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7つのトピックから探る脚の筋トレの定番「脚のトレーニングを避けてはいけない」

映画『パンピングアイアン』の中でアーノルド・シュワルツェネッガーがこう言った。「よし、マジでやろうぜ」 脚のワークアウト日がまわってくるたびに、ジムの駐車場に車を停めた瞬間、私の頭の中にアーノルドのこの台詞が響く。私の場合、脚のワークアウトを行うのは月曜日にしている。ウエイトトレーニングの世界では月曜日を胸のワークアウト日にしている人が圧倒的に多いと耳にするが、私は新しい週のスタートを脚のワークアウトで始めるのが好きなのだ。月曜日になると、脚のワークアウトに備えて必要以上に気合いが入る。それが必然的に新たな1週間のスタートになるのである。

文:William Steven Litz 翻訳:ゴンズプロダクション

脚ワークアウトは脚のためだけじゃない

脚のワークアウトの話を始めると尻込みしてしまう人が多い。きつくてつらいからだ。しかし、それが必須であることは誰だって知っている。だから「脚のワークアウトは絶対に休まない!」と自分に言い聞かせてジムへと向かうのである。

脚のワークアウトが重要なわけは、その効果が脚だけにとどまらないからだ。実は、脚のトレーニングには全身の筋発達を促す役割がある。脚の筋肉を刺激するだけなのに、どうして体全体に影響するのか。それは、脚の筋肉を刺激することでアナボリックホルモンの分泌が活発になり、それが全身を巡るからである。

脚の筋肉は非常に大きな部位で体積も大きい。そのため、この大きな筋肉部位が刺激すると、腕を刺激したときとは比べものにならないぐらいの大量のアナボリックホルモンが分泌されるのである。

また、下半身の種目では比較的高重量を扱うことができる。レッグプレスやスクワットで扱う重要は、肩の種目で扱う重量よりはるかに重い。これもまた体内のアナボリズムを高める要因になるのだ。結局のところ、脚のワークアウトは脚だけのためのものではないということなのだ

理想のレップ数とは

脚の種目を行う場合、理想のレップ数は高回数がいいか低回数かいいか。これについての議論はもう何年にもわたって続けられているのに、いまだに明確な答えは出ていない。

フリーウエイトとマシンはどちらが筋発達に効果があるのかというのとおそらく同じだ。どうして答えが出ないのか。それは、どちらにも長所があり、どちらか一方に決めることができないからである。

下半身の筋肉はとてもパワフルだ。その要素だけに目を向ければ「高重量×低回数」でやり込むのが効果的なように思える。しかし、下半身にはたくさんの遅筋線維もあり、持久力に優れた筋肉でもあるのだ。

実際、日常生活を問題なく送っている健康な一般人が、5分間歩き続けると座らなければならないようなことになっているだろうか? そんなことはないはずだ。下半身の筋肉は持久能力も高いわけで、高回数のセットも行うべきということになる。

高重量を使ったやり方と運動量を増やしたやり方。この2つをミックスさせているから、私たちは脚のワークアウトに対して恐怖を感じ、敬遠したくなってしまうのではないだろうか。

IFBBプロボディビルダーとして活躍したクリス・カミアーは自分の脚のワークアウトについてこう語っていた。「若いころは高重量のスクワットをよくやった。143㎏×40レップからスタートして、226・8㎏まで重量を増やして10レップ、さらに321・6㎏で4レップ。モンスター級の脚を作り上げたトム・プラッツは143㎏×50レップのスクワットをやっていたそうだから、私も彼に近いことを実践すべきだと思ったんだ」

これついては次のトピックで詳しく解説しよう。

脚の種目は低回数? 高回数?

脚の筋肉は大きく、遅筋線維も速筋線維もたくさん詰め込まれている。だからこそ、下半身の筋肉には高回数と低回数、両方のやり方で種目を行うことが大切なのだが、それを勧めたい理由がもうひとつある。

筋肉を構成している筋線維は、筋原線維と呼ばれる細い糸のような物質が集まって作られている。また、筋原線維と筋原線維の間には、筋形質と呼ばれる細胞質が満たされている。実は、筋原線維は低回数の運動に反応しやすく、筋形質は高回数の運動(筋緊張時間の長い運動)によって刺激を受ける性質があるのだ。

筋原線維も筋形質も体積を増していけば、おのずと筋線維は肥大する。筋線維が肥大すれば、それは私たちが目指している筋肉のサイズアップにつながっていくのである。

筋発達の大半は筋形質の増量によってもたらされることが知られているのだが、だからといって筋原線維の肥大が不要であるというわけではない。結局、脚のサイズアップを図るためには、筋形質を増量させる高回数の運動と、筋原線維を太くする低回数の運動の両方を織り交ぜることが必要になってくるのである。

