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「欠点こそ神様からのプレゼント」安井友梨【コンプレックスは筋トレで解消できる:メンタルケア編】

コンプレックスを力に変える
安井友梨

「自分自身のことが、200%大嫌いだった」ビキニ競技の女王として、常に眩い光を放つ安井友梨さん。しかし、その華やかな姿の裏側には、30歳まで抱え続けてきた深いコンプレックスと自己否定がありました。コンプレックスを抱えるすべての人へ贈る、自分自身を慈しみ、人生を愉しむためのヒントが詰まったインタビューです。

[初出:Woman'sSHAPE vol.32]

取材・文:藤村幸代 撮影:山本千代、中原義史(大会写真)、写真提供:安井友梨 Web構成:中村聡美

【写真】安井友梨さんのステージショット

自分が200%大嫌い
自己否定からの脱却

━━安井さんはこれまでも、トレーニングを始める前の写真とともに「コンプレックス」について語っていますね。

安井 これは30歳を過ぎてようやく気づいたことですが、私は自分のことが大嫌いだったんです。体型も嫌いなら性格も嫌い、やることなすこと全部嫌い。本当に200%大嫌いでした。

━━そこまで……。目の前の安井さんからは全然想像できません。

安井 人見知りもすごく激しくて。実は今でもジムで挨拶するのが苦手で、できれば声をかけてくださればと思うくらい(苦笑)。内向的だし、めちゃくちゃネガティブな人間だし。それでも人より頑張りたいという気持ちだけは強くて。競技で結果が出ているのは、そのおかげかもしれませんが、ひねくれてますよね。人と比べてうらやましがってばかり。いつかは自分も人生を花開かせたい。でも、親が習い事から着ていく服まで決めてしまうような窮屈な環境もあって、変わりたくても変われない。延々とそんな日々でした。

━━気づきを得た30歳過ぎは、競技生活のスタートと重なりますね。

安井 その通りです。ジムで初めて自分の心身と向き合い、「私ってこんなに自分が嫌いでコンプレックスの塊だったんだ」と気づいたことが、私の出発点になりました。これからは、自分のことを絶対に好きになる。自分を100%受け入れようと。

━━裏を返せば、今までは自分を拒絶していた?

安井 きっと、自分が幸せになるのを許していなかったんだと思います。すごく根深い、私の嫌な部分でもありますが、セミナーでこういうお話をすると、みなさん涙を流して「私も小さい頃からそうでした」と。思い切って話したことで、私と同じ思いの方が多いことを知りました。

━━すぐに自分のことを受け入れられたのでしょうか。

安井 少しずつ、少しずつですね。トレーニングを通じて、「今までできなかったことが今日できた」を繰り返しながら、だんだん自分のことを許せるようになっていって。何より、自分の身体と心の声が聞けるようになったことが大きかったですね。

欠点は最大の強み できないことがあるから面白い

━━それは、例えばどんな声でしたか?

安井 一番は「欠点も美しいよ」「欠点があるからこそいいんだよ」ということですね。私はずっと、自分の長所や強みが見つからなかったんです。表彰されたのは小学1年生の「虫歯ゼロ」だけ(苦笑)。逆に、欠点は無数にある。でも、実は欠点を抱え込んでいることで、人はめちゃくちゃ成長するんですよね。できないことや苦手なことがあるからこそ、それを克服しようと思って目一杯、頑張れる。欠点を自分で認めて、プラスに転換できさえすれば。

━━「これがダメ」ではなく「これがあるから頑張ろう」と、とらえ方を変えるんですね。

安井 よく「安井さんはどうして辛いトレーニングをずっと続けられるんですか、そんなにモチベーションが高いんですか」と聞かれますが、私の場合は間違いなくコンプレックスが原動力。その意味では、本当に「コンプレックスありがとう」と言いたいし、欠点は神様が与えてくれたプレゼントだと思っています。

━━できないことがたくさんある人のほうが、実は勝ち組?

