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SFG公認インストラクターおの卓弥氏が厳選した「絶対的におすすめなケトルベル・トレーニング」2選【ハードスタイル・ケトルベル・トレーニング❹】

これまで、ハードスタイル・ケトルベル・トレーニングについて、そのメリットや効果、具体的な注意点や実践ポイントをお伝えしてきました。

第4回目の本記事では、ストロングファースト(SFG)公認インストラクターであり、運動学・解剖学に精通するおの卓弥氏が厳選した「絶対におすすめするケトルベル・トレーニング」を2つご紹介します!

1:2アーム・デッドリフト

最初にケトルベルを自分の内くるぶしと同一線上の真ん中に置き、ポスチュアー(posture:正しい姿勢)を作る。

スタートポジション

  • ケトルベルを見ずに股関節を曲げて上半身をゆっくりと前方に倒し、手のひらの手首側の奥の「ポケット」全体で、ハンドルを包み込むように握る。指で掴むというより、深く包み込み、手首はパンチするときのようなイメージで、絶対に反らせずやや曲げる=グースネック:ガチョウの首の形にする。
    グリップは、ケトルベルのハンドルを、カタカナの「ハ」の字に折るようにやや強めに前腕を回外する。
  • お尻は後方に向かせるように後方に引き、背骨は反らせず曲げずひねらずニュートラルをキープする。
  • 上体角度は、時計の10時~11時をイメージして頭頂部から尾骨を真っすぐに、首は常に「もっとも長い状態」を保って傾ける。目線は自分に対して直角のイメージから2~3m先に置く。
    足裏とヒザを傾かせたり捻ることはない。特にニーインは禁ずる。
  • 肩関節は、常に内部に収納するようにパッキング&ラットダウンし、この状態を崩さず鎖骨を真横に開く。
  • 膝下は前後動や回旋などはせずに不動。足裏がブレて重心が変化したり、ニーインを起こさなければ、ある程度の挙動は許容範囲。足幅はヒップ位置よりやや広く取り、つま先はフラット~外旋20度ほどを自由設定。つま先と膝の方向は常に同じ向き。

稼動スタート~トップポジション

  • スタートポジションで60~70%の吸気を腹部に入れ、股関節伸展によって上体を起こして完全な立位=ポスチュアーを作る。

トップポジション

  • 完全なる立位=ポスチュアーを形成する。グリップはディープ、手首はグースネック:ガチョウの首で、拳は床面と平行にする。首はロングネック、目線と鼻は真っすぐ前に向く。
  • 膝の皿:膝蓋骨をグッと上げて、太もも前面とお尻:グルート(Glute)、お腹、ラット(外側のイメージ)に同時に強いテンション作る。1秒以上静止する。足趾は浮かず、床を掴まず、足裏をすべて接地する。この間は強くラットダウンし、前腕は回外しながら胴体部に強く密着し、呼吸を静かに止めて胸をワイドにし、大腿前面、殿部、腹部は外圧を跳ねかえすかのように強いテンションを作り、最強のポスチュアーを作る。

トップポジション~元のポジション=スタートポジションに戻る。

●ここまでの一連の動作で「1回:1レップ(rep)」とする。
●床で反動を作る、跳ねることを絶対に禁ずる。無反動種目の原則に則りおこなう。

バーベル・デッドリフトとの違い

  • 完全に重心の垂直位置と荷重物(ケトルベル)が一致する。
    これはケトルベルの形状で実現することであり、脊椎負担を大きく減らす。
  • ケトルベルのハンドルが太いことで、深いグリップを理解~習得するのに好都合。バーベル・デッドリフトの技術向上にも貢献する。
  • ケトルベルのハンドルが太いことは、指への直接の負担も減らす。変形や故障を抑える。
  • バリエーションが極めて多い。これは機会をみて公開したい。想像以上に強烈なメリットがある。
  • バーベルのような高重量設定が困難。その部分の達成はバーベルで行う。

バーベルは、脛骨より前方に重心を置くしかないが、ケトルベルは重心の真下に位置することができる。 また、このようにつま先が過剰に外向きになると、膝の動きは逆に内側に入りやすくなることが多い。 これは絶対に避けなくてはいけない。

