軽貨物配送業界で、ドライバーたちの間で“筋トレブーム”が広がっている会社がある。きっかけとなったのは、トレーニングを習慣にしている人材を積極的に採用する「筋トレ採用」というユニークな取り組みだ。筋トレ文化が広がる企業を取材するなかで今回話を聞いたのが、合同会社YUMJAMの井手庸介(いで・ようすけ)社長。制度の狙いや社内に起きた変化について語ってもらった。

合同会社YUM JAMのスタッフたち。スタイリッシュな制服に身を包む
井手社長は、軽貨物配送業界のイメージを変えたいという思いから、企業のブランディングを重視してきたという。
「軽貨物配送業は生活や経済を支える社会インフラであり、ドライバーの皆さんは重要な役割を担っています。しかし、Googleで『軽貨物』と検索すると、『やばい』『やってはいけない』といったネガティブな関連ワードが上位に出てくるように、業界にはマイナスなイメージが先行し、良い人材が集まりにくい状況があります。本来、胸を張って誇れる仕事であるにもかかわらず、このような状況があるため、『カッコいい』という価値を業界に生み出し、ドライバーが自分の仕事に誇りを持てる環境をつくりたいと考えました。また、お金や条件面だけでなく、掲げるビジョンに共感してくれる人材とともに働きたいという思いもありました」
同社が導入した「筋トレ採用」は、介護業界で“マッチョ採用”を行っている株式会社ヴィジョナリーの取り組みを参考にしたものだという。ジム代やプロテイン代の補助に加え、トレーニング頻度や大会戦績に応じたボーナスを設定し、社員のモチベーション向上を図っている。
「筋トレをしている人は、見た目だけでなく在り方もカッコいい人が多いと感じています。トレーニングを続けるには継続力や忍耐力が必要で、身体が変わることで自己肯定感や自信も高まります。そうした要素が、私たちの求める人物像と一致していました。また募集条件を『すでにボディビル・フィットネス競技に取り組んでいる方』ではなく、『筋トレが好き・これから始めたいと思っている方』も対象とすることで、裾野を広げている点も特徴です」
制度は2025年8月から開始され、すでに一定の成果が出ているという。
「2025年8月から開始して、20人強の応募があり、現在5名が稼働中です。弊社の求めていた人物像に近い方が来てくださり、採用率の向上につながりました」
さらに、新規採用だけでなく既存メンバーにも変化が生まれている。
「Slackでメンバーが自身のトレーニングの記録を日々共有しています。投稿するとボーナスにつながるというシステムにしているので、みなさん積極的に投稿・交流をしてくれています。そういった様子を見て、ほかのメンバーも『自分も筋トレを始めようか』と動き出しています。ちなみにジム代やサプリ代の補助も通う頻度や大会出場の有無、成績で変動します」
制度の内容も具体的だ。
「ジム代については、週2日以上で3千円。週4以上で5千円。ジム代1万円かつプロテイン1kgを受け取るためには大会出場と週4日以上のトレーニングが条件です。なお、大会優勝で5万円のボーナスもあります」
こうした制度の背景には、井手社長自身のトレーニング経験がある。
「2年前から筋トレを始め、週4〜5日、1時間のトレーニングを習慣にしています。最初はきつかったのですが、今では自分を奮い立たせる大切な時間です。筋トレは積み上げた成果が目に見えるので自己肯定感が高まります。また人間は本来、身体を動かす生き物だと思っていて、身体を動かすことで体調やメンタルも整う感覚があります。筋トレをしないでデスクワークが続くと気持ちやコンディションが落ちやすいと感じるので、日々の仕事のパフォーマンスを維持するうえでも大きな意味があると考えています」

スタッフとの合トレ。撮影しているのが井手社長
自身もボディコンテストに挑戦し、2025年には新しいボディコンテスト団体「FABO(FELLOWSHIP FOR ACCESSIBLE BODYBUILDING OPPORTUNITY)」のフィジークルーキー部門で2位の成績を収めた。
今後について井手社長は、企業ブランディングを通じて業界全体のイメージ向上を目指すと語る。
「まずは軽貨物配送業界で、“日本一カッコいい軽貨物会社”としての地位を確立することを目指し、業界内で積極的な発信や取り組みを行いながら事業規模を拡大していきます。そして軽貨物業界に『カッコいい』というブランディングの価値を生み出し、将来的には、採用が難しいとされるブルーカラー領域において、ブランディングによって人が集まる成功事例をつくりたいと考えています。そうしたモデルを示すことで、ブルーカラーの仕事がもっと誇りを持てるものになり、業界全体の発展につながればと思っています」

初出場にも関わらず『FABO』のフィジークルーキー部門で2位の活躍