安井 大げさではなく大勝利だと思います。もし欠点が全くない完璧な人がいたら、それはもちろんすごいし、素晴らしい。でも、何かしら欠点があったほうが人間味がありませんか?それに、トレーニングすれば明日には完璧にできてしまう、競技をやればすぐチャンピオンになってしまうという人生は、逆につまらない。できないからこそ、人生が面白くなると思うんです。

━━そういえば、「走るのが大の苦手」と言っていたのに、SNSで競技場を走る姿を公開していましたね。

安井 足が遅いのも小さい頃からのコンプレックスだったので、「そこに行くしかない!」と思って。残念ながら足は速くなりませんでしたが、去年1年間陸上トレーニングを続けたおかげで、初めて股関節の使い方を会得して、ボディメイクが劇的に進化しました。本当に、一つとして無駄な挑戦はないんですよね。

苦手なことへの挑戦
逃げたくなる場所に道は開ける

━━6月にはゴールデンタイムのバラエティ番組に「菌活スペシャリスト」として出演し、話題となりました。もともと人見知りで内向的という安井さんにとっては、もしかしてこれも「苦手への挑戦」だった?

安井 そうなんです。こういう仕事をしていると、喋るのが得意な人だと思われがちですが、フリートークはめちゃくちゃ苦手で。毎回収録の前には、身体じゅうに蕁麻疹ができるんですよ。

━━蕁麻疹が出るほどの重圧……。

安井 今回は特に「スペシャリストと言われるほどの知識量ではないのに……」という不安もあって。それでもオファーをいただいて以来、夜中じゅう、ひたすら菌活のことを勉強して、収録に挑みました、その結果、菌活にめちゃくちゃ詳しくなって、それが今、新しいお仕事にどんどんつながっています。もし菌活の知識がないからと断っていたら、何も道は開けなかった。逆に、苦手だな、嫌だなと思うことに立ち向かって挑戦していくと、次から次へといろんな扉が開いていくんです。

━━ただ、自分のコンプレックスと向き合うのは勇気がいります……。

安井 すごく分かります。本来は、変化を求めず現状維持が一番楽ですよね。でも、険しい道の先にしか、自分が今まで見たことのない景色は見えないのかなとも思うんです。私も、長年のコンプレックスを解消しようとトレーニングを始めた12年前は、それこそ自分がルフィになったような気がしましたから。

━━『ONEPIECE』の主人公のルフィ!

安井 まさに「大冒険の始まりだ!」という感じで(笑)。今もその冒険を続けながら、新しい扉の先の景色にワクワクしています。

━━コンプレックス解消や欠点克服という冒険を続けるために、何かコツのようなものはあるのでしょうか。

安井 やはり「小さいことから始める」こと。トレーニングでも、いきなりジムで3時間やろうとすると、すぐ嫌になりますよね。まずは「ジムに行けた私ってすごい」とハードルを下げて、自分を褒めてあげることが大事だと思います。ただ、以前の私は完璧主義なところがあって、ちゃんと環境を整えてからじゃないと行動に起こせなかったんです。

━━たしかに、準備期間が長いほど色々考えてしまい、結局一歩も踏み出せないことが多々あります。

安井 私の場合、競技を始めたおかげで完璧主義から卒業できました。「自信がついたらやろう」ではなく、「自信がついたらやろう」ではなく、「自信がなくてもやってみる」。その積み重ねが自信になったなと思います。自分自身を変えるのに大事なのは、完璧な準備じゃないと分かった今は、20%くらい準備できたら「よし、どんどん行かなきゃ」と。

━━2割の準備!残りの8割は?

