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風邪を引きやすい今だからこそ意識したい!自然治癒力を高める「ナチュロパシー」とは?

自分の身体がどんな状態なのか常に分かっているという人はどのくらいいるのだろうか。病気になってやっと、身体の声に耳を傾ける人が多いのではないかと思う。インドに行くもっと前(ヨガを始める前)の私も、外ばかりに意識が向いていてすぐに風邪を引き、体調が悪くなったら病院に行き、医者から身体の状態を教えてもらう。そして薬をもらって治した気になっている。体調が悪くなっても生活は変わらず、時々サプリメントを取り入れ、外から健康を手に入れようとしたこともあった。しかし、インドでのヨガ修行を通して、健康への概念がガラッと変わった私。ナチュロパシー医師のシルパ先生と出会い「健康は内側から引き出すもの」だと学んだ。

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■ナチュロパシー(自然療法)とは
自然治癒を重視した、インドで正式に認められる伝統医学。古代インドで発展したアーユルヴェーダに対して、ナチュロパシーは19〜20世紀にアメリカやヨーロッパで発展した。栄養、ハーブ、断食、鍼、水療法などを使って、薬を使わず身体が自ら治癒する環境を整える

シルパ先生がナチュロパシーの基本原則を解説する。身体や心の働きを理解し、自己治癒力を高める方法を知れば、薬になるべく頼らない自然な方法で健康を維持できるようになるだろう。

シルパ先生が解説!ナチュロパシーの原則

身体は自然に治癒するもの

「人間の身体には本来、自らを癒し、健康を取り戻す力(活力)が備わっています。身体が持つ自然な治癒力を最大限に活かせるような生活を心がけましょう。薬を使わずに治癒する環境を整える『ナチュロパシー』も手段の一つです」

病気とは?

⚫︎毒素が体内に蓄積した結果が「病気」
「私たちの身体は日々の活動によって老廃物や不要な副産物を作り出し、それらを排出することで健康を維持できています。そのため、運動不足や睡眠不足、食べ過ぎなどにより、毒素がうまく排出されずに蓄積されると、活力が低下し、病気にかかりやすくなります」

⚫︎病気の主な原因は「衰弱」
「病気の主な原因は、身体の持つ自然治癒力が弱まること。身体の免疫力や機能が低下すると、外部からのストレスや病原体に対して弱くなります。また、環境の変化に身体が適応するよう力を高めることも重要です」

⚫︎細菌は病気の状態で見つかるが、病気の原因ではない
「病気がすでに進行している身体の中で、細菌が増殖、病状の悪化として現れるものだと捉え、細菌やウイルスなどの病原体が病気の『原因』ではないと考えます。身体には、細菌が侵入したときに戦うための強力な防御機構があり、身体が弱ると、侵入した細菌は破壊されず、細菌が体内に留まるからです。つまり病気の根本的な原因は、体内のバランスが崩れたり免疫力が低下した結果であり、病原菌自体は病気を引き起こす直接的な要因ではないと考えます」

■POINT
西洋医学の「細菌が病気の原因になる」という考え方とは、対照的なナチュロパシーの考え方。西洋医学では、病原体の観察、実証、治療(抗生物質やワクチン)と、病原体の存在に重点を置くのに対して、ナチュロパシーでは身体全体、免疫システムの強化に重点を置き、自己治癒力を高めることで病気を防ぐ。東洋医学と西洋医学、どちらがいいかではなく、予防と治療それぞれのやり方を自分で選んでいくことが大事なのである。

咳や鼻水は“治癒”のサイン

⚫︎急性疾患は治癒の過程であり、それ自体が「治療」である

「咳や頭痛、鼻水といった、毎日ではなく一時的な症状を『急性疾患』と言います。急性疾患は、蓄積された体内の毒素を急速に排除しようとする、身体の正常な働きです。さらに、細菌やウイルスなどの病原体は病気の直接的な『原因』ではありません。身体には、細菌が侵入したときに戦うための強力な防御機構があり、身体が弱ると侵入した体内のバランスが崩れたときや、免疫力が低下している状態(毒素が蓄積している状態)であるため、細菌は破壊されず、毒素として体内に留まり、身体は毒素を排除しようと咳や鼻水(急性疾患)を出すのです。そのため、急性疾患は薬などで無理やり抑制するべきではなく、自然治癒力を高めてなるべく薬に頼らないように生活を見直すこと。自然治癒力を高めるためには、睡眠、運動、食事、瞑想のほか、断食も一つの手段です」

■POINT
「急性疾患」は自己治癒力(免疫力)が低下しているということを身体が教えてくれている。薬を使えば一時的に症状が抑まるが、再発防止に向けて根本治療が必要だ。西洋医学では、「細菌が病気を引き起こす」と考え、病原体の観察、実証、治療(抗生物質やワクチン)と、病原体の存在に重点を置くのに対して、ナチュロパシーでは身体全体、免疫システムの強化に重点を置き、自己治癒力を高めることで病気を防ぐ。東洋医学と西洋医学、どちらが良いかではなく、予防(東洋医学)と治療(西洋医学)それぞれのやり方を選んでいこう。

健康的なものを食べていても病気になる?

