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肩のないフィジーク系アスリートに明日はない!究極の三角筋をつくるトレーニング法と4つのテクニック

誰にだって調子のいい日もあれば悪い日もある。顔の表情を見ればだいたい分かるものだが、表情と同じくらい、その人のその日の調子を表しているのが肩だ。肩を見れば調子の良し悪しが見えてくる。例えば胸を張って堂々とし、肩が後ろにしっかり引けているようなとき、たいていの人は調子がいいことを無意識のうちにアピールしている。仕事にしても人間関係にしても、そういう姿勢でいる人はうまくいっていることが多いようだ。

逆に調子が悪いとき、肩は前に出て丸まり、そのせいで猫背になっていることが多い。内臓の調子が良くないときも身体は前に丸まってしまい、痛いところや調子の悪いところを無意識に守るような姿勢になってしまう。

調子の良し悪しにかかわらず、アスリートが目指すのは3つのヘッドのセパレーションが明確に分かれていて、丸みがあって肉厚で、まるで砲丸が埋め込まれているような迫力のある肩だ。そんな憧れの肩を手に入れるためにはどのようなトレーニングが必要なのか。今回は数多くの種目やテクニックの中から、おすすめのものを紹介していきたい。

文:Sarah Chadwell, NASM-CPT 翻訳:ゴンズプロダクション

肩のないフィジーク系アスリートに明日はない

芸術的で美しい身体は、肩なくしては語れない。何しろ肩は上半身の上部輪郭を形成する重要な役割を担っているのだから当然だ。幅も厚みもあり、筋密度の高い肩を作ることはフィジーク系アスリートには不可欠だし、ステージでの第一印象は肩で決まると言っても過言ではない。それくらいインパクトがある部位なのだ。

広い肩を持っていれば、肩からウエストのラインに美しいV字のシルエットが作られる。肩幅を広く見せられれば、それだけウエストは引き締まって見えるので、上半身のV字シェイプがより強調されるのだ。

だからこそ、フィジーク系アスリートは肩のワークアウトを決しておろそかにはしない。知っている限りの肩の種目をワークアウトに盛り込み、理想の肩を思い描きながら種目をこなしていく。しかし、その努力に対して結果は伴っているだろうか。

今の肩の発達具合に満足していないというのであれば、やはりワークアウトを見直すべきかもしれない。何でもやればいいというものではないのだ。効果を実感しながら行わなければ時間とエネルギーを無駄にするだけだ。

例えば、肩のワークアウトを構成する種目数を絞って少なくしたとしても、的確な種目が選択されていれば理想の肩に近づけることができる。

自分の肩のワークアウトを改めて分析してみて、アイソレーション系種目ばかりが目立つというなら、それは種目の選択を誤っている。必要なのは多関節種目だ。肩を肥大させて迫力を増し、洗練されたV字シェイプのアウトラインを際立たせたいなら多関節種目をしっかり行い、肩の筋肉を本気で追い込む必要がある。

テクニック#1
プレス&プル・ワークアウト

肩の筋肉は三角筋とも呼ばれている。三角筋は3つの筋肉の塊が組み合わさった構造をしていて、それぞれは前部ヘッド、側部ヘッド、後部ヘッドと呼ばれている。分かりやすく言えば、ミカンの房が3つつながっているような形状だ。特徴のある形をした三角筋だが、実のところ発達させるのがとても難しい。あまりにも頑固な部位なので、ワークアウトをついやり過ぎてしまい、肩を痛めてしまうケースも少なくないのだ。

思いついた順番で肩の種目を行っても効果はなかなか引き出せない。必要なのは的確な刺激だ。本気で三角筋を肥大させたいと思っているなら、ぜひ基本に返って、高重量でのプレス&プル・ワークアウトを実践してみよう。

押す種目と引く種目が効くわけ

押す種目と引く種目に分けて、2種類の肩のワークアウトを作る。このようなやり方を「プッシュ/プル法」と呼んでいる。この方法はもちろん、肩以外の部位にも応用することができる。

