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中高年トレーニーの必須栄養素は「脂肪」であると米国フィットネス専門誌が伝える理由

とかく、悪者にされてしまいがちな「脂肪」であるが、年齢を重ねた中高年のトレーニーほど、その重要性は増すと米国フィットネス専門誌が伝えている。本記事では、その理由について脂肪の基礎知識などをおさらいしながら、わかりやすく解説する。

(IRONMAN2026年2月号「from IRONMAN USA」より転載)

 

25歳から病気のリスクが上昇

私たちは加齢とともに体力が低下し、疲労を感じやすくなる。さらに、中高年のアスリートは減量を試みても体脂肪が落ちないこともあるだろう。もちろん、食事管理とトレーニングは健康づくりに役立つ。しかし、どれほど健康管理に努めても、25歳を境に癌、糖尿病、アルツハイマー病のリスクにさらされてしまう。これらは加齢に伴い発症率が上昇する疾患だ。

かつて医学界では「病気が身体を老いさせる」と考えられていた。しかし、現代の知見は逆である。細胞レベルの老化こそが、病気を発症させるトリガーだとされている。つまり、健康を維持するためには、病気を治療するのではなく、老化そのものを遅らせる必要がある。

実は、ただ生きていること自体が老化の原因となる。私たちは常に太陽からの紫外線にさらされ、細胞内では呼吸代謝の副産物として「フリーラジカル」が生成され続ける。酸化ストレスが健常な細胞を攻撃し、DNA や組織に微細なダメージを蓄積させる。これが細胞の老化につながるのだ。

では、この細胞老化を食い止めることは可能なのか。読者にとって最も身近な方法は、ウエイトトレーニングだ。筋肉を鍛えることは、単なる見た目の問題ではない。ホルモンの恒常性を保ち、老化の進行速度を遅らせる作用がある。また、筋発達に必須とされる6~8時間の睡眠や良質な脂質・タンパク質の摂取は、細胞の修復と老化抑制にも有効だ。つまり、筋肉を育てることと老化を防ぐことは、同時に行えることなのである。

 

脂肪の種類と特徴

食事について言えば、中高年になって体脂肪が落ちにくくなったことから、脂質を避けているという人も少なくないだろう。しかし、良質の脂肪に限って言えば、私たちの身体に欠かせない栄養素だ。ただし、脂質ならどれも同じというわけではない。脂質は大きく「不飽和脂肪酸」と「飽和脂肪酸」に分類される。

不飽和脂肪酸は、炭素分子間に二重結合を持つ構造の脂肪を指す。不飽和脂肪酸はさらに必須脂肪酸と非必須脂肪酸に分けられ、必須脂肪酸は、その名が示すとおり体内で合成できないため食材から取る必要がある。必須脂肪酸には抗炎症作用があり、一般的に善玉脂肪と認知されている。常温でも液体の状態を保つのが特徴だ。

必須脂肪酸にはオメガ3、オメガ6があり、非必須脂肪酸にはオメガ9がある。

トランス脂肪酸も不飽和脂肪酸だが、常温で固体化する性質を持つ。マーガリンなどに含まれていることが多いが、欧米ではすでに全面規制されており、各メーカーがトランス脂肪酸の含有量に配慮し、ほぼゼロに近い商品も増えている。

一方、飽和脂肪酸は炭素分子の間に二重結合を持たない脂肪を指し、動物性脂肪に多く含まれる。心血管系疾患との関連から、一般的には摂取を控えるべき脂質と認識されている。

 

老化予防にはオメガ3

アメリカの栄養学会で発表されたアンチエイジングに関する研究結果を紹介したい。この研究で行われた実験は16名の健康な高齢者を対象に行われたもので、被験者を2つのグループに分け、一方にはコーン油を、もう一方にはオメガ3を8週間にわたり摂取させた。

結果として、オメガ3を摂取したグループにおいてのみ、有意な筋量の増加が確認された。通常、何もしなければヒトの筋肉量は加齢とともに減少していく。これはサルコペニアと呼ばれ、代謝速度の減衰や転倒・骨折のリスク増大に直結し、QOL を著しく低下させる。さらに、多くの調査で筋肉量の減少と致死率の上昇に相関関係があることが示されている。

中高年にとって、脂肪の摂取は肥満や心血管疾患への懸念と切り離せないテーマだろう。しかし、多くの臨床研究において、オメガ3のような必須脂肪酸は、むしろ冠動脈疾患や脳血管疾患のリスク低減に寄与することが示されている。例えば、血流改善、神経細胞の新生のサポート、さらには細胞膜の機能維持など、さまざまな面で老化予防に役立つのだ。

 

脂肪は大きく二つに分けられる

 

脂肪酸

不飽和脂肪酸(肉の脂身など)


飽和脂肪酸(必須脂肪酸)

▶ オメガ3(鮭など)

▶ オメガ6(ジャンクフードなど)

飽和脂肪酸(非必須脂肪酸)

▶ オメガ9(オリーブオイルなど)

脂質を取るべき理由

脂質を取るべき理由

●エネルギー源になる
●脂溶性ビタミン(A、D、E、K)を効率良く体内に循環させる
●ビタミンD、コレステロール、ステロイドホルモンを作る
●強くてしなやかな細胞膜を作る
●血液凝固や血管緊張など生理活性に作用する物質であるエイコサノイドを作る

バランス良く摂取することが重要

オメガ3 積極的に取りたい油

オメガ3を食事から取るには、サーモンなど脂の乗った魚類のほか、植物性のものでは亜麻仁やクルミ、野菜類では芽キャベツ、ケール、ホウレンソウなどが挙げられる。これらを日常的にメニューへ組み込むことは、最も手軽で効果的な老化予防策となるはずだ。

オメガ9 血管の健康を守る

オメガ9は糖分やデンプンを原料として体内で合成することができる。代表的なものとしてオレイン酸がある。オリーブ油、キャノーラ油、アーモンドなどにも豊富に含まれているが、体内で合成できるため特別意識して取る必要はない。
オメガ9には、抗炎症作用、HDL コレステロールの維持、LDLコレステロールの抑制作用が確認されており、動脈硬化や心疾患のリスク軽減が期待できる。

オメガ6 取りすぎに注意

オメガ6のうち、リノール酸は必須脂肪酸だが、γリノレン酸(DLA)やアラキドン酸(AA)などは体内で合成が可能な非必須脂肪酸だ。

オメガ6は健康と活力に直結している。例えば、オメガ6には炎症を促進する性質がある。一見、悪影響に聞こえるかもしれないが、炎症とは本来、病原体から身体を守るための防御反応だ。インフルエンザウイルスへの抵抗や、高強度トレーニングによる疲労からの回復にもオメガ6の働きは不可欠だとされている。

オメガ6を豊富に含むのはキャノーラ油、サフラワー油、ひまわり油、コーン油、大豆油などだ。これらは非常に安価であるため、市販のジャンクフードでも多用されている。そのため、オメガ6は意識せずとも過剰摂取してしまう懸念もある。

オメガ6 対オメガ3の比率

オメガ6 対オメガ3の比率

アメリカではオメガ3に対してオメガ6を取り過ぎている傾向があり、その比率はオメガ6:オメガ3=20:1とされる。一方、世界有数の長寿国である日本の場合は4:1程度である。それだけが理由ではないだろうが、アメリカ人の多くが、若くして関節痛や多くの炎症に悩まされている現状を見ると、脂肪酸のバランスが少なからず関与していると考えられるだろう。

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