パワーリフターやオリンピックリフターが行うトレーニングは高重量×低回数がメインだ。この種の運動は筋原線維を刺激する。一方、ボディビルダーは低回数も高回数も行うから、筋形質も筋原線維も増量する。その結果、ボディビルダーの筋肉は明らかにパワーリフターよりもサイズが大きくなるのである。

高回数のセットは、必然的に筋緊張時間を延ばすことになり、それが筋肥大に貢献する。特に脚の筋肉の場合は高回数による筋肥大効果が顕著だ。それなのに私は、高重量でのやり方こそが脚の筋肥大をもたらすと長い間信じて疑わなかった。

試しに高重量で5レップのスクワットを行ってみると、これは間違いなく楽しいということが分かる。ところが、重量を減らしてセットあたり20〜50レップやろうとすると、まさに地獄である。もう二度とやりたくないと思ってしまうほどだ。しかし、これこそが筋肥大のために必要な刺激なのだ。

これまで大腿部の筋量アップには高重量×低回数しかないと信じてきた人たちは、これを機会にぜひ中重量×高回数に挑戦してみてほしい。間違いなくワークアウト全体の強度が高まり、筋量アップにつながるはずだ。

高重量と高回数を織り交ぜよう

筋肥大を目的にしているなら、筋緊張時間を延ばす必要があり、そのためには高回数で行うセットが必要になる。しかし、ガツンとした刺激を得るには、やはりある程度の高重量は必要だ。高重量も扱い、なおかつ高回数でも行う。そんなワークアウトは可能なのだろうか?

最もシンプルな方法は、スクワットのような多関節種目からワークアウトを開始し、そのような種目には高重量×6〜10レップで行う。そのうち脚が疲労してきて筋出力は低下していくので、そのころから15〜30レップのセットに切り替える。こうした流れでワークアウトを行うと、高重量とハイレップスをそれぞれ重視したやり方で脚の筋肉を刺激することができ、しかもワークアウトを終えたときには痛いほどのパンプが得られているはずだ。

もちろん、高重量を重視した脚のワークアウトと高回数を重視した脚のワークアウトを用意しておけば、それらを交互に行うことで脚の筋肉を構成しているすべての要素をまんべんなく刺激することができる。バリエーションがほしい、毎回同じ内容のワークアウトでは飽きてしまうというなら、ワークアウトごとに高重量重視の日と高回数重視の日に分けて行うといいだろう。

高強度テクニックの活用

ワークアウト強度を高めるためのテクニックがいくつかあるので試してみてはどうだろうか。

【レストポーズ法】

高重量を扱いたいが、筋緊張時間も延長したいという場合はレストポーズ法がいい。このテクニックはマイク・メンツァーが広めたもので、最近はDCトレーニング法の中でも頻繁に用いられている。
①8レップが限界の重量をセットし、まずは8レップを行う。
②8レップを終えたら、トップポジションの状態でストッパーをかけて15秒休む。
③15秒の休憩後、ストッパーを外してレップを再開する。今度は4レップ程度で限界が来るはずだ。
④限界が来たら先ほどと同じようにして15秒間休み、レップを再開する。
⑤今度は2レップ程度で限界が来るだろう。ここまで来たらセットを終える。

【ドロップセット法】

ドロップセット法も高重量とハイレップスの効果を一度に得ることができる。ドロップセット法はストリップセット法とも呼ばれていて、高重量からスタートし、徐々に重量を軽くしていく。
①6レップが限界の重量を使って種目をスタートする。
②6レップ前後で限界が来たらすぐに重量を減らして、さらに6レップを目標にして続ける。
③再び6レップ前後で限界が来たら、さらに重量を減らして6〜10レップを目標に3度目の追い込みをかける。
④3度目の限界に達してもまだ休まない。ここからさらに重量を減らして最後の15レップを行う。
⑤もやは精も根も尽き果てたというレベルまで追い込もう。最後の1レップは対象筋をトップポジションで収縮させたまま限界まで保持し、ゆっくりスタートポジションまで戻す。

【トライセット法】

3つの種目を1セットずつ連続して行うのがトライセット法だ。3種目を休まず連続して1セットずつ行うので、ワークアウト全体の強度を極限まで高める効果がある。たとえ1セットあたりのレップ数が少なかったとしても、3種目をトータルすればレップ数は高回数になっているはずだ。3種目を1セットずつ連続して行うだけなら簡単だろうと思う人もいるかもしれない。しかし、伝説のボディビルダーであるセルジオ・オリバーがトライセット法を使った脚のワークアウトに挑戦したところ、最後まで完遂できなかったほどである。それくらい強度が高く、過酷であることを事前に覚悟しておこう。