肩は3つの筋肉の塊で構成されていることは先にも述べたが、選択した種目や、そのやり方によって、最も強い刺激が伝わる部分を変化させることができるのだ。

これは言い換えると、発達の度合いに差を作ってしまうということにもなる。つまり、後部ヘッドは弱いが前部ヘッドはよく発達しているというようにだ。

三角筋を構成する3つのヘッドがアンバランスになると、三角筋特有のきれいな球状にならなくなってしまう。この問題を解決するのがプッシュ/プル法だ。

この方法なら3つのヘッドに均等に刺激を行き渡らせることができるので、形のいい、どの角度から見てもバランスのとれた球状の三角筋を作ることができるというわけだ。

種目を選択する

プッシュ(プレス)系種目の中から4、5種目を選択して、肩のプッシュ系ワークアウトを作る。続いて、プル系種目の中から4、5種目を選択して肩のプル系ワークアウトを作る。

プッシュ系とプル系のワークアウトは、肩のワークアウト日が来るたびに交互に行うことで、押す動作による刺激と引く動作による刺激を三角筋全体に、均等に与えることができる。
[プッシュ系種目]
◉バーベル・オーバーヘッドプレス
◉ダンベル・オーバーヘッドプレス
◉バーベル・ビハインドネックプレス
◉バーベル・ベンチプレス
◉ダンベル・ベンチプレス
◉インクライン・ベンチプレス
◉アーノルドプレス
◉ランドマインプレス
[プル系種目]
◉バーベル・フロントレイズ
◉ダンベル・フロントレイズ
◉ダンベル・サイドレイズ
◉リアレイズ
◉バーベル・アップライトロウイング
◉ダンベル・アップライトロウイング
◉ケーブル・フェイスプル

この種目の一覧を見て分かるとおり、肩の種目だけでなく肩周辺の筋肉にも刺激が伝わる種目も入っている。しかし、いずれも肩を強く刺激する種目なので、肩と一緒に周辺の筋肉も運動に参加させることで、より大きな負荷をかけることが可能になるのだ。

また、プッシュ/プル法を試すなら、例えば高頻度でトレーニングを行いたいというトレーニーなら次のようにスケジュールを組むことができる。
◉1日目:プッシュ系ワークアウト
◉2日目:プル系ワークアウト
◉3日目:下半身のワークアウト
◉4日目:プッシュ系ワークアウト
◉5日目:プル系ワークアウト
◉6日目、7日目:休日
このスケジュールでは肩と下半身のワークアウトしかないと思う人もいるだろうが、前述したとおり肩のワークアウトであっても、胸や背中も運動に参加する種目が入っているので、肩に重点を置きながらも全身を鍛えるようなスケジュールを組むことができるのである。

テクニック#2
スーパーセットオンリー

肩は発達させたいが、今のワークアウトスケジュールを変えたくないという人もいるだろう。ならば、今のスケジュールを維持しながら、スーパーセット法を取り入れたワークアウトに挑戦してみてはどうだろうか。この方法なら今のスケジュールを維持したまま、はるかに強度の高い肩のワークアウトを行うことができるはずだ。

スーパーセット法を取り入れると、どうしてワークアウトの強度が高まるのか。その理由を知るために、まずはスーパーセット法がどんなものなのかを理解しておきたい。

スーパーセット法とは

ボディビル界では、スーパーセット法はとても人気のあるトレーニングテクニックだ。本来のスーパーセット法では、例えば上腕二頭筋と上腕三頭筋など拮抗筋を刺激する2種目を組み合わせるのだが、同じ部位を刺激する2種目を組み合わせることも広義でスーパーセット法であると見なされている。

スーパーセット法では、選択した2種目を連続して1セットずつ行う。1種目と2種目目は休憩を一切挟まずに1セットずつを連続して行い、それを終えたら1サイクルとしてカウントし、次のサイクルを開始するまでに1、2分間の休憩を挟むようにする。

どうして2つの種目を連続して行うのか。連続して1セットずつ行うことにどんな意味があるのか。それは、2種目を連続して行うことで筋緊張時間を延長させることができるからだ。

