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背骨が変わる、動きが変わる!話題のマシンピラティスの効果とは【Shiecaと学ぶピラティスwith菅原順二】

ピラティスインストラクターの資格を持つ小倉シエカさんとともに、マスタートレーナーの菅原順二さんの解説でピラティスを学ぶコーナー。今回は「背骨」をテーマに、ピラティスの重要な要素であるエロンゲーション(脊柱の伸長)の感覚を深めるマシンピラティスの特徴や効果を解説していただきます。
[初出:Yoga&Fitness vol.14]

エロンゲーションの感覚つかむならマットよりマシン

シエカ ふだんヨガに親しんでいる人のなかには、マットピラティスの経験はあってもリフォーマーなどのマシンピラティスを経験していない人も多いですよね。

菅原 日本での歴史的な背景から見ると、ピラティスが導入された頃は、ヨガに続く新しいスタジオレッスンとして注目された一方、身体感度の高いダンサーたちが自宅にマシンを入れて粛々とコンディショニングを行うなど、マシンはオーセンティック(本格的)なイメージが強かった。

シエカ そうした背景もあって「マシンの方が難しい」というイメージがついたのかもしれませんね。

菅原 ただ、すごくシンプルに言うと、ピラティスって「エロンゲーション」、つまり背骨を長く引き伸ばす感覚が何より大事で、しかも自分で行う自己調整法ですよね。でも、一般の人がマットでエロンゲーションを感じるのって、実はかなり難しいんです。

シエカ 分かります。その点、マシンピラティスでは、マシン付属のパーツを自分で押すなどの動作を通して、自然と身体のなかで背骨がしっかり伸びた状態になる。実際に自分が経験したときに、そこが一番のメリットだなと感じました。

菅原 ピラティスの創始者であるジョセフ・ピラティスさんが一番やりたかったことは、「まっすぐに立つ」ということだったと思うんです。お年寄りの腰が曲がった姿勢、あれはまさに重力と自身の体重によって、人間の身体が絶えず歪みや屈曲に向かっていくことを象徴していて。ジョセフさんは、そうした身体の歪みを本来のまっすぐな状態に戻したい一念で、様々なワークやマシンを開発したのだと思います。

痛みを抱えるヨギーにこそお勧め

シエカ ヨガやウエイトトレーニングに励んでいる方のなかにも、熱心に取り組むあまり、本来の「まっすぐな姿勢」を見失ってしまい、結果的に痛みにつながってしまうケースは少なくありません。

菅原 たしかに、慢性的な痛みを抱えているヨガの方は意外と多いですよね。

シエカ 美しいポージングを追求することに意識が向きすぎると、どうしても身体に無理な負担をかけてしまのかもしれません。

菅原 おっしゃる通りで、たとえばダウンドッグのポーズ。本来は胸椎がしっかりと伸展する柔軟性が求められるのですが、胸椎の動きが硬い方は、それを無理に肩関節の柔軟性で代償しようとします。見た目は同じようなポーズでも、実際には身体に無理が生じているため、将来的な痛みの原因になりかねません。

シエカ リフォーマーなどのマシンピラティスでは、身体の左右差や意識できていなかった身体の部位の状態に気づかされることが多く、ワークを通して自分の身体のどこに課題があるのかを明確に「答え合わせ」できるような感覚があります。マシンピラティスとヨガやウエイトトレーニングを両方行うことで、それぞれの良い点がつながり、より快適に、そして効果的に身体を動かせるようになるのかもしれませんね。

眠れる可動域を引き出すマシンピラティスの本領

菅原 身体をスムーズに動かすためには、柔軟性、筋力、そしてその動きをコントロールする能力の3つが不可欠なんですが、それを全体的に底上げしてくれるのがピラティスだと言えます。

シエカ ただ柔らかいだけの可動域ではなく、しっかりコントロールできる可動域を教えてくれるんですよね。マシンではそれにプラスして、さらに自身の潜在的な可動域を広げることができると感じています。

菅原 ピラティスさんもマシンだけ、マットだけということではなく、マットピラティスも含め、多様なマシンを使うことで身体感覚を深めていたんだと思います。

シエカ マシンピラティスを体験してからマットに戻ると、以前とは全く違う身体の感覚や動きに気づくことができるんですよね。これは私自身の経験からも強く感じています。ピラティスをマットだけで続けている方は、もしかするとまだ自身の身体が持っている可能性を十分に引き出せていないかもしれませんね。

菅原 今回はリフォーマーの基本的なワークをいくつか紹介しますので、ぜひ一度、体験してみることをお勧めします。ふだんの生活動作はもちろん、マットピラティスでもなかなか感じづらいエロンゲーションなど、背骨の本来の動きを体感することで、自分自身の身体をより深く理解し、その可能性を最大限に引き出すためのツールにしてほしいと思います。

マスタートレーナー菅原順二さんのピラティスレッスン
背骨が伸びる!
マシンピラティス基本ワーク5選

マットピラティスや通常のエクササイズで背骨の動きやエロンゲーション(脊柱の伸長)を感じづらい方必見です!