2:2アーム・スィング

ポスチュアーから。バックスィングをするためのスタートポジションを作る。その後に、バリスティック種目のスタートポジションを決め、バックスィングする。

絶対に「腕で振る」動きをせずに、でん部を締める力、大腿前面を締める力、腹部を締める力、足裏全体を強く踏む力を合体させた反動でのみ、ケトルベルを前方に移動させる。

ケトルベルを高く上げれば上げるほど良いなどということは無い。ケトルベルを移動させる意識としては、前方と後方であり、上下運動ではない。英語でアッパースィング時、ダウンスィング時という表現はするが、バーベルは、脛骨より前方に重心を置くしかないが、ケトルベルは重心の真下に位置することができる。また、このようにつま先が過剰に外向きになると、膝の動きは逆に内側に入りやすくなることが多い。これは絶対に避けなくてはいけない。物体の放物線を指しているのであり、意識して上下運動はさせない。

前方でのケトルベルのトップポジションは、水平を目指す。が、反動ではなく、腕力重視で加速感無くケトルベルを引き上げる動作は、スィングではない。肩、脊椎に無駄な負荷を増やし、負傷の原因を作っている上に効果がない。

トップポジションでは、ケトルベルは物理原理として必ず一瞬浮く。その時に、全身のどこかに、物体を引き上げ、挙上する動きがあれば、そのスィングは失敗ということ。

正しいバックスィングで加速し、殿部を締める力、大腿前面を締める力、腹部を締める力、足裏全体を強く踏む力を合体させた反動でのみ、ケトルベルを前方に移動させた結果、ケトルベルのトップポジションが水平位を越えたのであれば、それは良いスィングということになる。このときに、絶対に腕力で「高さを足す」ようなことを禁ずる。コントロールできず危険であり、効果もない。

バックスィング時は、ケトルベルのボトム=底面を完全に後方に向かせる。これが達成できなければ、スィングを行う意味=反動によって反射を生み、出力を引き出す効果がなく、行う意味が薄れる。

ケトルベルの着陸は、スタートポジションと完全に同じ位置に戻るということ。この時、足裏全体への荷重は、稼動中やポスチュアーを形成する時と同様、全面に均等な荷重接地とする。

呼吸は、スタートポジションでは軽く息を吐いた状態にし、バックスィングでケトルベルが股下を通過する瞬間に、鼻からのみ自然な形で息を吸い、ケトルベルがスィングして前方移動し、股下を通過する瞬間に上の前歯:切歯の隙間から強くコントロールして息を吐く。これを絶対的基本とする。

以前は、トップポジションで強い呼気、その直後に吸気:この「呼吸」をトップポジションでケトルベルが浮いている時間=フロートしている間におこなったが、現在は改訂され、強い出力の瞬間=股下からケトルベルが前方に出た瞬間に呼気を合わせることを絶対的基準としている。

トップポジションからケトルベルが下降する時、姿勢は完全にポスチュアーをキープし、上肢とケトルベルが垂直になる瞬間に、殿部のみを後方に引き、バックスィングをする。

ケトルベル・スィング最大の失敗は、スタートポジションとトップポジション以外で、腹部と腕の間に無駄なすき間を作ることである。加速せず、脊椎の負担を増大させ、危険性のみを増やして効果がない。

極論すると、ケトルベル・スィングとは、スタートポジション=フィニッシュポジション、完全なるポスチュアー+ハングポジション(ケトルベルをデッドリフトした状態)、トップポジション:この3つを、正しい加速と反動を使って循環する運動ということである。

目線については2方向のみ。スタートポジションとトップポジション(この時は水平~やや下方向)を往復するのみ。

フィニッシュ時は、足裏で飛行機が着陸するかのようにブレーキングし、ラットダウンとオープンニー、でん部外旋を強力に使う。呼気を合わせても良い。

スィングは、各種の運動と比較しても単一時間当たりのカロリー消費が極めて大きいことが、実験で明らかになっている。心拍数と出力の強さを合算し、なお且つ時間と密度を観察しながら進行するべき。ケトルベル・スィングによって心拍数200回/1分間を達成するトップアスリートも、当然存在する。それは正しいテクニックで行うから達成できるのであり、暴れ馬的発想と動作では達成できない。

