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筋トレ歴は41年! 50歳の歯科医師ボディビルダーが16年間ステージに立つ理由

柔道で鍛えた肉体を武器に、ボディビルダーとしてステージに立ち続ける歯科医がいる。名古屋市港区の『おはよう歯科』院長・冨田大一(とみた・だいいち/50)さんだ。『筋肉社長』シリーズでは、多様な業界から日本のフィットネスを支える人物を紹介しているが、彼ほど異色の経歴を持つ人物は稀有である。

【写真】冨田大一さんの筋肉人生メモリー集

「当院ではスポーツ業界への支援のため、トレーニングをされる方向けに専用のマウスピースを応援価格で提供しています。ボディビル、柔道、キックボクシング、ラグビー、アメフトなど多様な競技の方が来られます。ボディメイク競技の方にはホワイトニングのサポートも行っています」

『おはよう歯科』。一風変わった名前は、朝6時からの早朝診療が由来だ。手厚いスポーツ・フィットネス選手へのサポートは、冨田さんがトレーニングと共に人生を歩んできた歴史に関係する。特に、柔道とボディビルには並々ならぬ熱意がある。

「筋トレ歴は41年になります。家が柔道場で、柔道を始めた9歳から補強として腕立て伏せや腹筋をしていました。中学生に上がってからは、道場併設の接骨院にあるリハビリ用のレッグエクステンションに自分で重りを増やして使ってみたり、祖父が鉄工所をやっていて手製のダンベルを作ってくれたので、ひたすらそれを振ったりしていました」

ユニークなトレーニング歴を語る冨田さんは、その後、スポーツ強豪校として名高い東海高校に進学。全国高校選手権大会で個人ベスト16、インターハイ東海大会で95kg超級優勝の輝かしい戦績を残す。高校時代、同級生たちと昼放課に遊びで行ったベンチプレスで140kgを挙げた逸話からも、剛体ぶりが伺える。現在も年4回のOB合同練習会では現役選手と汗を流している。

「ボディビルに興味を持ったきっかけは、ちょっと変わっています。柔道部の先輩でもあり、のちにボディビル競技の先輩にもなったみはまデンタルクリニック(福井県)の松本(英一)院長に『月刊ボディビルディング』を見せてもらったときです。そこにかつての旧友が大々的に取り上げられていて、非常にびっくりしました」

掲載されていたのは、昨年、日本選手権を制して引退した伝説のボディビルダー「ジュラシック木澤」こと木澤大祐選手だ。冨田さんと木澤選手とは、中学時代の友人だった。冨田さんが誌面での思いがけぬ再会に喜び、木澤選手の通うジムに会いに行ったことが親交再開のきっかけとなった。

「それ以来、木澤君のパーソナルトレーニングを受けたり、僕の結婚式にゲストポーズをしに来てくれたりとずっと仲良くしてもらって。今は彼のジム(ジュラシックアカデミー/名古屋市港区)に週に3回通っています。先輩や木澤君の影響もあり、僕も2009年からボディビル大会に出場するようになりました。デビュー戦が最高順位(愛知県大会新人9位)というささやかな戦績ながら頑張っています」

ボディビル歴は16年。しかし、こちらは柔道の華やかな戦績とは異なり、未だに最下位を争うこともある。それでも冨田さんが大会に出続けるのには理由がある。

「ひとつは僕はすごく太りやすく、すぐ100kgを超す巨漢になってしまうのでその防止で。もうひとつは、どんなコンディションでも毎年ステージに立つという目標を立てることで、自分の弱さや甘さと向き合うためです。あえて試練をつくることで、日々のトレーニングにおいても、人生においても忍耐力と継続力が培われていると感じています」

こうした自身の努力と熱意が、フィットネス界への支援につながっているという。競技者として出場するだけでなく、『ABBF(愛知県ボディビル・フィットネス連盟)』やボディビル大会『ジュラシックカップ』へのスポンサードも行う。また、歯科医として筋肉に由来する研究論文も発表した。

「高齢者の入院中の筋力低下、主に握力や下腿の筋肉量の減少が嚥下機能と相関関係にあるということを、多種医療連携の共同研究により発見しました。また、口腔トレーニングにより機能障がいが改善できるということもわかりました。僕の医院は半数の方が地元のご高齢の方ということもあり、この知見を診療に生かしています」

冨田さんの今後の目標を聞いた。

冨田大一さん

「外来・訪問・在宅診療と力を尽くして、多くの方に信頼して選んでいただける医院であり続けたいです。通院ができなくなった方にも最期まで寄り添う医療の提供を、これからも続けていきます。競技者としては、何歳になってもステージに立てる限り大会に出続けていきたいですね」

歯科医として、地域の方々が最期まで笑顔で食事を楽しめるよう支え続ける。そしてボディビルダーとして、何歳になってもステージに立ち筋肉と共に生きる喜びを伝えたい。冨田さんにとって、フィットネスとは人生そのものだ。

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取材・撮影:にしかわ花 写真提供:冨田大一

執筆者:にしかわ花
『IRONMAN』『FITNESS LOVE』『月刊ボディビルディング』寄稿。広告・コピーライティング・SNS運用。ジュラシックアカデミーでボディメイクに奮闘している。

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