①レッグプレス 20レップ
②レッグエクステンション 20レップ
③スクワット 20レップ

3種目はそれぞれ20レップ行う。重要なことはそれぞれの種目でセットごとに限界を迎えることだ。

オンとオフの脚のワークアウト

高重量を扱うのはオフシーズンで、高回数で行うのはコンテスト前。おそらく多くの人たちがそういう認識を持っているはずだ。しかし、ここまで説明したとおり、脚の筋発達のためには高重量による刺激だけでなく、高回数による刺激も必要だ。

では、オフシーズンとコンテスト前のワークアウトは分ける必要がないのだろうか。

コンテスト前にトレーニング内容を変えるのはあまり得策ではないというのが私の考えだ。そもそも、コンディションを極めるために必要なことは、どんなトレーニングを行うかよりも、食事をきっちり管理していくことなのだ。

コンディションを作るために、トレーニーは食事を制限していく。どんなトレーニングを行ったとしても、食事制限がうまくいっていれば体重は減るし、体脂肪はしっかり削られていく。

つまり、コンテスト前に行うべきトレーニングとは、筋量を増やすために行ってきたトレーニングのままでいいということだ。そういうトレーニングなら食事制限していても筋量が減ることは避けられるはずである。

コンテスト前に選手たちが掲げるゴールは、体脂肪をできるだけそぎ落とし、デフィニションを強調したコンディションを作り上げることだ。この期に及んで筋量を増やすことをゴールにする人はいないのだ。筋量を増やすなら、当然、摂取カロリーを増やさなくてはならず、コンテスト前に摂取カロリーを増やそうなどと思う人はいないのである。

できる限り絞れたコンディションをつくることが目標だから、食事制限をし、有酸素運動を頻繁に行って、消費カロリー量を増やしていく。同時に、これまでオフシーズン中につくり上げてきた筋肉はできるだけ失いたくはない。だからこそ、オフシーズンのワークアウトをそのまま行うのがいいのだ。

ポージング練習でアイソメトリック収縮

今回紹介した脚のワークアウトにはドロップセット法を取り入れている。ドロップセット法では限界が来るたびに重量を減らしながらレップを再開させ、最後は対象筋をギュッと収縮させた状態を保持して、エネルギーを絞り尽くしてセットを完了させる。このような筋肉を収縮させた状態を保つやり方はアイソメトリック収縮(静的収縮)と呼ばれていて、筋肉のデフィニションを極めるのに非常に効果があることで知られている。

アイソメトリック収縮は、1970年代のボディビルダーたちがよく取り入れていた。彼らはセットの最後に、頻繁にアイソメトリック収縮を行っていた。

当時行われていたやり方は、ボディビルのポーズをとり、その状態をしばらく保持するというものだった。ポージングの練習にもなるし、ステージで全身を緊張させた状態を保つ練習にもなった。また、特に強調したい部位をより良く見せるために、意識と対象筋を連動させる訓練にもなった。

ボディビルを知らない人は、どうして彼らが鏡の前でポーズを取り、その状態のまま動かないでいるのか不思議に思っているかもしれない。しかし、これはなかなかきつい練習で、実際に試したことがなければ分からないかもしれない。

バリバリのコンディションでステージに上がり、多くのボディビルファンを魅了したフランク・ゼーンは、ワークアウト後に必ずポーズを取り、それを60秒間保持する練習を繰り返したという。しかも、ワークアウトはオフ日にも欠かさず行っていたそうで、彼にとってはアイソメトリック収縮は日々の日課になっていたのであろう。

ポーズを取ってその状態を保つのも、ドロップセットの最後のアイソメトリック収縮も、筋肉にもたらされる刺激は同じである。最初は刺激が強すぎて、途中で筋肉が震えてくるかもしれない。それでも、慣れてくると少しずつ時間を延長させることができるようになり、ステージに立ったときにも大いに役立つのである。

まとめ

脚のワークアウトの王道とは、高重量の刺激と高回数の刺激の両方をミックスしたワークアウトだ。そのようなワークアウトはオフシーズンでもコンテスト前でも行うことができ、心身ともに追い込むことができる。

妥協しない。負けない。確実に追い込む。本気で下半身の筋肉をつくり上げたいなら、それなりの覚悟が必要である。下半身の筋肉を発達させることは、身体の土台をつくることであり、土台が頑丈であればあるほど上半身に積み上げられる筋肉も大きくすることができるということなのだ。

脚のワークアウトを避けてはいけない。どんなアスリートにとっても下半身は絶対に鍛え続けなければならない部位なのである。


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