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バルクアップのための食事では何が大切?(基礎知識編)

バルクアップのための食事では何が大切?(基礎知識編)筋トレをする目的は人によってさまざまですが、特別な競技を行わない人の多くは、筋肉を増やすこと、すなわちバルクアップをメインに考えてトレーニングすると思います。理想のボディメイクのためには、正しいトレーニングの知識やテクニックの習得に加え、栄養面についても深く理解することが大切です。今回は、バルクアップのための食事の基礎知識を紹介します。

目次)

カロリー摂取量について
 体重の増減はカロリーで決まる
 摂取カロリーの目安
三大栄養素の役割と推奨摂取量
 たんぱく質
 炭水化物
 脂質
まとめ
引用

カロリー摂取量について

まずは、ボディメイク以外の場面でもよく使われる言葉であるカロリーについて解説します。筋肉を増やして身体を大きくする場合にも、脂肪を減らしていく場合にも、カロリーについて正しく理解することが不可欠です。

 

体重の増減はカロリーで決まる

>そもそもカロリーとは?
バルクアップの食事
カロリーとは、科学的な用語で言うと「熱量」を表す単位を指します。ものを燃やした時に放出されるエネルギーの一部が熱量です。ヒトの身体の中では、食品から摂取した栄養素が呼吸によって燃焼されることで、ATPという化学物質の形でエネルギーが取り出されます。ATPは体内で起こるほとんどの反応に不可欠な物質であるため、生きている限りは絶え間ない栄養の補給が必要となります。

 

摂取カロリーと消費カロリーの関係

ヒトが生命を維持するためには、食品からエネルギーを摂取することが必要です。このエネルギーのことを摂取カロリーと総称します。一方で、身体の中でたんぱく質・炭水化物・脂質等が燃やされる際に生じるエネルギーのことを消費カロリーと呼びます。身体の外から摂取したカロリーが身体の中で消費されるカロリーを上回っている場合は、余分のカロリーは身体の組織として蓄積されます。糖質の形で貯められる場合はグリコーゲンが主となり、脂質の場合はいわゆる体脂肪になります。逆に、身体の外から入ってくるカロリーが消費カロリーを下回っている場合は、身体の組織を燃やすことで足りない分を補います。その際のエネルギー源としては、グリコーゲンや脂質に加えて、筋肉が使われることもあります。

 

>増量時は摂取カロリーを増やす

摂取カロリーが消費カロリーを下回っている場合、身体は足りない分のエネルギーを作り出すために筋肉や体脂肪などの組織を分解します。このような働きを「異化」・「カタボリズム」と呼びます。一方で、外から取り入れた物質を自分の身体の一部として合成し直す働きを「同化」・「アナボリズム」と呼びます。筋肉が増える反応も同化の一つです。すなわち、バルクアップをしたいならば、摂取カロリーが消費カロリーを上回っている状態を作ることが大切だと言えます。

 

摂取カロリーの目安

続いて、カロリー摂取量の目安を紹介します。トレーニングをして筋肉を増やそうと考える場合は、一般に推奨される量よりも多くのエネルギーを得る必要がある点に注意しましょう。

バルクアップのための食事では何が大切?(基礎知識編)

>一般推奨量

農林水産省によると、身体活動の程度が普通(座り仕事が中心だが、軽い運動や散歩などをする人)の場合、成人女性ならば1日あたり2000キロカロリーから2400キロカロリー、成人男性ならば2400キロカロリーから3000キロカロリーの摂取が勧められています(1)。身体活動量が少ない方や子ども、高齢者は、この値よりもやや少ない数値となります。

 

>ボディビルダーの例

前述の通り、バルクアップを考える場合は摂取カロリーを一般の方よりも増やす必要があります。余剰のエネルギーがあることで、筋肉を効率良く合成したり、トレーニングの質を上げたりすることができます。トレーニング歴や体重によって必要なエネルギー量は変わりますので、自分の状態を把握して、良い摂取のバランスを見つけることが大切です。筋肉量が増えるにつれて代謝も高くなっていくので、当然、必要なエネルギー量も増えます。コンテストでの仕上がり体重が80kg程度になる場合は、一般成人男性の1.5倍から2倍程度のエネルギー摂取が必要になると言えるでしょう。

 

三大栄養素の役割と推奨摂取量

摂取カロリー以外に大切なものとして、たんぱく質・炭水化物・脂質からなる三大栄養素があります。筋肉を増やしてバルクアップしたいと考える際には、これらの栄養素をバランス良く摂取する必要があります。今回の記事では、それぞれの栄養素の特徴を解説します。

 

たんぱく質

バルクアップのための食事では何が大切?(基礎知識編)
>生命を構成するさまざまな物質の材料となる

たんぱく質は身体を作るさまざまな物質の元となります。分かりやすい例で言えば、筋肉もたんぱく質が多数集まってできた組織です。それ以外では、身体の機能を調整する酵素の材料になったり、物質を輸送する際の手助けや免疫の維持をしたりもします。たんぱく質を十分に摂取することは、生命を維持するという観点で非常に重要だと言えます。ボディメイクに関してであれば、筋肉の材料そのものであるたんぱく質の不足は、筋肉の発達という面でマイナスになると言えます。

 

