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減量中にイライラ・寝不足・情緒不安定ではないですか?ホルモンと糖質が成功の鍵を握る【減量の常識を疑う】睡眠・ストレス編

ボディビル元世界王者・鈴木雅×AZCARE株式会社代表・近藤拓人×PMPerformance代表・川合智監修によるスペシャル対談!
「減量中、筋肉量は落ちて当たり前」と思い込んでいませんか?そこで、筋肉量を残して絞るためにやるべきことを【トレーニング編】【有酸素運動編】【栄養編】【睡眠・ストレス編】【エネルギーフラックス編】の5回に分けてお伝えします。筋肉が削れるのはもはや当たり前じゃない!

ココがポイント

夜に糖質を抜くと、脂肪が減りにくい身体になる
「減量中の睡眠の不調には栄養面も関わってきます。低血糖の状態だと、脂肪をエネルギーとして使うためにコルチゾールやノルアドレナリンが分泌されるのですが、ノルアドレナリンは恐怖心や不安感を生むとされます。そのため、夜中に目が覚めたり悪夢を見たりといった現象が起こります」(川合)

減量中の睡眠の乱れは、交感神経やホルモンのアンバランスにあると知ろう

減量中に睡眠の質が悪くなった読者も多いだろう。良い睡眠が取れないことは、トレーニングの質を下げることだけではなく、日常生活にも多大な影響があると考えられる。そもそも、なぜ減量中には睡眠の問題が生じるのだろうか。

「減量中は特にトレーニング強度を高くしがちですが、そうすると交感神経が高まって興奮状態が続くことになります。こういったときは、身体の様子を見ながら強度を調整したり、栄養面を見直したりしないといけないでしょう」(近藤)

減量を健康的にうまく進めていくためには、やはり交感神経との付き合い方が伴になると言えそうだ。これに加えて、ストレスに対して正しく理解することも必要である。身体は、精神的なストレスと肉体的なストレスを同じものとみなして処理している。すなわち、自分のストレスのキャパシティが10しかないならば、種々のストレスの合計値はそれ以下にしておかないといけないということだ。仕事のストレス、家庭でのストレスなどの精神的ストレスに加えて、高強度トレーニングの物理的ストレスが加われば、簡単にキャパシティを超えていくことは想像できるだろう。

ストレスのキャパシティを広げる際に重要となるのが、やはり有酸素運動だ。しっかりと有酸素運動を行ってリカバリーに目を向けられると、睡眠の質を確保することにもつながりやすい。

「減量中の睡眠の不調には栄養面も関わってきます。低血糖の状態だと、脂肪をエネルギーとして使うためにコルチゾールやノルアドレナリンが分泌されるのですが、ノルアドレナリンは恐怖心や不安感を生むとされます。そのため、夜中に目が覚めたり悪夢を見たりといった現象が起こります」(川合)

減量中は低血糖状態になりやすいが、特に夜間の低血糖には気をつけたい。それが起こる理由としては、やはり高ストレスが挙げられる。ストレス状態が続くと常に副腎に負担がかかり、結果としてホルモン分泌の異常も生じてしまうのだ。睡眠中に脂肪からエネルギーを作り出してくれるコルチゾールが適切に分泌できなくなる結果として、睡眠に悪影響を与える可能性のあるノルアドレナリンが活発になってしまうというわけだ。

ボディビルダーに限らず、一般の方でも減量中は特に寝る前の糖質摂取を控えがちだ。確かに、肝グリコーゲンが低い状態ならば、体脂肪が優先的に使われるという考えは誤りではない。しかし、それによって睡眠の障害が出ているのであれば、就寝前に多少でも糖質を摂取して、良質な睡眠が確保できるようにすることも考えてみてほしい。

ココがポイント

〝減量中はイライラしやすい〟は間違い。ダメな減量の典型例
「常にイライラしていたり、認知機能が低下してレスポンスが悪くなったりしている場合は、減量がうまく進められているとは言えないでしょう。また、オフシーズンの過ごし方が良くなかったことも推察されます」(川合)

