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食の新トレンド!「プラントベース・ミート(代替肉)」って何?

プラントベース・ミートとは?

肉の食感や味わいを植物性タンパク質で再現した「プラントベース・ミート」が注目されています。
日本に先んじてプラントベース・ミートのムーブメントが起きた米国では、革新的な技術やアイディアの商品が続々と登場し、100%植物由来ながら「生肉」のような見た目、加熱すると赤身が茶色く変化し、肉汁や香りを楽しむことができる、そんな次元まで完成度を高めた代替肉が、本物の肉と同じ冷蔵コーナーに並んでいます。リアルな肉と代替肉が、消費者の選択肢として同じ売り場に並ぶという、まさに食のパラダイムシフトが起きているのです。古くから大豆製品を肉に見立てて調理する伝統を持つ日本でも、2019~2020年にかけて、植物由来の代替肉を使った商品が続々とローンチされ、惣菜やレトルト食品などバリエーションも増えています。

なぜプラント・ベースミートなのか?

今なぜプラントベース・ミートに注目が集まっているのでしょうか?そこには、私たちの食の未来と環境を世界規模で考える大きなストーリーがあります。

①食糧問題
現在の畜産体制では、これからの世界の人口増加に対応できないという危機感から、食肉に頼らない新しいタンパク質食品を開発し、安定した食糧の供給体制を作る。

②環境問題
畜産は膨大なエネルギーや水資源を使うため、植物性タンパク質に移行することで環境負荷を減らす。

③動物愛護・食の安全
食肉需要に応えるため、品種改良や抗生剤の使用で不自然に成長スピードを速め工業化した畜産に対する、安全性や倫理的な観点からの問題意識。

④食の多様性
宗教や思想・体質などで、食事制限がある人のニーズに応える。

⑤健康志向
肥満・生活習慣病などの改善や予防に有効な食品としての期待。

プラント・ベースミートの栄養的特徴

やはり興味の中心は栄養的な観点から見たプラントベース・ミートの特徴や使い方だと思います。ここでは、国内で手軽に入手できる大豆ベースの代替肉や加工食品を栄養的側面からひも解きます。水戻しして使うドライタイプの大豆ミートを見たことがある、使ってみたという人は多いと思います。大豆ミートの原料は、大豆油を搾った後の脱脂大豆です。それを細かい粉末にしたのち高温高圧をかけてポップコーンのように膨張させると、肉のような繊維状の組織が出来上がります。一般的な大豆ミート(水戻しして100gに相当する乾燥状態33g換算)のエネルギーは119kcal、タンパク質は15.3gで、鶏もも肉や牛に遜色ありません。脂質は低く1.0g。コレステロールは0です。また食肉では得られないメリットとして、大豆ミートは腸内環境を整え、健康に多面的に関わる食物繊維を5.9g含みます。(※食品ベータベースに基づく )

身体づくりのために毎日摂りたい|大豆タンパクの機能性

大豆は「畑の肉」と呼ばれ、その栄養価には定評があります。アミノ酸バランスの良いタンパク質を豊富に含む大豆は、重要なタンパク源として古くから日本人の健康を支えてきました。当然、大豆ミートもアミノ酸をバランスよく豊富に含みます。大豆や大豆加工品は、タンパク質の他にもカリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラルやビタミンB2、B6、葉酸、パントテン酸などビタミン類を含みます。またポリフェノールの一種イソフラボンやサポニン、レシチン、植物ステロールなどの成分を持ち、その機能性が期待されています。大豆イソフラボンは、女性ホルモンに関わる疾患の改善効果があることでよく知られていますが、近年の研究では、大豆イソフラボンが筋萎縮を抑制することも確認され、サルコペニア(加齢に伴う筋萎縮)を食品で軽減する可能性が見えてきました。(※1)

また、大豆には脂質代謝の改善効果も認められています。世界60地域で実施した疫学調査の結果、大豆の摂取量が多い集団では、肥満度・血圧・血中総コレステロール濃度が低いことが明らかになっており、人種や地域にかかわらず、大豆摂取が脂質代謝改善に関係することが分かりました。(※2)

大豆タンパク質の脂質代謝改善作用に関する研究報告には、血中コレステロール濃度の低下、血中中性脂肪濃度の低下、体脂肪蓄積抑制、糖尿病抑制などがあります。(※3)

近年の研究で、大豆タンパク質の約20%を占めるβ-コングリシニンに、肥満の予防や代謝改善効果があることが解明され、大豆タンパク質の定期的な摂取が、抗肥満や心臓疾患の予防に有効であることが明らかになりました。(※4)

(※1)2018年、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院佐久間邦弘教授らの研究グループによる
(※2)京都大学名誉教授家森幸雄氏らがWHOの協力のもとにおこなった調査
(※3)農研機構「大豆とその調理加工が脂質代謝改善作用に及ぼす影響」(高橋陽子)参照
(※4)2016年、東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻佐藤隆一郎教授の研究グループによる

プラントベース・ミートを日常に

厚生労働省は、1日あたりの豆類の摂取目標を100g以上と設定しましたが(「健康日本21」)、実際の摂取状況は20代52g、30代57g、40代58g(平成30年「国民健康・栄養調査」)と、目標の100gには全く届いておらず、食生活の欧米化に伴う動物性タンパク質偏重は否めません。日本人の健康を支えてきた植物性タンパク質を、現代の食事事情にフィットさせるためにも、フードテックによるプラントベース・ミートのさらなる進化が期待されます。また同時に、日本食の伝統で培われた、植物性タンパク質を滋味豊かに味わう方法を受け継ぎ、現代に生かして行きたいものです。

文_森弘子(もり・ひろこ)
ソライナ株式会社にてプロテインや健康食品の企画・開発を行う。ボディフィットネスでは東京大会4連覇、2016年には8年ぶりに大会復帰し関東オープン・フィットネスビキニ163㎝超級で優勝を飾る。


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