❶フットワーク

Target下肢のコントロール/エロンゲーションの体感

①キャリッジにあお向けになり、両足の足裏をフットバーに乗せ、両膝を揃えて約90度に曲げてスタートポジションを取る。

②両足でフットバーをゆっくり押し出しながら、脚全体から背骨までが長く伸びる感覚を感じる。

フットバーに置く足の位置で動きの得意・不得意など身体のチェックができるので、全ポジションを満遍なく行うのが理想です。

❷コアワーク

Targetコアの意識と強化/脊柱のラウンド(屈曲)

①キャリッジにあお向けになり、左右の手でストラップを握ったら、揃えた両膝を90度に曲げてスタートポジション。背中はニュートラルポジション(自然なS字カーブ)で。


②両手でストラップを下げてキャリッジを上方に移動させながら、顎を下げるようにして脊柱を屈曲させる。

最初は膝を曲げたまま行い、可能であればストラップを下げながら両脚を伸ばすバージョンで。

❸ダウンストレッチ

Target股関節と脊柱の伸展/エロンゲーションの体感/コアの強化

①フットバーに両手を乗せ、両膝をキャリッジについてショルダーレストに両足をついた姿勢がスタートポジション。

②腰の反りが出ないようにコアでしっかり上体を支えながら、両手でフットバーを押して股関節、脊柱を伸展させていく。

手の押す力に頼らず、殿筋でキャリッジを押すイメージで行うと、よりエロンゲーションを体感しやすい。

❹レッグサークル

Targetエロンゲーションの体感/内転筋、ハムストリング、コアの強化

①あお向けになり、骨盤が浮かないようキャリッジにつけてニュートラルなポジションを取る。できる人は両脚を揃えて90度に上げたスタートポジションに。

②両足にかけたストラップを引いて、ハムストリングやコアをしっかり感じながら45度くらいまで両脚を下げる。

③両脚の角度を45度くらいにキープしたまま外から内に小さいサークルを描く。続いて逆回りのサークルも。

脚は遠くに伸ばすイメージで行い、肩や胸、首はリラックスさせる。両脚で描くサークルを大きくしていくと効果アップ。

❺ボックスを使ったマーメイド

Targetエロンゲーションの体感/側屈の伸び感/股関節の伸び感・開き/コアの強化

①スプリングで固定したキャリッジにショートボックスを横向きに置き、片脚を曲げて座り姿勢に。反対の脚をストラップにかけ、片手を天井方向に伸ばしてスタートポジション。

②ストラップにかけた足をアンカーにして、エロンゲーションをしっかり感じながら、伸ばした脚と逆方向に身体を倒していく。

③スタートポジションに戻ったら、脚が伸びている方向にも側屈していく。こちらの方向はキツいので、無理をしないこと。

ボックスを置くことで半宙づりのような体勢になるので、ふだんでは出しづらい全身の伸び感が出ます。

すがはら・じゅんじ
1978年10月28日、東京都出身。全米公認ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(NSCA・CSCS)/BodyElementPilatesマスタートレーナー/トレーニングスタジオアランチャ代表。法政大学ラグビー部でプレー後、単身ニュージーランドへ渡りNZISに入学、トレーニング学などを学ぶ。帰国後ピラティスと出会い、マスタートレーナーの資格を取得。パーソナルトレーナーとしてラグビー選手、プロ野球選手などトップアスリートを指導するかたわら、全国を回りピラティス、マスターストレッチ、ボディキー、呼吸法などをレクチャーしている。パーソナルトレーニングスタジオアランチャ公式サイトhttps://www.arancia78.jp/

しえか
1979年生まれ。フィットネストレーナー/運動経験ゼロであったが、体形の崩れをきっかけに2007年、27歳で筋力トレーニングを開始。JBBFボディフィットネスに出場し、東京・関東(初代)・東日本(初代)大会チャンピオンとなる。2010年に全日本大会準優勝、11年東アジア選手権代表に選出。現在は、ピラティス、ウエイトトレーニング、筋緊張抑制などを組み合わせたコンディショニング&ボディメイクを行うパーソナル指導を中心に活動中。

取材・文:藤村幸代 撮影:中原義史 Web構成:中村聡美

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