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5分割で基本の筋トレ種目で構成|ボディビル日本チャンピオンのトレーニングメニュー大公開

身体作りと真剣に向き合うとなると、分割方法、種目の選択、1日の中でのトレーニングのタイミング、それに向けての栄養摂取などなど、考慮すべきファクターが多々出てくる。競技で頂点に立った選手たちは、自分の生活スタイルの中に、それらをどのように落とし込んでいるのだろうか。なぜその分割なのか? なぜその種目を取り入れているのか? どういったタイミングで、どういった食事をとっているのか。ここではボディビル日本王者・相澤隼人選手のオフシーズンの1週間のトレーニング、食事内容を公開。相澤選手のトレーニングはベーシックな5分割で、各プログラムもベーシックな種目で構成されており、そのなかから大胸筋のトレーニングを紹介する。

※IRONMAN2023年2月号のインタビューより掲載。

<本記事の内容>
相澤隼人選手の胸のトレーニングメニュー
相澤隼人選手の背中のトレーニングメニュー
相澤隼人選手の肩のトレーニングメニュー
相澤隼人選手の腕のトレーニングメニュー
相澤隼人選手の脚のトレーニングメニュー
相澤隼人選手が休養と栄養で気を付けていること

相澤隼人選手のトレーニングメニュー

胸のトレーニングメニュー

――まずは現在の分割からお願いします。
相澤「胸」「背中」「肩」「腕」「脚」の5分割で行っています。曜日では固定していません。この5分割で回していき、疲労を感じたとき、また仕事でトレーニングできない日などをオフにしています。週に1回は必ずオフを取るようにはしています。

――胸のトレーニングはベンチプレス、インクラインバーベルベンチプレスが6回から8回という組み方をされています。重量を扱って胸の筋量のベースを築くのが狙いでしょうか。
相澤 そうです。ここでは筋力を伸ばすのが目的になります。以前は3レップで組んでいたことがあったのですが、ボディメイクを行う上で、メリット・デメリットを考えた際、3レップだとあまりメリットがないのではないかと。なので今は、6回から8回という組み方をしています。

――第2種目のインクラインバーベルベンチプレスは以前から重視していた種目でした。
相澤 はい、今もそれは変わりません。ストレッチが何よりも強い種目なので、この種目をメニューからと外すというのは、今は考えられないです。

――次のインクラインダンベルプレスでは収縮を狙う?
相澤 いえ、ダンベルプレスでは収縮時に負荷はのってきません。挙げるにつれて腕の間隔が狭くなっていくと確かに大胸筋は収縮するのですが、そこでは重さがかかるベクトルと力を入れる方向が一致していません。ここでは収縮を狙うのではなく「大胸筋の動きだけで動かす」というイメージで実施しています。 2019年の日本クラス別で合戸(孝二)さんと並んだときに(身体の厚みの違いに)衝撃を受けて、そこからバーベル種目で重量を持つことにこだわるようになったんです。そのこだわりが少し解けてきて、今は筋肉の動きを意識しながらディテールを上げるための種目も行うようになりました。

――ダンベルフライは?
相澤 以前はインクラインベンチを1段階上げてやっていたのですが今はフラットで、かつ股関節屈曲位でやっています。昨年9月にヘルニアを患って腰に対する不安感が生じて、そこで種目を少し入れ替えたんです。その際に行ったダンベルフライの感触がよく、取り入れました。ダンベルフライはストレッチポジションでの負荷が強くなるのですが、フラットベンチで行う場合、足を床につけていると肋骨の外旋が強くなるんです。

――肋骨が開いて大胸筋のストレッチが弱くなる?
相澤 だから、股関節を屈曲して腹圧をかけてアンカーを作るんです。アンカーを作って、自然に胸椎が伸展、肩甲骨が内転した状態で行うと、大胸筋はしっかりとストレッチされます。 ただ、胸椎の柔軟性が乏しい人がこれをやると、おそらく肩関節が動作の支点になります。そういった人が見様見真似で股関節屈曲位でダンベルフライをやると肩を痛めてしまう可能性もあります。

――そして次にディップスです。これは大胸筋の下部狙い?
相澤 そうです。また、ディップスの動作は、ディップスでしかできないんです。ベンチプレスやダンベルフライなどは肩甲帯をベンチにつけた状態で行うので、身体を安定させて動作を行えます。一方、ディップスでは上体がフリーな状態にあるので、例えば前鋸筋など、肩甲骨を安定させるための筋肉も動員されます。そういった筋肉の活性化も狙える種目なので、今はディップスをやらない理由が見当たらないという感じです。

