脅威のバルクでボディビル界を大いに盛り上げた扇谷開登。その扇谷の最大のストロングポイントは背中だ。扇谷にとって背中は特に優れた部位で、広く厚みのある背中には深いセパレーションが走り、バックポーズで強烈なインパクトを放ち、他を圧倒する存在感を発揮している。
驚愕の発達を遂げた背中がどのように作られてきたのか、今回は扇谷開登の背中のトレーニング方法を紹介しよう!
文と写真/吉田真人 大会写真/中島康介 Web構成/中村聡美

2024年日本男子ボディビル選手権4位
扇谷開登
扇谷開登が考えるボディビルにおける背中の存在
身体の前面側に注目が集まりますが、身体の厚みとアウトラインを作り出すのが背中であり、勝負を分ける重要な部位だと考えています。
扇谷開登の目指す背中
自分の背中が唯一無二と言われる存在になっていきたいと考えています。
【背中のトレーニングメニュー】
メイン種目
①デッドリフト
・ウォームアップ60㎏×2〜3回、100㎏×2〜3回、140㎏×2〜3回、170㎏×2〜3回、200㎏×2〜3回、220㎏×2〜3回、240㎏×2〜3回
・メインセット260㎏×10回×5セット→240㎏×5回→220㎏×5回→200㎏×5回→170㎏×5〜10回
※最終セットは重量を何度も下げながら追い込みきっていく
②チンニング
・ワイドグリップ自重×10回×5セット
※セットをさらに多くやることもある
・ナロウグリップ自重×10回×5セット
追加種目
※通常は行わないが、状況次第で行うこともある種目
③プーリーロウ(Vバー)
④ワンハンドダンベルロウ
基本的にメイン種目はデッドリフトとチンニングの2種目だけですが、補助種目としてプーリーロウ(Vバー)、ワンハンドダンベルロウを行うこともあります。
メイン種目のデッドリフトとチンニングで疲労困憊して補助種目ができなくなることがありますし、メイン種目をやった後に背中の感覚が鈍くなり、効き感がなくなったときも補助種目を行いません。
トレーニング解説
①デッドリフト
狙い
背中全体の厚み
動作
スタンスは腰幅くらいで、バーを引き上げるときに大腿に指が引っ掛からないように大、腿に触れないギリギリの幅でパワーグリップを使ってサムレスグリップでバーを握ります。サムアラウンドにしたら大腿に擦れて親指の皮が無くなってしまったので、サムレスにしています。
床から持ち上げるときは、足裏全体で床を踏みます。脚から持ち上げるという意識ではなく、連動を意識した中で脚が勝手に入ってくる感じです。臀部も連動して使っていますが、引ききるときに臀部の上部がギュっと収縮する感じです。
立ち上がるときは、胸を張り過ぎず、肩をやや後方に引く程度です。背中を面にして、背中全体で重量を受けているイメージです。
通常はウォームアップ後、260㎏で10回を5セット行っていますが、脚トレでの疲労が残っていたり、仕事で睡眠をとれなかったりしたとき、どうしても最後の5セット目で10回をスムーズに上げられないとなった場合、260㎏で5回を2セットに分割して行うこともあります。
最終セットでは重量を徐々に減らしながら、限界ギリギリまで追い込み切ります。(260㎏×10回→240㎏×5回→220㎏×5回→200㎏×5回→170㎏×5〜10回)
ポイント
デッドリフトは高重量を扱うために危険が伴います。腰への怪我を避けるため「無理せず頑張る」と自分の中で決めています。背中が丸まった状態で、身体を揺すってまで引くことはしません。
①デッドリフト
通常は 260㎏を10回5セット行います。最終セットのみ、260㎏10回を行った後、240㎏5回⇨ 220㎏5回⇨ 200㎏5回⇨ 170㎏5~ 10 回と徐々に重量を軽くしていって追い込みます。デッドリフトは怪我のリスクが高いので、「無理せず頑張る」と自分の中で決めています