極端な減量は、ホルモンバランスに甚大な影響を与える可能性がある

身体の機能はホルモンによって整えられている部分が多い。正常なホルモンの分泌ができていれば健康的に生活できるが、減量等によってホルモンのバランスが崩れると、当然、トレーニングだけではなく日常生活にも悪影響が出てくる。

「ストレスが強くかかると、ホルモン分泌の司令塔である視床下部や脳下垂体に負荷がかかります。そうすると、適切なタイミングで成長ホルモンが分泌されなくなり、結果としてコルチゾールなどの他のホルモンのバランスが乱れることにつながっていきます」(川合)

成長ホルモンはさまざまな働きを持つ。筋肉の合成というアナボリック機能以外では血糖値の安定も担う。就寝直後は、本来ならば成長ホルモンが最初に機能するが、ここに問題があると、コルチゾールが無理に分泌されて使われるようになる。そうしてコルチゾールの無駄撃ちが増えてくると、普段からのホルモンバランスも乱れてしまうというわけだ。

男性ホルモンの一種であるテストステロンに着目するのも良いことだ。

「テストステロンの分泌量と他のホルモンの正常な分泌には因果関係があります(特にコルチゾールと)。つまり、テストステロンが適切に分泌されていなければ、それ以外のホルモンの分泌量が落ちたりバランスが崩れたりしているということが考えられます」(川合)

「ボディビルダーをはじめとするクライアントの中にも、自律神経の乱れによる体調の問題を訴える方が多いです。便通が悪い、昼間眠い、夜眠れない、運動強度が上がらないなどがその実例です」(鈴木)

ボディビルダーのように、極端に筋肉量を増やそうとしたり、コンテストに向けて極端に体脂肪を落とそうとしたりする場合は、完全に健康な状態を維持することは難しい。身体への負担を考えると、減量期間は最大でも6カ月程度にしたい。これより長くなってしまうと、身体は負荷に耐えられない可能性が高い。

「常にイライラしていたり、認知機能が低下してレスポンスが悪くなったりしている場合は、減量がうまく進められているとは言えないでしょう。また、オフシーズンの過ごし方が良くなかったことも推察されます」(川合)

このように、ホルモンバランス等が原因で認知機能が低下することは、日常生活における様々な問題を引き起こす。そしてそれと同時に、良いトレーニングができるかどうかにも影響を及ぼす。結論として、良い競技成績を残せるのは、健康状態を維持しながら、オフシーズンとオンシーズンを過ごせた選手になるということが言えるだろう。ホルモンバランスが良い状態にあるかどうか、常に意識しておきたい。

近藤拓人【自律神経を整えるおすすめワーク3選】はこちら>>>

すずき・まさし
1980年12月4日生まれ。福島県出身。株式会社THINKフィットネス勤務。ゴールドジム事業部、トレーニング研究所所長。2010~2019年日本選手権9連覇。2016年IFBB世界選手権ボディビル80kg以下級優勝。トレーナーとしては競技者だけでなくアスレティックトレーナーや理学療法士への指導にも携わる

こんどう・たくと
1986年生まれ。宮崎県出身。ミネソタ州立大学アスレティックトレーナー学科でアスレティックトレーナー資格を取得。AZCARE株式会社代表、パーソナルジムNEXPORT代表、オンラインサロン「PLAZ+」主宰。医科学修士、BOCATC、NSCA-CSCS、PRT、DNSET、ビュテイコ呼吸法セラピスト

かわい・とも
1984年生まれ。滋賀県出身。パーソナルトレーニング『PMPerformance』代表兼トレーナー。他にも『AZCAREACADEMY』ゼネラルマネージャーや日本統合療法株式会社・代表取締役を務める。運動の専門家として様々な要望に応える傍ら、運動と栄養を統合したヘルスケアを実践する

取材・文:舟橋位於 撮影:木川将史 Web構成:中村聡美

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佐藤奈々子選手
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