――締めはプルオーバーですね。これはどういった意味合いの種目なのでしょうか。
相澤 まずは小胸筋を狙える数少ない種目だということ。そして、大きいのは大胸筋を縦方向にストレッチできる点です。大胸筋を縦方向にストレッチすると、その大胸筋の内側にある小胸筋もストレッチされます。ここで肋骨を閉めた状態で肩甲帯を上げると、大胸筋の下部も伸びます。大胸筋の動きと小胸筋の動きをミックスしたようなイメージの動作ですね。

背中のトレーニングメニュー

――背中のトレーニングも、4セットという組み方が多いですね。
相澤 ベントロウ、プーリーロウ、スパイダーロウは、近く3セットにすると思います。

――それは、その種目の感覚が良くなってきたから3セットで十分だろうという判断から?
相澤 あとは、4セット目に力が入らなくなったり、体幹が安定しなくなったり。要するに、自分のポテンシャルの中でどれだけ最大限の力発揮ができるかということです。まだ(フォームが)定着していないときは(負荷が)身体に分散してしまいますが、しっかりと動きができるようになると、3セットでしかできなくなるんです。

――ベントロウは以前から重視していた種目です。
相澤 そうなのですが、今は引き方を変えています。広背筋の外縁部を動かしたいのですが、そこで引くためには純粋な肩関節の伸展動作が必要なんです。簡単に言えば、 胸椎を上げながら引いたり、肩甲骨を内転させて引いたりするのではなく、肩関節を引く「漕ぐ」動作です。そうした動きを行う種目が前半のベントロウとプーリーロウの2種目です。極端に言うとサミア・バヌーのベントロウのような感じです。

――背中を丸めたようなフォームで行うベントロウですね。
相澤 背中を丸めるというところまではいきませんが、「上体を起こさない」というイメージです。体幹をまっすぐに保ったまま肩関節の伸展動作で広背筋の縁の部分を狙っていく種目です。

――これを前に持ってきているということは、 背中では外側を優先していきたいということですか。
相澤 あとは僧帽筋の中部と下部です。胸の種目の「押す」という動作には、パターンは一つしかありません。肩が前に出るような動作は、特別なテクニックがある場合は別ですが、基本的にはやらないものです。同様に、「引く」 という動作では胸郭が上がりますが、これまでの私は基本的にはその動作でしか引いたことがありませんでした。そもそも「引く」とは、そういう動作だと思っていました。 ですが、今は私の中で腑に落ちている「引く」動作のパターンが3つあるんです。「肩関節の伸展動作で引く」「肩甲骨の内転動作で引く」「脊柱の動きで引く」の3つです。この3パターンの動作で分けて、 それぞれ2種目ずつ行い、最後にデッドリフトで背中全体に入れる、という構成です。

――そうやって引き方を変えながらパーフェクトな背中を作っていくというイメージなのでしょうか。
相澤 そうです。私はサミア・バヌーのような背中に魅力を感じています。そうなると、広背筋下部などはいいのですが、外側の縁の部分、また僧帽筋の盛り上がり、粘土を肩甲骨周りにつけたような背中ですね。そういった分厚く、立体的な背中に少しでも近づきたいと思っています。そうなると、やはり多角的に攻めていく必要が出てきます。

――ハンマーのワンハンドのフロントプルはレップ数が少なめに設定されています。
相澤 この種目は重たい重量でやっても入りやすいんです。ただ、他の種目を6回から10回に設定すると、まだ動きに慣れていないということもあり、どこか他の部位で代償することになります。特にベントオーバーロウとプーリーロウは、胸が伸展する動作ではないので、腰椎が動きを代償して腰が丸まりやすくなってしまうんです。そのまま重さをかけると腰にものすごく大きな負担がかかります。だから、回数は多めに設定しています。

――デッドリフトを最後に持ってきているのも、腰への負担を考えてでしょうか?
相澤 それもあります。また、脊柱が固まると肩甲骨、肩の動きが悪くなってしまいます。デッドリフトを前半に持ってくると、そこで脊柱が固まってしまう感覚があって、それ以降の種目で引き切れなくなってしまうんです。

肩のトレーニングメニュー

――肩のトレーニングは三角筋のフロント、サイド、リア、そして僧帽筋上部という流れです。その中でも重さを扱える種目を最初に持ってきている?
相澤 そうです。序盤に持ってきているバーベルフロントプレス、ダンベルショルダープレスは感覚も良くて、また重さも扱えます。この2つはフレッシュな状態で行いたい種目です。

――サイドレイズは他の種目よりもセット数が多いです。
相澤 レイズ系は基本的に単関節運動になります。肩関節を支点にしたレイズ系の種目で10回以下のレップ数で重さを持つというのは難しいです。ということは、セット数などでボリュームを稼ぐ必要が出てくるんです。

