなかったり途中で目が覚めてしまったりという、睡眠の質の低下が現れることがあります。また、場合によっては食欲不振も起こります。体調の変化に常に敏感でいるようにしたいです」(本橋)
健康的な生活を送るためにも、トレーニングのやりすぎには注意する必要があるようだ。
では、トレーニングをやりすぎているかどうかを知るにはどうすれば良いだろうか。一つの目安として、モチベーションの低下がある。それまでと比べて、普段の生活でモチベーションの低下を多く感じるようであれば、トレーニングのやりすぎを疑ってみよう。
また、他人と比べないことも大切だ。1日に何時間トレーニングしても問題なく、どんどん身体が変わる人もいるだろうが、そういった例は極めて特殊だ。自分にあったトレーニング量を知り、それを継続することが重要だ。

「自分がどこまで無理できるか確認するのも、自分を知るためには大切です。ただし、怪我には気をつけるべきで、怪我から学ぶのではすべてが遅いです」(鈴木)
回避法!
すずき・まさし
1980年12月4日生まれ。福島県出身。株式会社THINKフィットネス勤務。ゴールドジム事業部、トレーニング研究所所長。2010~2019年日本選手権9連覇。2016年IFBB世界選手権ボディビル80kg以下級優勝。現在トレーナーとしては主にアスリートやボディビル競技者のトレーニング、栄養指導にあたる。他にもアスレティックトレーナーや理学療法士に対して身体の原理原則をいかにトレーニングに落とし込むかといった指導にも携わる。
もとはし・なおと
1982年11月1日生まれ。埼玉県出身。AthleteBody.jpで活動中のパーソナルトレーナー。トレーナー歴17年であり、ここ10年は体組成改善に専門で取り組む。特にここ5年はボディビルやフィジークといった競技者のクライアントを多く指導している。久野圭一選手や昨年の日本クラス別で活躍した藤井貫太郎選手も指導を受け、指導前後の変貌振りがSNSで話題となった。
取材・文:舟橋位於 撮影:北岡一浩、舟橋賢、中島康介 Web構成:中村聡美
「ボディメイクで大切なのは疲労管理です。筋肉は休んでいるときに育つので、休養を取ることも筋肥大のための要素の一つであると考えないといけません」(鈴木)