⚫︎食べ物は活力(自己治癒力)を高めるものではない

「活力(vitality)とは身体の自己治癒力、言い換えれば免疫力のことです。食べ物は身体の建築材料(栄養、保護、維持に必要)ですが、食べ物自体が活力を高めるのではなく、むしろ活力があるおかげで、食べ物を消化して、その栄養を身体に取り入れる。つまり、消化を促進するのは活力であり、食べても活力が下がっていれば、栄養がうまく活用されません」

■POINT
身体の消化力が弱まり、毒素が溜まった身体は「荒れ果てた畑」のような状態。いくら栄養を与えても、作物が育つための土壌が整っていなければ野菜は育たない。つまり、身体の「活力」が十分でなければ、どれだけ良い食べ物を取っても消化・吸収されないということ。
活力を高めるには?
十分な睡眠、自然との調和、ストレス管理(瞑想、ヨガ、呼吸法)、水分補給、運動、前向きな考えや感情、これらを全て行うことで活力を維持し、高めることができる。

 

運動や断食でデトックス

⚫︎断食は病気を治すものではないが、身体が自然に治癒する機会を提供する

「断食の目的は、本来持っている自己治癒能力を引き出すこと。断食そのものが病気を治す効果はありませんが、断食をすることで消化器官が休まり、体内に蓄積された毒素を排出することを目指します。ただし、断食を行うべきではない場合もあるため、きちんとした専門家の指導のもとで行うことがお勧めです」

⚫︎運動や身体活動は、栄養と排泄のバランスを保つ

「運動の役割は、栄養と体内の排泄(排出)のバランスを保つことです。エネルギー源となる栄養素を得て身体の成長や修復を行い、不必要な栄養素は老廃物や毒素となるので、汗や尿、便によって排出します。運動することによってこれらの循環を促進します。栄養をスムーズに吸収しながら、老廃物を効果的に排出する。これにより、身体全体が健康的に機能しやすくなり、病気を防ぎやすくなるのです」

ナチュロパシー

まとめ

⚫︎外部療法は緩和効果しかなく、治癒効果はありません

「ナチュロパシー(自然療法)、アロパシー(逆症療法)、アーユルヴェーダ、ホメオパシー(同類療法)など、薬の有無に関わらず、どの治療法であっても外部からの治療は一時的な緩和に過ぎません。薬は「症状」に対して治療効果がありますが、最終的には病気と戦うための活力(自然治癒力)が必要です。外部の治療に頼るだけではなく、心身のバランスや生活習慣の改善など、根本的な見直しが必要です。身体全体(心+身体+魂)を扱い、精神的な満足感を高めましょう」

■POINT
健康意識が高くなれば身体に良さそうなものを、あれもこれも“加えがち”だが、「何を取り入れるか」にこだわりすぎていたことも、かえって身体の自己治癒力を弱らせる原因だったことも分かった。敵(ウイルス)と戦うときに、たくさんの鎧を身にまとうことは一時的には有効だが、鎧に頼れば頼るほど、本来持っている戦う力をサボらせることになる。健康体であれば侵入した細菌は破壊され、弱っていれば毒素が蓄積し、病気になる。これらを意識して、症状の緩和だけに依存せず、生活習慣の見直しが重要だ。

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連載「インド医師が教えるナチュロパシー」
インドのヨガ修行で出会ったナチュロパシー医師・シルパ。大都市から少し外れた村にある彼女の自宅では農園を有し、多種多様な野菜やハーブ、果物を栽培。ヨガを学びに近所の住人が集まり、動物も暮らす。そんな自然に囲まれた彼女だが、お肉やスウィーツ、お酒との付き合い方も上手。自然と共に、楽しく生きる彼女からナチュロパシーを使って健康的に生きるヒントをもらう

教えてくれたのは...... Dr.シルパ。SDM(Sri dharmasthala manjunatheshwara)大学にてNaturopathy(自然療法)とYogic sciences(ヨガの科学)を研究しBNYS(Bachelor of Naturopathy & Yogic Sciences)の学士号(医師資格)を取得。インドでNaturopathyは正式に認められた医学の一つ。「身体に障害のある方々のために、ヨガや自然療法がより身近になるようサポートしていきたいです」

取材:松本実奈美

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佐藤奈々子選手
佐藤奈々子選手