安井 「自分を信じる力」に任せます(笑)。迷ったときに浮かぶ言葉は「完璧な1回より雑な10回の改善」。ブログにしても、完璧な言葉や写真を選んでいたら、365日欠かさず更新はできていません。今回のテレビ出演もブログがきっかけなので、やっぱり考えるより、まずは行動なんだと思います。

1年ごとの人生、何度でもリセット何度でも花開く

━━今回お話を伺って、安井さんのエネルギッシュな生き方のルーツが分かった気がします。

安井 ありがとうございます。最近では「余命1年」というコンセプトで毎日を過ごしているんですよ。

━━もし、あと1年しか生きられないとしたら、今をどう生きるか……。

2025年JBBFオールジャパンビキニフィットネス10連覇、グランドチャンピオンシップス6連覇!(撮影_中原義史)

安井 競技を続けて5年ほど経ったとき、競技をやめようかと真剣に悩んだ時期があったんですね。それをきっかけに「今年が最後」だと思うようにしたんです。来年も再来年もできる、一生できると思うと頑張りきれないから。「今年こそ現役最後」。心底そう思いながら、今年まで12年続いてしまっています。

━━つねに全力で、燃え尽き症候群になることはありませんか。

安井 燃え尽きるということは、そこが自分のピークだという思いがあるからではないでしょうか。私もずっと、人生の中でパッと花が咲くのは一度きりで、あとは枯れていくものだと思っていました。でも、それでは年齢と共に右肩下がりの下り坂。それは嫌だなと思って。

━━たしかに「今が私のピーク」と決めつけてしまうことも。

安井 でも実際は、ピークは一つではなくて、20代は20代の、30代、40代、50代、60代……それぞれの花を咲かせればいい。私も、30歳のときより今、もっと大きい花を咲かせられると思っていますし、「1年ずつ新しい人生がまた始まる」という感覚で毎年を迎えているんです。

━━安井さんでも落ち込んだり、何もする気が起きないという日はありますか。

安井 もちろん、しょっちゅうあります。そういうときに思い浮かべるのが、実は大好きな蓮の花。蓮の花は泥を吸って花を咲かせるので、泥が多ければ多いほど、綺麗に咲くんです。だから、落ち込んだときは「今私は泥の中……。でも、この困難をどう変換して、どんな美しい花を咲かせてやろうか」と。そんなふうに、自分の人生を面白がってきました。実は去年の世界選手権でもそうでした。もう全然振るわなくて。

━━11月の「IFBB世界フィットネス選手権2025」は過去最高と評されるほどハイレベルな大会に。安井さんは大健闘されましたが、惜しくも表彰台を逃しました。

安井 ここ最近ずっと表彰台に乗っていたので、すごくショックで悔しい思いをしましたが、そこでマインドチェンジして「今のままでは通用しない」と。そう思ったら色々なことを思い切って変えられたんです。

━━具体的にはどんな変化を?

安井 以前は週20回やっていたトレーニングを、今年は3分の1に減らしました。これまでは「休養を心がけろ」という周囲の声が、全然耳に入ってこなかったけれど、去年負けて、初めて「やってみようかな」と心が動いた。そう考えると、やっぱり失敗して挫折した先にしか、栄光はないなと思います。

━━その考え方は、私たちのふだんのトレーニングにも言えそうです。

安井 たしかにそうですね。本当は効率的に最短ルートで行きたいところだけど、なかなか勝てないとか、全然トレーニングがうまくいかないとか、身体が変わらないとか。その回り道が実はすごく尊くて、ゴールに向かう日々こそが金メダル以上の価値がある。今はそこをいかに楽しもうかと思っています。

━━回り道の先に、今まで以上の美しい花を咲かせられそうですね。

もちろん、咲かせます。目標の道のりそのものが自分を磨く時間。少しずつでも磨き続けて、年々できることも増えてきました。2026年の私はもっと色々なことができるし、たくさん失敗したからこそ、今年の私は最強だなって思っているんです。

やすい・ゆり
1984年1月13日生まれ、愛知県出身。2014年11月当時、現役の外資系銀行員でありながら30歳を機にトレーニングを開始する。競技と仕事の“二刀流”を続け、トレーニング開始10カ月で日本一に。ビキニフィットネスでは、オールジャパンフィットネス選手権大会10連覇、グランドチャンピオンシップス6連覇、2024年IFBB世界フィットネス選手権年齢別優勝。フィットモデルでは、オールジャパンフィットモデル選手権身長別で5連覇、アーノルドクラシックヨーロッパ優勝、IFBBワールドカップ優勝。2カテゴリーにおいて女王の貫録を見せている。

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