卵はフィットネス愛好者とって重要なタンパク源となる食材の一つだ。しかし、私たちの生活に欠かすことのできない食材だけに、通説や古くなっている情報や誤った情報も多い。そこで、本記事では卵の栄光に関しての新常識を紹介し、なぜ卵が筋肉づくりのミカタになるのかを紐解く。
(IRONMAN2026年1月号「from IRONMAN USA」より転載)
1.全トレーニー必須食材の卵

卵は9種類の必須アミノ酸の全てを含み、完全なタンパク質食材として知られている。特に筋タンパク質合成に重要なBCAAやグルタミンも含有している。
卵由来のタンパク質は極めて吸収率が高く、インディアナ州のボール州立大学の実験では、卵を摂取したことで総テストステロンとヘモグロビンの生成が有意に増加することが観測されている。
にもかかわらず、一部の人々が卵を避ける理由は、主に卵黄に含まれる脂質に過敏になっているからだろう。しかし、卵1個あたりの脂肪量は5g程度で、その中で飽和脂肪酸が占めるのは約1.6gに過ぎない。
「卵白だけを使ったオムレツ」は、ボディビルダーの食事の文化に深く根付いているようだ。この習慣を変えることは容易ではないものの、朝食に卵を食べる場合、卵白だけでなく卵黄も含めた全卵の方が優れていることを主張し続けたい。
臨床学術誌『メタボリズム』に掲載された研究では、適度な糖質制限食(総カロリーの25~30%)に全卵を加えたグループは、卵白のみを加えたグループと比較して、被験者のインスリン感受性および血しょうインスリンレベルが改善されている。
卵白は利用効率が高いタンパク質で構成されているが、他の微量栄養素の含有量は限定的だ。一方、卵黄は、脂溶性ビタミン(A、E、D、K)、必須ミネラル(カルシウム、マグネシウム、鉄、セレンなど)、さらには強力な抗酸化物質であるカロテノイド(ルテイン、ゼアキサンチン)、およびオメガ3脂肪酸などの必須脂肪酸が濃縮された栄養の宝庫だ。
また、卵黄にはコリンが豊富に含まれており、抗がん作用および健康な脳機能の維持に寄与することが示唆されている。つまり、卵白だけを食べることは、本来卵から得られるはずの恩恵をほとんど無駄にしているということなのだ。
2.卵で血糖値が安定する?
雑誌『プリベンション』が発表した健康特集の中に、興味深い記事があったので紹介したい。
被験者を対象とした試験では、朝食に全卵2個を摂取したグループは、同カロリー量のベーグルを摂取したグループと比較して、体重減少率が65%高く、肥満度の改善率も61%優位であったことが報告されている。
また、卵を食べたグループは血糖値が長時間安定したのに対し、ベーグルを食べたグループは血糖値が急激に上昇した後、約1時間で急降下し、その結果として空腹感をもたらした。このため、卵は食欲を大きく変化させない効果があるが、シリアルやベーグルは炭水化物なので血糖値の乱高下が起きやすく、食欲が安定しないことが考えられる。
3.コレステロールの量は体内で調節される

卵黄を避ける主な要因に、コレステロールに対する根強い懸念がある。しかし、この機会にコレステロール代謝に関する正しい知識をつけていただきたい。
例えば全卵のような食品からコレステロールを摂取すると、生体は恒常性維持のために、体内でのコレステロール合成量を抑制するよう働く。逆に、食事からのコレステロールを過度に制限すると、体内でコレステロールの合成が活発化する。この調節は、肝臓に備わるフィードバック機能がコントロールしている。
さらに、全卵を食べると、善玉のHDL コレステロールが増えるという報告が多数得られている。これにより、総コレステロール/ HDL 比など、血液指標の改善傾向が多くの研究で示されている。
コネチカット大学で実施された12週間の研究では、被験者を卵白のみを摂取するグループ1と、全卵を1日3個摂取するグループ2に分け、両グループに低炭水化物・高脂肪食を摂取させた。その結果、卵白グループではHDL およびLDLに大きな変化が見られなかったのに対し、全卵グループではHDL が10~20% 増加し、LDL は実験前とほぼ同レベルを維持した。一般に、HDL レベルが高いことは心臓病リスクの低下と関連付けられるため、この結果から、卵白単独よりも全卵を摂取することが、血中脂質に良好な影響をもたらすことが考えられる。
4.脂質=悪は古い
全卵は、卵白単独と比較して脂質を含むため、必然的に摂取カロリーは高くなる。しかし、この良質な脂質を伴う全卵を摂取することで、一日に必要な多くの栄養素が相当な割合で満たされるため、長期的なカロリー管理において決してマイナスにはならない。
全卵に含まれる良質の脂質は、体内の脂肪燃焼を促すホルモンや、アナボリック作用をもたらすホルモンの活性化にも貢献する。卵黄に含まれる脂肪とカロリーは栄養価が高く、体脂肪の燃焼や筋発達を促進するのだ。
5.オーガニック卵が理想的

栄養価を重視する場合、自然に近い状態で飼育された鶏が産んだオーガニック卵が理想的である。オーガニック卵の鶏は、自由に歩き回り、昆虫やミミズなどを餌とすることができる。
これが、主にトウモロコシや大豆を混合した飼料のみを摂取する大規模生産(ブロイラー)の鶏が産む卵とは栄養素が異なる理由だ。
例えば、大量生産された卵はオメガ6脂肪酸の含有量が比較的多く、オメガ3脂肪酸が少なめな傾向にある。これに対し、オーガニック卵は、大量生産卵と比較してオメガ3脂肪酸を圧倒的に多く含有している。
オーガニック卵は、一般的に殻に厚みがあり、卵黄が濃いオレンジ色をしていることが多い。これは、カロテノイドなどの抗酸化物質が豊富に含まれているからだ。ただし、大量生産卵でも飼料によって卵黄の色を調整できるため、卵黄の色のみで卵の品質を断定することはできない。