例えば、1種目目の1セット目を終えるのに30秒、その直後の2種目目を35秒で終えたとしたら、対象筋は65秒間にわたって緊張状態が維持されたことになる。しかも2つの種目を行っているので、異なる角度の刺激を得ながら筋緊張時間を延ばすことができる。これは筋肥大を促す上でとても有用なことである。

さらに、スーパーセットにすることで全体のトレーニング時間も短縮される。短時間で効率よく、しかも十分な強さの刺激を得ながらワークアウトを完了させることができるのだ。

例えば以下のようなワークアウトはどうだろうか。10種目を2つずつ組み合わせ、5つのスーパーセットで行う肩のワークアウトだ。間違いなく強烈なパンプを得ることができる。スーパーセットなので10種目行っても所要時間は1時間以内だ。

注意すべきことがあるとすれば、どのスーパーセットも2、3サイクルで終了させること。種目数が多いので、やり過ぎれば運動量が多くなりすぎてしまう。

オーバートレーニングに注意しながら、スーパーセットオンリーの肩のワークアウトに挑戦してみよう。
《スーパーセット1》
◉ダンベル・オーバーヘッドプレス
◉リアレイズ
《スーパーセット2》
◉ランドマインプレス
◉ケーブル・フェイスプル
《スーパーセット3》
◉プッシュプレス
◉アップライト・ロウイング
《スーパーセット4》
◉アーノルドプレス
◉シーテッド・サイドレイズ
《スーパーセット5》
◉プレート・フロントレイズ
◉ダンベルシュラッグ

テクニック#3
オーバーヘッドプレスを必須に

見事な肩を手に入れた人のほとんどは、オーバーヘッドプレスをしっかり行っている。この種目を行わずに、理想の肩を作り上げることはできないと言ってもいいかもしれない。もう少し詳しく言うと、オーバーヘッドプレスでも、ダンベルを使ったオーバーヘッドプレスは絶対に欠かせない種目なのだ。

ダンベル・オーバーヘッドプレスが効果的であるというのは、多くの人たちの経験談だけでなく、科学的に行われた実験からも示されている。実験の多くで、ダンベルを使ったオーバーヘッドプレスは、特に三角筋の前部ヘッドの筋線維を活性化し、他のどんな種目よりも勝っていたことが明らかになっているのだ。

もちろん、この種目が刺激するのは前部ヘッドだけではない。肩幅を作るために不可欠な側部ヘッドや、形のいい丸みを作るために欠かせない後部ヘッドにも刺激が行きわたる。完成度の高い肩を作るなら、ダンベル・オーバーヘッドプレスは欠かせないのだ。

もちろん、すでにこの種目をワークアウトに組み込んで長年行っているという人もいるだろう。だとすれば、以下を参考にして、ワンランク上のやり方でこの種目を行ってみてほしい。この方法で使用重量が増加してくると、三角筋の筋量アップだけでなくベンチプレスでの1RMも伸びるはずだ。

ワンランク上のダンベル・オーバーヘッドプレス

●まずワークアウトの前半、つまり、エネルギーが十分に有り余っている段階でダンベル・オーバーヘッドプレスを行う。そしてさらに、ワークアウトの仕上げとして再度この種目を行うことも大いに意味がある。もちろん、仕上げの段階だからエネルギーレベルは低下しているはずだが、使用重量を減らしてレップ数を多めに行うことで、安全に三角筋全体を追い込み、強烈なパンプを確実に得ることができるはずだ。
●ダンベルを使って行うことのメリットは、動作を左右交互に行うこともできる点にある。一般的なダンベル・オーバーヘッドプレスでは両手を同時に挙上して下ろすやり方だが、ワンランク上のやり方に挑戦するなら、左右交互に1レップずつ行ってみよう。両手を同時に動かすのと違ってバランスを取るのが難しいので、動作の難易度を高めることができる。
●運動強度を高めるために、セットごとに使用重量を増やしていく。その場合、レップス数は減らしていく必要があるが、使用重量にこだわったやり方で行うのも新鮮な刺激を得る上で役立つはずだ。
●頭上にダンベルを押し上げる必要があるので、限界まで追い込むのが難しいと感じる人もいるかもしれない。もしトレーニングパートナーがいるなら、運動強度を高めるためにフォーストレップにチャレンジして限界まで追い込んでみよう。
●ベンチ台に座ってダンベル・オーバーヘッドプレスをやってきた人たちは、この機会にスタンディングで行ってみよう。立った状態で行うと、それだけで運動強度が高まる。立位で高重量を頭上に押し上げるので、バランスをとるために全身を緊張させる必要があるのだ。ぜひ試してみよう。

