筋肉とトレーニングへの情熱に人生を捧げた社長たちを紹介するこのコーナー。第二弾は常識を覆す“ジャンクフードの減量食”をつくりだした脱サラ社長を紹介したい。
「自分自身の幾度ものボディメイク失敗経験を経て、肉体改造における筋トレと食事の重要性、特に食事の改善は成否の8割を占めると痛感しました」
「しかし、いわゆる“トレーニー食”は娯楽性を無視し栄養素のみに特化したメニューであることが多く、その徹底した管理は手間がかかるだけでなく、世間との食生活の乖離から社会性にも影響を及ぼすという現実を見て、“トレーニーも非トレーニーも皆で食べられる減量食をつくれないだろうか”と考えたのが商品着想の第一歩です」
株式会社LEAN BURGER’Sの代表取締役を務める上田剛(うえだ・つよし/57)社長の挑戦は、こうして幕を開けた。
「皆でワイワイ食べられるものといえばジャンクフード、ジャンクフードといえばハンバーガーではないかという発想から、社名にもなったリーン(健康的)な低脂質で高たんぱく質のハンバーガーの開発を始めました。後押しとなったのは世間のフィットネス意識の向上です。私は何度もフィットネスブームを体験した経験から、今度は一過性ではなく“文化としての根付き”だと感じました。良いものを提供すれば必ず需要がある、そう確信しました」
「ただ、当時は全く異業種のサラリーマンとして勤めるなかでの手探りでの挑戦でしたので、土日をつかって自宅のキッチンで2年かけて完成までこぎつけました。“美味しさ”という点に絶対に妥協したくなかったので、様々な方に試食協力を仰ぎ太鼓判をもらって、満を辞して恵比寿への出店をしました」
評判は瞬く間に広がり、多くのトレーニーだけでなく筋トレインフルエンサーも来店、大手食品会社「はごろもフーズ」とのシーチキンをつかったコラボ商品も展開した。しかし……。
「出店と同時にコロナ禍に突入し、行動制限により非常に厳しい経営状況に陥りました。根強いファンの方々に支えていただくも、店舗の維持は難しく撤退を余儀なくされました」
ただ、上田社長の情熱は苦境を経て、さらに進化を遂げる。
「商品への自信・実績から事業を畳むという選択肢は全くありませんでした。並行して開発を進めていた『プロテインソーセージ』の主戦化に舵を切りました。実店舗から通販という提供の変化に伴い最も課題となったのは、解凍した際の食味の変化でした。手軽さを維持したまま、直提供に劣らない品質をなんとしても届けたい。多数のアスリートやトレーナーに監修を依頼し、徹底的に安定した美味しさにこだわって完成に辿り着きました」
こうして誕生したプロテインソーセージは、冷蔵庫での自然解凍をしておけば“玄関を開けて5分で食べられる”という利便性と高い栄養価をそのままにジューシーで豊かな味わいを実現。口コミにより着々とその認知と購買層を拡げている。
「既存の高たんぱく食品の主流であるプロテインは競合ではなく、むしろ共存関係にあると思っています。吸収の早いプロテインと、リアルフードでの緩やかな吸収は相性が良く、併用で筋合成をより高めることができます。私自身、そのように自社商品とプロテインを併用して食生活に取り入れています」
また、上田社長は慌ただしい日々のなか、自身のトレーニングも欠かさない。その理由とは。
「自分自身が筋トレと食事の大切さの体現になるためですね。中年太り時代に筋トレを始めた当初は周囲から『何を目指してるのか』と笑われていましたが、実際に身体が変わってから『自分もジムに通おうか』という反応に変わりました。現在は土日だけのジム通いではありますが、逆に 50歳を過ぎたウィークエンドトレーニーでも、このように肉体改造は可能なのだ、ということを発信していきたいです」
今後の事業展望についても意欲を燃やす。
「元々、ソーセージはホットドッグとして展開予定で開発したもので、ようやく納得できる低糖質のバンズが完成しもうすぐリリースとなります。また、既存製品の小型化や価格面の調整も行っており、さらに多くの皆様の手に届くよう改良を
たゆまず重ねていきます」
脱サラでの挑戦、店舗撤退からさらに業務を拡大する不屈の意思。まさに筋肉社長の名に相応しいマッチョでパワフルな事業は、今後もさらに飛躍をみせていくだろう。
取材・文:にしかわ花 写真提供:上田剛