スィングは、正しくおこなうと、出力が想像以上に大きくなることが、色々な研究で分かっている。条件を一定にすることが、技術的レベルの差もあって難しいが、ある研究では、5倍以上になることが計測で分かっている(アメリカの大学での実験。10倍以上という報道もある)。24㎏のケトルベルを正しくスィングすれば、120㎏以上の負荷が一瞬かかる可能性があるということ。だからこそ安全なフォームとファンダメンタルが必要であり、出力の係数が最大になるように、正しいテクニックを使って加速するのである。

適正回数は、バリスティック種目の原則通りであり、セット数は、当初は5セットまでとして、疲労との関連を観察する。
ハードスタイルでは「やればやるほど良い」という考えを推奨せず、「正しいことを多くおこなえば、成功、ゴール達成に近付く可能性が高まる」という当然のことをもって進行する。正しくできないことが、スキル不足なのか、筋力不足なのか、疲労、体調不良によるものなのか?ここを見極め、機能的な動きを失なわずに強くなるようにトレーニングし、プログラムし、スケジューリングする。設定~実施~観察~考察~再設定(微弱な変化でも良い)~再度実施:という成功の黄金則を、かた苦しくなく自分自身に当てはめ、スムーズに淀みなく進行することで、よりベターなものを見つける。ここを強く推奨する。

スィング:スタートポジション~バックスィング

理想のトップポジションとやや出力不足のトップポジション。
目をつむることも推奨しない。

出力不足のバックスィング、多く見るエラー。ハングポジションはデッドリフトとまったく同じ。

でん部テンション不足を、膝の前後スライドでごまかし、ただの腕振りを行っている。

まとめ

ハードスタイル・ケトルベルトレーニングに「境界」は、ない。

ある特定分野や人に対する特別なトレーニングではなく、「人間としての機能を向上させながら、身体を強くする」ことからブレることはない。

年齢、性別、体力差、専門分野、目的が違っても、トレーニング技法や取り組み方法が変わることもない。

ファンダメンタルはすべてにおいて共通であり、求められるのは「正確性」である。

やり過ぎず、不足せず、究極の「ちょうど良い」を目指す。

「ちょうど良い」は、絶対値ではなく、相対値であり、環境、状況、個々、時間帯などで変化していく。

無反動で行う種目(グラインダー)と、有意に反動を使う種目(バリスティック)を、絶対に混同せず、お互いに侵食しない。

なにかの達成のために、何かを侵食することをせず、究極の最大公約数を達成する。

怪我の誘発はもちろんのこと、効果が出ず、目的と意味を見失う。

怪我と疲労の管理=予防と除去に関しても、シンプルに絶対的なハードスタイルの原則がある。

ハードスタイルを利用、活用して、あなたご自身の活動と人生を、過去最高にハッピーなものに。

身体が強くなること、今よりもさらに自由に動けるということによって、人生のハッピーを広げ、深くし、さらに良きものに。

身体が強くなって、今よりも動ける。動けもしない身体になってしまうものを「強さ」とは呼ばない。

ストロングファースト=ハードスタイルでは、そのようなものを提供しない。

これはストロングファーストとしての公式声明であるということ。

今よりも強く、そして機能的に動ける。これは同価値であり、同時達成するものなのである。

STAY STRONG.

WE ARE STRONGFIRST.

今回の記事は、おの卓弥という個人の感覚ではなく、ストロングファーストという団体のハードスタイルという基盤を示したものである。

おの卓弥(おの・たくや)
ストロングファースト(SFG:世界最大のケトルベル関連団体)認定インストラクター。外傷専門柔道整復師。内閣総理大臣認定スポーツ・サプリメントアドバイザー。解剖、生理、運動学的に正しいケトルベル・トレーニング=ハードスタイルを啓蒙するために、ブログ、インスタグラム、フェイスブック、X、YouTubeを展開。「ハードスタイル・ケトルベルSTUDYグループ」を運営し、500名近い会員を指導。正統指導者、チャンピオン、ダイエット成功者を生み出している。

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