――このあともレイズ系種目が続きます。
相澤 インクラインサイドレイズは、(サイドレイズでは負荷の弱い)ストレッチポジション(肩関節内転位)で負荷を受けられます。また、サイドレイズの軌道の続きの動きができると言いますか、スタンディングのサイドレイズで補えないレンジをインクラインのサイドレイズで補うという感覚です。次のアップライトロウイングはケーブルで行いますが、バーベルでは下方向に重さがかかりますが、ケーブルで行う場合は斜め下から斜め後ろに向かって引く形になります。三角筋の走行から考えると、三角筋側部の後ろ側の部分を使いやすくなるんです。

――三角筋の動きで鍛え漏れたレンジがないように工夫されている印象を受けました。
相澤 はい、そのようなイメージで組んでいます。

――2種類のマシンリアレイズはかなり以前から取り入れている種目です。
相澤 リアの種目ではマシンのリアレイズが私の中では筆頭に挙げられます。まず、軌道が円軌道で、負荷が対象筋にずっとのり続けます。これはフリーウエイトではできないことです。 ベントの姿勢で行う種目は、終動で強い負荷がのりますが、肩甲帯が安定しなかったり、姿勢の保持が難しかったりして、リアに対して重さをかけられないということが起こります。ですが、スタンディングの状態で体幹を固め、肩の支点を作ってから肩関節の水平伸展動作を行うと、三角筋の後部が使いやすくなります。これがこの種目の大きなメリットです。

――ケーブルのリアレイズを入れるのも鍛えられたレンジをなくすためでしょうか。
相澤 いえ、マシンのリアレイズでは鍛え漏れたレンジが発生するということは起こりません。ですが、マシンのリアレイズではどんなにストレッチをかけようとしても、肩関節の水平内転に制限が出ます。ケーブルの場合は、「内転の、さらに内転」と言いますか、90度よりも内転した状態から動作をスタートさせることができます。肩の支点をしっかり整えてさえいれば、最もストレッチをかけられる種目です。

――ダンベルシュラッグは多めのレップ数で設定されています。
相澤 これも肩のポジションが崩れやすい種目です。収縮ポジションでは、しっかりと止めるようにします。シュラッグはレンジ自体は短いので、重量を扱おうと思ったら扱えるんです。ただ、重たくなると肩甲骨の挙上が難しくなります。今の私の力量ではこのくらいの回数を重ねないと他の部位が代償してしまいます。

腕のトレーニングメニュー

――腕の種目は、少し前まではクローズベンチプレスが第1種目でした。現在はライイングエクステンションを最初に持ってきているのですね。
相澤 上腕三頭筋の可動域は「上の可動域」「前の可動域」「下の可動域」、そしてプッシュ動作になります。以前までは重量を持つという意味でプッシュ動作のクローズグリップベンチプレスを最初に持ってきていたのですが、三頭筋の純粋な動きというものを考えると、おそらくこの順番のほうがいいです。プッシュ動作になると、どうしても胸や肩が代償してしまいます。

――だから純粋に三頭筋を動かせるライイングエクステンションを最初に持ってきた?
相澤 また、胸の日にプッシュ系の種目が多いというのもあります。プッシュ系の動作を行っているとどうしても三頭筋外側頭が張ってきます。「上腕三頭筋を鍛える」という意味合いで優先順位を考えた場合、肩関節の動きを伴いながら肘を動かせる種目が必要なのではないかと思い、今はライイングエクステンションを最初に持ってきています。これは「前の可動域」の種目です。

――次がEZバーのオーバーヘッドです。
相澤 これは「上の可動域」の種目で、上腕三頭筋長頭の最大ストレッチを狙っています。肩関節がほぼ固定されるので上腕三頭筋長頭にももちろん入るのですが、私にとっては、長頭の中でも肘寄りの部分の刺激が強い種目です。

――そのあとにクローズグリップベンチプレスが入るのですね。
相澤 この位置に持ってくることで重量があまり持てなくなるので、代償のしようもなくなるんです。三頭筋の純粋な動きで動作ができるという感覚があります。

――上腕二頭筋は、今は2種目だけなのですね。以前は3種目行っていました。
相澤 上腕二頭筋は正直なところ、バーベルカールだけでもいいのかなと思っています。私は以前から上腕二頭筋の動きがよく、過剰に反応してしまうんです。だから、あまりやり過ぎる必要がないというのと、これは今もそうなのですが、あまりやりすぎると二頭筋が短縮してくるんです。すると短縮した二頭筋に引っ張られて、肩甲骨のポジションが悪くなってしまいます。そうなると三頭筋や肩の種目が入りづらくなるので、二頭筋は必要以上に攻め込む必要はないと感じています。 また、二頭筋と三頭筋のバランスを考えた場合、私の場合は三頭筋を優先して二頭筋は最小限に留めたほうが良いと思っています。

