坊主頭に隆々とした筋肉。フリーポーズを人気漫画『ワンパンマン』のアニメオープニング曲に乗せて喝采を浴びたのは、ワンパンマンの作画を担当する村田雄介(むらた・ゆうすけ)氏の長男、村田圭介(むらた・けいすけ/18)さんだ。その様子は、あらゆる敵を一撃で倒すスキンヘッドの最強主人公、ワンパンマン(サイタマ)が現実に現れたとインターネットでも大きな反響を呼んだ。
【写真】まるで「ワンパンマン」村田圭介さんの筋肉モリモリな肉体
小学2年生で筋トレ開始 孤独なヒーローの誕生
村田さんは8月25日、第19回全国高校生ボディビル選手権大会170cm以下級にて準優勝を獲得した。その彼がすごいトレーニングをしているという情報を聞きつけ、インタビューを行った。
「レッグプレスは1トンです。高校2年生の最後くらいからこの重量でやっています。他によくすごいと言われるのは、ブルガリアンスクワットが片手70kgずつ、ワンハンドサイドレイズが90kg、ワンハンドロウが120kg……」
レッグプレス1トンとは、いかなるものかを説明したい。プロボディビル界の世界最高峰、ミスターオリンピアを8連覇した伝説的ボディビルダーのロニー・コールマンが2300Ibs(約1トン)のレッグプレスを実施していた逸話はボディビル界隈では有名だ。それに匹敵する高重量を現役高校生が扱っている。まさに、「すごい」としか言いようがない内容である。村田さんがトレーニングを始めたのは、小学2年生のときだった。
「元々いじめに遭っていて、太っている自分に対してのコンプレックスもあり筋トレを始めました」
はじめは腕立て伏せや腹筋といった自重トレーニング、ランニングからのスタートだった。強くなりたいという思いから始めたが、次第にトレーニング自体が楽しくなり、中学1年生になるころにはジムに入会。ひたすら独学で打ち込んだという。熱中は熱中を呼び高校1年の最後にはゴールドジムに移籍、減量期には1日のおよそ4.5〜6時間をジムで過ごすようになった。
「憧れの選手がいてという感じではなく、とにかく自分自身がただひたすら大きく、強くなりたいという気持ちです。トレーニングが楽しい。高重量を挙げるのが楽しい。きっかけはコンプレックスでしたが、今は暗い情熱ではなく趣味として、心から楽しんでやっています」
今や1トンを挙げるレッグプレスは、2年前は腕の補助付きで400kgだったという。村田さんは驚異のハイボリュームトレーニングでその記録を伸ばした。
「増量期で1日35〜40セット、減量期は倍近くに増えて60〜70セットを行います。減量期のほうがボリュームが増えるのは珍しいと言われますが、とにかく動いて絞りたいという気持ちもあってガンガントレーニングします。そのせいか、減量末期でも重量が伸び続けて今に至ります」
将来の夢は「絵も描けるミスター日本」
村田さんがトレーニングと双璧で力を入れるのはイラストだ。部屋の壁は隙間なく制作した作品で埋め尽くされ、SNSでは有償でのイラスト作成も請け負っている。
「絵は幼稚園のころから描いています。筋トレより歴が長いですね。父に直接教わってではなく、描いている姿を真似て始めました」
影響を受けた漫画は『北斗の拳』『ドラゴンボール』、そして『ワンパンマン』。
「父が有名な作品を差し入れてくれるので部屋にはたくさん本がありますが、ほとんどの時間をジムで過ごすため読んだ数はそんなに多くはないと思います。ただ、この3作品にはすごく感銘を受けました」
ワンパンマンのなかで好きなキャラクターはガロウ(ヴィランでありダークヒーロー。主人公と対をなす最強人物として描かれる)。反骨心から成り上がっていく姿に共感しているからだという。
「将来は、絵も描けるミスター日本(ボディビル最高峰の舞台である日本男子ボディビル選手権大会優勝者)になりたいです。今までそういう人はいなかったと思うので、面白いかなと。直近の目標では、『JURASSIC CUP』(※)のルーキークラスに、参加年齢に達したらチャレンジしたいです。フリーポーズでまたワンパンマンの曲で決めたいですね」
近年、ボディビル界に続々と台頭する個性的なニューフェイスに、また一人強烈な人物が拳を突き上げた。
(※)レジェンドボディビルダーとして名を馳せる木澤大祐(きざわ・だいすけ)選手および合戸孝二(ごうど・こうじ)選手主催の新興ボディビル大会。アンチドーピングボディビルディングの推進と、高額賞金による選手の生活向上を掲げている。
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
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文:にしかわ花 撮影:中島康介