ジム フィットネス HYROX

昭島のコミュニティづくりに尽力する38歳 クロスフィット&HYROXジムを若者からシニア世代がつながる場所に

福祉の仕事に携わる中で感じていたのは、地域のコミュニティが少しずつ失われていることだった。近所に誰が住んでいるのか分からない。自治会の加入者も減り、人とのつながりが薄くなっていく。そんな社会課題を、自分の好きな“運動”で変えられないか――。

そう考えてクロスフィットジムを立ち上げたのが、東京都昭島市でジムを運営する日惠野貴之(ひえの・たかゆき/38)さんである。20代から60代まで約80人が通い、送別会には世代を超えて人が集まる。日惠野さんは「一人では続かなかった自分だからこそ、誰かと続けられる場所を作りたかった」と話す。

クロスフィット昭島のメンバーさんたちと。一番右が日惠野さん

「横に住む人の名前も分からない」地域の希薄化を変えたかった

日惠野さんはもともと、障害のある子どもたちが通う放課後等デイサービスを運営している。福祉の仕事を続ける中で、ずっと気になっていたことがあった。それが、地域のつながりの希薄化である。

「自分が小さい頃は、近所のおじちゃん、おばちゃんが普通に話しかけてくれていました。でも今は、隣に誰が住んでいるのかも分からない。顔は知っていても名前も知らないし、何をしている人かも分からない。そんな状況が当たり前になっていると感じていました」

自治会の会員は減り続け、地域のコミュニティも縮小している。日惠野さんは、それをひとつの社会課題だと感じていた。

一方で、自身も以前から筋トレが好きだった。2015年ごろ、友人の家でベンチプレスを始めたのがきっかけで、ジムに通い、ベストボディ・ジャパンにも出場した。

しかし、運動を続けることは簡単ではなかった。

「一人だと続かないんです。目標があるときは頑張れるけれど、終わると続かなくなる。減量も増量も厳しいし、なかなか一人では続けられませんでした」

YouTubeでトレーニング動画を見たり、筋トレ雑誌を読んだりするほど筋トレは好きだった。それでも、一人で黙々と続けることはできなかったという。

そんなときに出合ったのがクロスフィットだった。

「運動があるんですけど、その前にコミュニティがある。みんなでつながるから、結果的に運動も続く。その考え方にすごく共感しました」

24時間ジムではなく「続けられる場所」を作りたかった

日惠野さんがクロスフィットを始めたのは、ジムを開業した2022年。同時にクロスフィットの研修を受け、自ら学びながらジムを作っていった。

「何も分からないまま開けるわけにはいかないので、クロスフィット代官山で研修を受けさせてもらいました。そこから2022年に開業しました」

現在は開業4年目。会員数は約80人にまで増えた。年齢層は20代から60代までと幅広い。

日惠野さんは、もともと「ただの24時間ジム」を作るつもりはなかったという。

「健康になってほしいのに、幽霊会員ばかり増えるのは違うと思ったんです。自分自身、一人で通えなかった人間なので。だから、誰かとつながれる場所を作りたかった」

クロスフィットは一般的なジムよりも料金が高く、ハードルが高いと感じる人も少なくない。それでも日惠野さんは、「誰でもできるものだ」と話す。

「僕自身、何でもできるオーナーではないんです。だからこそ、運動経験がなくても、できないところから始めていいんだということを見てもらえていると思います。大事なのは、クロスフィットをかっこよくやることよりも、継続して運動習慣を作ることです」

もちろん、全員に合うわけではない。体験で終わってしまう人もいる。それでも、「誰かとなら続けられる」という人が確実にいると感じている。

送別会に60代も参加 「人生が変わった」と言われる場所に

日惠野さんのジムでは、会員同士の交流が自然に生まれている。

最近も、転勤でジムを離れる会員の送別会が開かれた。最初は日惠野さんたちが声をかけていたが、今では会員たちが自発的に企画するようになった。

しかも、仲の良い人だけではなく、ジムに通うすべての人に声をかけるという。

「転勤するのは30代の方だったんですけど、送別会には60代の会員さんも来てくれましたし、50代の方も何人も来てくれました。本当に横のつながりが広がっているなと思います」

引っ越してきたばかりで周囲に知り合いがいなかった人からは、「友達ができた」「通って良かった」と言われることも多い。中には、「人生が変わった」と話す人もいた。

体力面での変化を実感する人もいる。ゴルフをしている会員からは、「飛距離が伸びた」と言われたという。

さらに最近は、クロスフィットだけでなく、HYROXにも挑戦している。横浜大会には20人、大阪大会には12人ほど、さらに台湾大会にも会員たちが参加した。

「旅行も兼ねて、みんなで台湾に行っていました。競技に出るだけじゃなくて、その後もみんなで楽しめる。そういう横のつながりが、さらに広がっていると思います」

日惠野さんが目指していた「コミュニティ」は、少しずつ形になっている。

「一人では続けられない。でも、誰かと一緒なら頑張れる。運動経験があってもなくても、みんな同じように少しずつ続けていける。そういう場所を、これからも作っていきたいと思っています」

取材・文:FITNESS LOVE編集部 写真提供:日惠野貴之

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