>一部のアミノ酸は筋肉の合成を促す働きも持つ

たんぱく質は、アミノ酸が複数結合してできている物質です。食品から摂取されたたんぱく質は、消化を経てアミノ酸の形で吸収され、再び身体の中で必要な形のたんぱく質へと作り変えられます。アミノ酸の中には、たんぱく質の材料となる以外に、それ自体が機能を持つものがあります。BCAA(分岐鎖アミノ酸)の一つであるロイシンは、筋たんぱく質の合成を促す働きがあることが知られています(2)

 

>一般的な推奨摂取量とボディメイクにおける推奨摂取量

たんぱく質は体の組織の材料になると同時に、身体の中の様々な機能に関わる物質です。そのため、ボディメイクを考えていない一般の方も不足しないように注意が必要です。厚生労働省の発表する食事摂取基準では、体重1kgあたり0.66gのたんぱく質の摂取が必要とされています(3)。トレーニングをして筋肉を増やしたいと考えている場合は、さらにこれより多くのたんぱく質を摂取しないといけません。体重1kgあたり2g程度の摂取が一つの目安ですが、中には、体重1kgあたり1.62g以上のたんぱく質を摂取しても、追加の効果はないとする研究もあります(4)。そのため、自分の身体の状態を見ながら、少しずつ適した量を見つけることが大切だと言えます。

 

炭水化物

バルクアップのための食事では何が大切?(基礎知識編)
>エネルギーを作る元となる

炭水化物は、ヒトが消化できる糖質と消化できない食物繊維からなります。小腸から吸収された糖質(グルコース)は、血液を介して身体の各組織に運ばれ、呼吸によりエネルギーを取り出す反応に使われます。また、使いきれなかった余剰のグルコースはグリコーゲンという物質に作り変えられ、筋肉や肝臓の中に蓄えられます。運動や絶食等により血糖値が下がった場合は、貯められたグリコーゲンを分解することで、血糖値が一定に保たれます。グルコースは、場合によっては体脂肪に変換されることもあります。

 

>消化吸収の速さが異なる食材がある
バルクアップのための食事では何が大切?(基礎知識編)

炭水化物は、含む糖質と食物繊維の割合等で、消化吸収の速さが変わります。一般にGI(グリセミック・インデックス)値と呼ばれるものが、その吸収の速さに関係する指標です。素早く消化吸収される炭水化物は、それだけ早く血糖値を上げることになります。反対に、GI値が低く、消化吸収に時間がかかるような炭水化物の場合は、血糖値の上昇も穏やかなものとなります。

脂質

バルクアップのための食事では何が大切?(基礎知識編)

>飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸がある

脂質は多く分けると飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸になります。飽和脂肪酸は分子中の炭素に二重結合がなく、そのため融点が高い(常温で固体になりやすい)性質を持ちます。不飽和脂肪酸は分子中に二重結合を多く含むため、融点が低い(常温で液体になりやすい)性質を持ちます。牛脂やラードなどが飽和脂肪酸、植物油や魚油(フィッシュオイル)が不飽和脂肪酸の代表例です。体内で合成することのできない必須脂肪酸は不飽和脂肪酸に含まれます。飽和脂肪酸の摂取過多は、健康面で悪影響をもたらす場合があるので注意が必要です。

 

>エネルギー貯蔵の観点での脂質の役割

脂肪はエネルギーを効率良く貯蔵することができる物質です。たんぱく質や炭水化物が、1gあたり4キロカロリーの熱量を持つのに対し、脂肪は1gで9キロカロリーもの熱量を持ちます。そのため、身体にエネルギーを貯める場合は脂肪の形を選ぶことが最も効率が良い選択だと言えます。しかしながら、このことが、ボディメイクで理想の身体を作る際に一番厄介なポイントとなります。この問題を乗り越えるために、選手の多くは増量期と減量期の双方でさまざまな工夫をしています。

 

まとめ

バルクアップのための食事では何が大切?(基礎知識編)
今回は、カロリー及び三大栄養素に関する基本的な知識を紹介しました。トップ選手の食事を真似て計画することはそれはそれで楽しいものですが、たまには、栄養という観点から自分の食事を見直してみてはどうでしょうか。その際に大切なのは、自分の特徴を知ることです。仮に身長や体重が同じであったとしても、代謝まで全く同じということはありません。複数の知識に基づいて、カスタムされた食生活を行っていけると良いでしょう。

執筆者:舟橋位於(ふなはし・いお)

1990年7月7日生まれ
東京大学理学部卒(学士・理学)
東京大学大学院総合文化研究科卒(修士・学術)
NSCA認定パーソナルトレーナー
調理師

東京大学在学中に石井直方教授(当時)の授業に感銘を受け、大学院は石井研究室で学ぶ。団体職員等を経て、現在は執筆業務および教育関連事業にて活動中。得意な執筆ジャンルは、運動・栄養・受験学習。

引用

(1)農林水産省|一日に必要なエネルギー量と摂取の目安

https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/balance/required.html

(2)Drummond MJ, Rasmussen BB. Leucine-enriched nutrients and the regulation of mammalian target of rapamycin signalling and human skeletal muscle protein synthesis. Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2008 May;11(3):222-6. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18403916/

(3)厚生労働省|日本人の食事摂取基準
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586557.pdf

(4)Morton RW, Murphy KT, McKellar SR, Schoenfeld BJ, Henselmans M, Helms E, Aragon AA, Devries MC, Banfield L, Krieger JW, Phillips SM. A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. Br J Sports Med. 2018 Mar;52(6):376-384.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28698222/

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