ピラティスインストラクターの資格を持つ小倉シエカさんとともに、マスタートレーナーの菅原順二さんが解説するピラティス講座。
今回は「身体のケア」をキーワードに、ピラティスならではの対処法を紹介します。関節は硬すぎても柔らかすぎてもダメ。その理由とは?
【最新号『Yoga&Fitness』vol.13より】
取材・文●藤村幸代 撮影●中原義史
身体の不調を改善するための基本アプローチ「ジョイントリリース」とは
シエカ:今回のテーマは「身体のケア」ですが、ケアが必要だということは、身体のどこかに痛みや不調があるということですよね。
菅原:そうなると、ピラティスでのアプローチはやはり「リリース」がメインになると思います。たとえば肩こりであれば肩関節や胸郭周りの動きが悪い、腰痛なら股関節周りの動きが悪いことが多いです。動きが悪いということは、イコール固まって動かしにくくなっている状態ですね。
シエカ:その部分を、まずはリリースしてほぐしたり、緩めたりするというアプローチですね。
菅原:僕のピラティスの師匠は「ジョイントリリース」という言葉を使っていますが、これは「関節を動かしやすくフリーにする」というイメージだと思います。
シエカ:ジョイントリリース。わかりやすい言葉ですね。関節は機械的にカクカク動くわけではなく、本来は滑ったり転がったりなど滑らかな動きをするもの。その本来の動きを取り戻すために、ピラティスでジョイント部分をリリースして、詰まっているスペースを広げてあげるわけですね。特に私たち現代人は関節が固まりがちで、きちんと身体を動かせていない人が大半かもしれません。
菅原:しかも、そんな身体になっていることに気づかず、アウターマッスル優位で鍛えたり、無理やり動かそうとする人も少なくありません。そうではなく、関節をスムーズに動かすことで骨についているインナーマッスルから身体の動きが起こる、というのが人間の動作における理想ですよね。
シエカ:自分の身体が、きちんと内側から滑らかに動いているか、改めて見直した方がよさそうですね。
理想の身体づくりの三段論法:リリースする、動かす、鍛える
菅原:関節の可動域が広い=身体が動かせている、と思っている人も意外と多いようです。よく「股関節を180度開脚させたい!」という声を聞きますが、人間の股関節の可動域は90度から120度くらいあれば十分なんです。それを超えると逆に不都合が起こることもあります。
シエカ:可動域が広すぎると、それだけ開いたままの姿勢をキープする筋力や、脚を閉じる筋力が必要になりますよね。
菅原:相撲の力士は股割りで股関節を180度開く稽古をしますが、どんなに高い四股を踏んでも筋力でコントロールできています。バレリーナも同様で、あの究極の柔軟性は、それを制御する筋力があってこそですよね。
シエカ:柔軟性が高くても、制御不能な関節は残念ながら使えない関節になってしまいますね。
菅原:適切な関節の可動域、それを安定させる筋力、そして動きをコントロールする力。この3つのバランスで人間の身体は成り立っています。今回ご紹介するエクササイズで関節をリリースしたら、次は動かせる身体づくり、そして安定して動き続けられる肉体づくりへとステップアップしてほしいと思います。
マスタートレーナー 菅原順二さんのピラティスレッスン
関節リリースで動ける身体を手に入れる
厳選7エクササイズ
小さな動きの中にも、関節周りを気持ちよく伸ばすストレッチや、関節を安定させる筋力トレーニングが凝縮されたハイブリッドなエクササイズをご紹介します!
Exersize1
頭・頚板状筋など固まりやすい首まわりの筋肉をリリースします。頭痛がラクになる人も。
Yes・No運動
↓
Point
ボールの揺らぎを利用しながら行いましょう。首まわりの筋肉は頭痛と関連性があるので、ほぐすことで頭痛が軽減される人もいます。
Exersize2
フラットバックの人にオススメ。腰椎のカーブを取り戻すエクササイズです。
ペルビック・ティルト
↓
Point
骨盤の傾きは、腰椎だけでなく股関節にも影響します。動作の際は股関節が小さく動いていることも確認しましょう。
Exersize3
小さな動きのなかで股関節まわりの筋肉をゆるめ、股関節本来の繊細な動きを取り戻します。
プルバック
↓
Point
股関節まわりが硬い人はこの動きが苦手です。小さな動きを繰り返し筋肉をゆるめると、腰痛の改善にもつながります。
Exersize4
ふだんの生活動作やスポーツ動作で重要な働きをする股関節の内旋運動ですが、意外と苦手な人が多いのです。
股関節内旋運動
↓
Point
股関節まわりがゆるみすぎている人は、この動作を繰り返すことで、本来の弾力やバネを取り戻しましょう。
Exersize5
ボールが逃げないように足でコントロールするのが意外に難しい ! お尻のトレーニングにもオススメです。
股関節の外旋運動
↓
Point
足でコントロールすることに集中し過ぎて膝が前に倒れないように注意。膝を天井に向け続けることで殿筋にも刺激が入ります。
Exersize6
ストレッチで体側を気持ちよく伸ばしながら、身体の動きをコントロールする力もつけていくエクササイズです。
広背筋のストレッチ
↓
Point
柔軟性が高すぎる人は、肩関節に体重が乗り過ぎないように注意。腕の力でボールを少し床に押し付けるイメージでストレッチしましょう。
Exersize7
デスクワークやスマホ操作で固まりがちな胸や肩まわりをストレッチすることで、上半身の滑らかな動きを取り戻します。
大胸筋のストレッチ
↓
Point
胸まわりだけでなく、胸郭(肋骨)と肩甲骨の間にある肩甲胸郭関節なども意識して伸ばすことで上半身のモビリティがアップします。
すがはら・じゅんじ
1978年10月28日、東京都出身。全米公認ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(NSCA・CSCS)/Body Element Pilatesマスタートレーナー/トレーニングスタジオ アランチャ代表。法政大学ラグビー部でプレー後、単身ニュージーランドへ渡りNZISに入学、トレーニング学などを学ぶ。帰国後ピラティスと出会い、マスタートレーナー資格を取得。パーソナルトレーナーとしてラグビー選手やプロ野球選手などトップアスリートを指導するかたわら、全国を回りピラティス、マスターストレッチ、ボディキー、呼吸法などをレクチャーしている。
公式サイト:トレーニングスタジオ アランチャ
しえか
1979年生まれ。フィットネストレーナー。運動経験ゼロから、27歳で筋力トレーニングを開始。JBBFボディフィットネスに出場し、東京・関東(初代)・東日本(初代)大会チャンピオンに輝く。2010年に全日本大会準優勝、2011年東アジア選手権代表に選出。現在は、ピラティス、ウェイトトレーニング、筋緊張抑制などを組み合わせたコンディショニング&ボディメイクを行うパーソナル指導を中心に活動中。
-コンディショニング, ホームトレーニング, ピラティス
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