②―①チンニング(ワイドグリップ)
狙い
大円筋と広背筋、背中の広がり、アウトライン
動作
手幅は肩幅の1・2倍くらいで、大円筋に引っ掛けるように意識して構えます。身体を引き上げるときは、身体を真っすぐのままではなく、振り子のような動きで胸を引き上げ、肩甲骨を引き寄せて大円筋と広背筋を刺激するイメージです。
ポイント
背中が寄らなくなるところまで身体を引き上げていきます。バーを胸に付けるというより、背中の筋肉を限界まで収縮させるように意識します。背中への負荷が抜けないように、肘を伸ばしきらずに身体を下ろします。
②―②チンニング(ナロウグリップ)
狙い
大円筋と広背筋、背中の厚みとボコボコ感
動作
手幅は肩幅よりも狭く、頭の幅くらい。胸を引き上げるように身体を持ち上げていき、広背筋下部を強く収縮させます。肘を伸ばしきらずにしっかりと下ろし、大円筋と広背筋をストレッチします。
チンニングでワイドグリップとナロウグリップをやる理由
ワイドグリップで行っているとき、張っているからなのか、疲労なのか、よく分かりませんが、4〜5セットくらいで感覚がなくなってくることがあります。感覚が続くときは5セット以上行いますが、途中で感覚がなくなってきたとき、ナロウグリップに変えて行ってみたら凄いヒット感があったので、ナロウを取り入れるようになりました。
ワイドグリップで行うとアウトラインに効き、ナロウグリップで行うと背中の厚みとボコボコ感が出る感じがします。
②チンニング(ワイドグリップ&ナロウグリップ)
ワイドグリップとナロウグリップの2通りで行います。ワイドグリップは背中の広がり、ナロウグリップは背中の厚みを目的としています。どちらの場合も、下では肘を伸ばしきりません。基本、背中のメイン種目は先のデッドリフトとチンニング2種類です
③プーリーロウ(Vバー)
狙い
背中のストレッチがメイン
動作
すっと引いてから背中を丸めていくようにして、背中の外側に効かせながらゆっくり戻していく。
ポイント
引くときは顎を引き、戻すときは顎を上げて背中をストレッチさせます。
③プーリーロウ(Vバー)
背中のストレッチを目的としています。バーをすっと引いた後、背中を丸めるようにして戻していき、背中の外側に効かせるようにします
④ワンハンド・ダンベルロウ
狙い
背中の収縮がメイン
動作
ウエイトを持っている側を後方に引いて、脚を前後に構えます。ウエイトを持っている側の背中を、背骨に向かって引き寄せるようにしながらダンベルを持ち上げていきます。
※追加種目は1種目だけ行うこともあれば、両方行うこともあります。メイン種目で疲労困憊してしまったときや、背中への効き感がなくなってしまったときは、追加種目を行いません。
④ワンハンド・ダンベルロウ
収縮がメインの種目です。ダンベルを持っている側の背中を、背骨に向かって引き上げるように収縮させます。追加種目は、背中の疲労度によって行わないとき、1つだけやるときと分けています
扇谷開登にとって背中は他の部位よりも感覚が強く、筋力を発揮できる部位でもある。他の部位についてはトレーニングパートナーの美濃川大が扇谷のトレーニングを考えているが、背中については扇谷自身が考え、実践している。そのことについて美濃川は、「もし行き詰まったとしたら、こんなやり方もあるよ、とアドバイスもできるが、もの凄い背中をしており、トレーニングでも重さが抜けることなく、しっかりとできているので、細かいことを言わずにこのまま自分流にやった方が良いと考えています」と語っていた。
筋肉の感覚を大切に正確な動作で最大限の筋力を発揮する背中のトレーニングこそ、扇谷式トレーニングの真髄と言えるのかもしれない。
↓第5回の最終回は脚トレ!↓
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