脚のトレーニングメニュー

――脚の種目はどういった考えをもと、今のような流れになっているのでしょうか。
相澤 まずテーマとしてあるのが、大腿四頭筋外側頭、外側広筋の起始部の膨らみです。最初にスクワットを持ってきても大丈夫なのですが、まずは大腿直筋を狙ったレッグエクステンションを行います。ここでのレッグエクステンションはスクワットのボトムの出力と似た動作で、膝が曲がった状態から切り上げるようなイメージで行います。スクワットなどで深くしゃがんだ状態から切り返していくような感覚です。後半のレッグエクステンションは膝周りで絞り出していくような動作で行います。

――そしてスクワットですね。
相澤 レッグエクステンションの次に、筋力を伸ばすという部分でハイバーのスクワットを行います。その次にフロントスクワットで、より膝関節が優位の種目を行います。フロントスクワットは股関節や足首の柔軟性が乏しいと実施するのが難しい種目なので、それらの柔軟性を担保するためにも行っています。また、これは体幹が強くないとできない種目です。腹筋周りが弱い私は、フロントスクワットのような体幹を固める種目を行わないとそうした弱点を改善できないと思い、取り入れています。

――ブルガリアンスクワット、ハックスクワット、レッグエクステンションという流れは?
相澤 もともと私は股関節での支持、つまりお尻やハムストリングで支える動作は得意なんです。序盤に行うハイバーのスクワット、フロントスクワットは膝関節優位の動きになります。そのあとにブルガリアンスクワットを入れて、膝関節優位だったのをここで股関節優位に戻します。 次のハックスクワットでまた膝関節優位になるのですが、これは軌道が決まっている中での動作になります。体幹の安定という部分でも、スクワット、フロントスクワット、ブルガリアンスクワットの3種目を前半に行う必要性を感じています。ハックスクワットはスピードをよりコントロールでき、また脊柱にも大きな負担もかかりません。大腿四頭筋を「ちぎるような種目」というイメージです。そして、そこから対乳酸系の種目であるレッグエクステンションを行って最後の一絞りをかけるという流れです。

――インナーサイとアフターサイは、以前はもっと序盤に持ってきていました。
相澤 最初に行っていました。レッグカールのあとに持ってきたのは、股関節の動きを出していくのが狙いです。レッグカールでは膝を曲げる、インナーサイとアウターサイは股関節の内転・外転、最後のバックエクステンションは膝を曲げない股関節の伸展動作になります。後半の3種目は異なる動きの股関節の種目になります。

――そして、以前は脚の日にデッドリフトが入っていたのですね。
相澤 そうです。以前はメインにスクワットとフロントスクワット、そこにデッドリフトも入れていました。すると脊柱への負担が大きくなるので、デッドリフトを背中の日に持っていきました。かつ、床から引くことで(背中だけでなく)ハムストリングや殿部に対しても重さがのります。脚の後ろ側の種目を少しだけ背中の日に持っていったことにもなります。

――そうなると脚の日と背中の日はできるだけ離したくなります。そうした流れを考えると、自然にこのルーティンになった?
相澤 脊柱で考えてもそうですし、例えば胸で言うと、そこでは三角筋のフロントや上腕三頭筋も使われます。だから、胸の日と腕の日とは離すことになります。背中の日には上腕二頭筋も使うので、背中と腕も連続では行いません。そうしたことを考慮すると、このような流れになります。

食事や休養

――食事では、タンパク質は1食につき複数の食材から摂るようにしているのですね。
相澤 はい、タンパク源はいろんなものから摂るようにしています。

――卵を毎食、食べています。
相澤 私は脂質をこれまでほとんど摂っていなかったのですが、先シーズンの減量中に摂るようにしたら調子が良かったんです。脂質も身体にとっては必要な、重要な栄養素です。今回のオフの間には、最終的には体重1kg につき1gくらいの量を摂りたいと思っています。いきなり増やすと体調を崩してしまうので、今は体調を見ながら増やしている段階です。

――総摂取カロリーは?
相澤 今は4000キロカロリーですが、今年の目標は4500キロカロリー摂取して、80kg前後の体重をキープできる代謝を作ることを目標にしています。

――睡眠時間は?
相澤 9時間を確保しているのですが、その中で実際に眠っている時間は8時間半前後だと思います。このくらいの時間は確保しないといけないというのは思っています。ここではただ「寝る」というだけではなく、いかに質の高い睡眠を取るかということも大事です。

――そのために気を付けていることはありますか。
相澤 睡眠の前の導入部分も大事だと思い、ブルーライトをカットしたり、部屋を間接照明にしたり、入浴したりして、副交感神経が優位になるようにしています。筋肉はジムでつくわけではありません。リカバリーの時間はとても重要です。睡眠時間をしっかりと確保できるような生活スケジュールを心掛けています。

取材:藤本かずまさ

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