テクニック#4
ローテーターカフを徹底強化

肩の筋量アップためのテクニックとして4番目の解説になってしまったが、正直なところローテーターカフについては、最初の話題として取り上げてもいいほど重要だ。なぜなら、ローテーターカフが弱いまま放置され、その状態で三角筋を追い込むようなワークアウトをすればケガの原因になりかねないからだ。

毎回のトレーニングでしっかり追い込むようなトレーニングを行いたいが、同時にケガを回避していく方法も考えなければならない。ケガをすればトレーニングの中断を余儀なくされ、トレーニングを中断すれば、当然、筋発達は望めない。

ケガを防ぐにはウォームアップが重要なことは言うまでもないが、特に肩においては、ウォームアップに加えてローテーターカフを意識的に強化していくことが不可欠だ。

肩に痛みがあるなら、ローテーターカフの軽度の断裂、あるいは肩の腱の炎症(腱炎)、肩関節の滑液包炎、上腕二頭筋の腱の炎症などが原因として考えられる。

いずれの場合でも、肩の可動域が制限されてしまうため、肩が関わるほとんどの種目をフルレンジで行えなくなったり、十分な刺激が得られなくなったりする。しかもそれは肩だけに限らず、上半身の筋肉の発達を停滞させることになるのである。

そんな事態を避けるために、肩のワークアウトの前に必ずローテーターカフをウォームアップしたり、強化しておくことを勧めたい。そのためにも、ローテーターカフをダイレクトに刺激する種目を肩のワークアウトに組み込んでほしいのだ。

ただ、そうなると種目数が増えて運動量が増加し、オーバートレーニングに陥る危険性が高まると心配する人もいるだろう。しかし、ローテーターカフの種目を追加した程度でオーバートレーニングに陥ることはない。所要時間も短いので、肩の種目数を調整する必要はないはずだ。

ローテーターカフの種目は、どれも地味な動きのものばかりだ。肩のワークアウトを開始したら、すぐにでも高重量のウエイトを頭上に押し上げたいところだろう。しかし、その前に必ずこれらのローテーターカフを強化するための運動を行い、さらに肩をウォームアップする運動を行うこと。肩の種目を開始するのはそれからだ。

最後に

肩を発達させることはそう簡単なことではないし、やり方を間違えれば簡単にケガをする。肩を痛めれば胸、背中、腕の種目ですら今までのようにはいかなくなるのだ。肩のケガは肩だけに影響するのではなく、上半身全体の発達にマイナスになるということを忘れないでほしい。

ケガを予防するためにもローテーターカフをしっかり強化し、肩全体を温めてから本番のワークアウトに臨むようにしたい。また、肩は上半身を刺激するさまざまな種目で間接的な刺激を受けているので、決してやり過ぎないことが重要だ。オーバートレーニングもまたケガの原因になるのだ。そういった点をひとつずつ考慮しながら、肩をダイレクトに刺激するワークアウトの運動量を決めるようにしよう。

続けてお読みください。
▶新幹線の運転士にして、チャンピオン、伊吹主税直伝「メンズフィジーク映えする肩の作り方!」


執筆者:Sarah Chadwell
プロのライター、フィットネスライフ提唱者、パーソナルトレーナー、グループワークアウト・インストラクター、ナチュラルトレーニー、ボディビルダー、ビキニアスリート、フィギュアアスリート。


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