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「自分時間を取り戻すための【筋トレ】時間」栃木県職員で2児の母・藤原仁香がJAPANCUP2025優勝にたどり着くまで

5年前、藤原仁香選手は「太りすぎて」ゴールドジムの扉を叩いた。身長162㎝、体重は65㎏。家族からは冗談まじりに〝トド扱い〞され、「そろそろ危ないんじゃない」と心配されるほどだった。そこから藤原選手は、仕事と家事を終えた夜に1時間だけ、自分のための時間を確保し続けた。子育てがいち段落し始めた今、筋トレは〝自由時間〞そのものだと言う。競技の舞台で結果もつかんだが、藤原選手が本当に手に入れたのは、「自分のなりたい身体に近づいていく方法」と、「諦めない自分」だった。

文・撮影:IRONMAN編集部 Web構成:中村聡美

〝トド扱い〞から始まった「太りすぎたから」

藤原仁香選手が筋トレを始めた理由は、とてもシンプルだった。体重は65㎏。「全く筋肉なしの65㎏」だったと言う。家族からは〝トド扱い〞され、みんなに「いい加減にしたら」「そろそろ危ないんじゃない」と言われた。
藤原選手の家族(旦那さん、息子さん、娘さん)はキックボクシングジムに通っていた。藤原選手自身も「痩せたいからキックボクシングをやりたい」と言ったが、「その身体じゃ無理」と返された。家族全員がキックボクシングへ行く中で、一人でゴールドジムへ。少し悔しくて、でもどこか救われるような分岐点だった。

入会後、最初に取り組んだのはランニングだった。月100㎞走ることもあった。それでも「痩せなかったんですよね」と笑う。
一方で、週3回の筋トレを続けると変化が出た。ゴールドジムの初心者トレーニング説明会で組んでもらったトレーニングメニューを黙々とこなし、加圧トレーニングも少し取り入れた。体重は65㎏から60㎏前後へ。数字以上に、見た目が変わった。
「筋トレの方が私は痩せたって感じですね」〝できるじゃん〞という小さな成功体験が、次の一歩を引き寄せる。

変化が出始めた頃、藤原選手はゴールドジムでパーソナルトレーニングを受けているお客さんに目を留めた。誰かの指導を受けている姿を見て、「追い込んでもらうの羨ましい」と思ったという。「私、だるだるなんですよ。本当に。自分で厳しく追い込めないんです」
自分に足りないものを自覚し、環境で補った。

夜の1時間が、人生を変える

藤原選手の筋トレは、長くはない。だいたい「1時間ちょっと」。ダラダラしてもその程度で、ササッとやってササッと帰る。

そして通う時間帯も独特だ。仕事が終わったら一度帰宅し、家事を終わらせてからジムへ行く。「仕事、家、ジム、寝るみたいな感じです」
家に帰ると行きたくなくなる人も多いが、藤原選手は違う。家事が終わった後に行く。なぜなら、ジムは「自由時間」だから。「家事の方が嫌いなんで先に終わらせて、ジムは自分へのご褒美です」

子育てを終えつつある年代の女性にとって、〝誰にも邪魔されない時間〞を確保することは、それ自体が価値になる。ジムに入会する5年前まで、その時間は何に消えていたのか。藤原選手はこう答えた。
「スマホをいじって……だらだらと過ごしていました」
お菓子を食べながらスマホを触わり、気づけば土日も同じ。そこを、ジムの1時間に置き換えた。たったそれだけで、生活の輪郭が戻り始める。

時間の使い方が上手に

筋トレを始めて感じた変化として、藤原選手が最初に挙げたのは「時間の使い方」だった。
「筋トレ時間をどうやってつくるかを考えると、家事もスピーディーにできる」
ジムに行く時間が増えた分、他に必要なことの時間が減るのではない。むしろ、同じ一日で〝できること〞が整っていく。
「ジムに行っても行かなくても、仕事や家事のクオリティは大して変わらないんですよね」

意外な告白もあった。ウーマンズウェルネスの選手でありながら、藤原選手は「スクワットができない」という。足首が硬く、しゃがみ込めず、ぐらついて腰を痛めやすい。

だからこそ、昨年12月からはコンディショニングに熱心に取り組む。2週間に1回のゴールドジムの鈴木俊洋トレーナーのパーソナルで、機能評価から入り、コンディショニングメニューを組んでもらう。
変化は少しずつだ。足首がわずかに動くようになり、スミススクワットでは体重を「乗せられる」感覚が戻ってきたと言う。

藤原選手の脚は強い。スキー競技に取り組んでいたため、もともと脚は太く、ハムストリングや殿部といった後面が強い。ただ大腿四頭筋が弱く、動きがアンバランスになりやすい。だからこそ、土台からつくり直しているという。「できないことがたくさんあるんで、それを解決しようと思うと時間かかるなって」

コンディショニングは入念に行う

昨年のゴールドジムジャパンカップが終わってから本格的にコンディショニングを導入。メニューは鈴木俊洋トレーナーに2週間に1度パーソナルトレーニングの際に作成してもらう。コンプレフロスやギムニクボールなどツールをうまく活用して自身の機能面の課題に向き合う

〝なりたい身体〞をイメージする

藤原選手のボディメイクの方法で、最も象徴的なのがゴールへのイメージだ。藤原選手は〝なりたい身体〞を画像として用意する。美容室のオーダーのようになりたい選手の身体から鈴木トレーナーにメニューを組んでもらう。過去にはミスオリンピアのビキニ選手などがそれにあたる。最近では、自分の身体をベースにAIで作った理想像がゴールの形だという。「AI画像と自分との差を認識しながら、足りない部分を補う方法を考えてもらいます

抽象的な「痩せたい」「引き締めたい」ではなく、具体的な形にして持ち込む。すると、課題が見える。例えば、AI画像のようにウエストを細く見せたいということになれば、現状の、身体がひねれずウエストが太く見え、全体が〝ドーン〞とした印象になるという現実に向き合う。それを解消するためにコンディショニングを組む。

もう一つ、大きな変化がある。以前の藤原選手は「ここまででOK」と早めに満足してしまうタイプだった。スキーも「1級を取れたらもういい」という感覚だったと語る。だが、昨年、ポージング指導をしてくれた宮田みゆき選手の言葉が刺さった。
「大会3日前だって何とかなる。3日で身体は大きく変わる」

その言葉に押され、オールジャパン選手権に向けて最後まで絞り切れた。結果以上に、「諦めない」ことの重要性を身体で理解した。「目標はすごく高く置いて、最後の最後まで頑張る。叶わなくても頑張るということをウェルネスという競技を通して学びました」

胸トレもしっかりと強度を求めて実施

取材日のトレーニングは胸。胸周りの厚みがほしいという理由から筋トレを始めた当初から実施している。ベンチプレスからスタートし、5種目を行う。1種目3セットと決め、インターバルは短い。1時間ほどで全種目を終える

自分のために生きる時間を、これからも

今後の目標はシンプルだ。「とりあえず自分のなりたい身体になって大会に出る」

結果は後からついてくる。まずは理想に近づくために、できないことを一つずつクリアしていく。仕事も家のことも続けながら、その上で自分をつくっていく。

子育てが少し落ち着いた女性が、自分の時間を取り戻す。その方法は、特別な才能ではなく、1時間の積み重ねと、目標を具体化する工夫、そして〝諦めない〞姿勢だった。夜のジムは、藤原選手にとって自由の象徴だ。
「ジムにいる時間が、私の自由時間なんです。この1時間が、人生をもう一度、自分の手に戻してくれます」

ふじわら・にか
1973年10月13日生まれ。身 長162cm。栃木県職員。家族は夫、息子(高1)、娘(中2)。5年前にジムへ入会し、本格的な筋トレは4年前から。競技歴3年。ゴールドジムジャパンカップ2025 ウーマンズウェルネス優勝。かつては体重65kgで「筋肉なしの65kg」だったと振り返る。

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