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米国フィットネス誌が解説:二面性を持つホルモンコルチゾールを味方につけよう!

ストレスに関するホルモンに分類されることから、何かとネガティブなイメージの強いコルチゾール。だが、ホルモンや脳内伝達物質をはじめとする内分泌系は、ホメオスタシス(生体恒常性)など身体の維持・コントロールを司る重要なシステムであり、必ずしもマイナスな側面だけを持つものではない。

とはいえ、ボディビルダーをはじめとするアスリートにとって、カタボリック(筋分解)を促進させるコルチゾールの存在は、大きな心配の種だろう。そこで本記事では、米国のフィットネス専門誌がまとめたコルチゾールの持つ二面性に関する報告を、わかりやすく解説する。

(IRONMAN2026年5月号「from IRONMAN USA」より転載)

ストレスホルモンだが生命を守っている

ボディビルダーにとって、筋肉を分解してしまうコルチゾールは厄介な存在だ。コルチゾールの上昇は、筋肉に同化されているタンパク質を分解してしまう。コルチゾールが話題になるとマイナス面が強調されることが多いが、状況によっては有益になる性質も持っており、このコルチゾールの二面性については知っておきたい。

コルチゾールは「ストレスホルモン」として知られているが、その一方で生命維持に欠かせない重要な役割を担っている。コルチゾールや、カテコールアミンであるアドレナリン、ノルアドレナリンなどのストレスホルモンは、心身へのストレス負荷が高まった際に分泌量が増加する。

人類が常に危険と隣り合わせの環境の中で生きてきた太古の昔、猛獣が人間の住処にやってきた場合は、人々は「逃走か闘争」を瞬時に選択しなくてはいけなかった。どちらを選択した場合でも大量のエネルギーが必要になるが、こうして分泌されたホルモンが体内のエネルギー供給を活性化させ、危機的な状況下でも生命活動を維持できるよう生体を調整してきたということが、ストレスホルモンが生命を維持する機能として働いているゆえんだ。


カテコールアミンもコルチゾールも副腎から分泌されるのだが、カテコールアミンは副腎から直接的な経路で放出されるため、高ストレス下においてはコルチゾールよりも短時間で体内レベルを高めることができる。これは、コルチゾールが不要であることを意味しない。コルチゾールはカテコールアミンのバックアップ機能を担っているからだ。

コルチゾールのバックアップ機能は成長ホルモンだ。成長ホルモンはテストステロンなどと同じアナボリックホルモンの一つと見なされているが、成長ホルモンの体内レベルが高まると、身体に蓄えられている脂肪やブドウ糖が積極的にエネルギーに変換される。成長ホルモンは、アナボリックホルモンでありながら、緊急時にコルチゾールをバックアップするホルモンなのだ。

カテコールアミンとコルチゾールの働きによって、体内ではさまざまなエネルギー源が動員される。具体的には、肝臓でブドウ糖を新たに合成する糖新生が促進されるほか、蓄えられた脂肪が分解されてグリセロール(糖新生の材料)や脂肪酸が放出され、それらが血流に乗って全身のエネルギー源として活用される仕組みだ。

2つの顔を持つコルチゾール

ここまで一通り読んで「コルチゾールのレベルが高いと肥満になりやすいのでは」と首を傾げた人も多いかもしれない。その理解は間違っていないが、一方で、コルチゾールにはストレスがかかり身体が緊急事態に陥ったときは「緊急用エネルギー源の確保」にも働くという真逆の性質も備わっている。

コルチゾールは条件によって、この相反する役割を切り替えている。例えば、運動によるストレスが身体にかかるとコルチゾールの分泌が促される。このときコルチゾールは、脂肪分解を促進してエネルギー源を確保するだけでなく、運動後の身体においてグリコーゲンの再貯蔵を促し、筋肉のタンパク同化(修復・合成)を間接的にサポートする役割も担う。一方で、精神的な高ストレス状態が長く続くと、体内のコルチゾール濃度が高いまま維持されてしまうため、逆に体脂肪が蓄積しやすい体内環境となり、肥満を招く一因となるのだ。

 

睡眠中でも生体機能を維持するために

コルチゾールの分泌は早朝にかけて増加する。これは睡眠中は食事ができないので、体内ではコルチゾールの分泌を促して貯蔵されている脂肪やグリコーゲンからエネルギー源を確保しようとするためだ。そのため、就寝前に血中のアミノ酸濃度を緩やかに高めるカゼインなどのタンパク質を取っておけば、コルチゾールの影響を相殺できると主張する研究者もいる。

一方で、コルチゾールは夜間に低下するのが一般的なので、早朝よりも日中の遅い時間帯にトレーニングを行う方が同化作用が強いと指摘する研究者もいる。

コルチゾンとコルチゾール

コルチゾールは体内で強い作用をもたらす活性型ホルモンだが、その作用を弱めた不活性型に近いコルチゾンというホルモンも存在する。

これらは共に副腎皮質を起源とする糖質コルチコイドの一種である。コルチゾンは血液中で結合していない遊離状態で循環しているのだが、肝臓、脳、筋肉、脂肪組織に存在する特定の酵素と結合すると活性型コルチゾールへと変換されてしまう。そのため、コルチゾンレベルが高い人はコルチゾールレベルも高い状態になりやすいことが分かっている。

コルチゾールは薬で制御できる?

運動などによって一時的にコルチゾールレベルが上昇することは、体脂肪の減少を促す作用があるため、必ずしも悪いことではない。問題なのは、精神的ストレスによって長期的にコルチゾールレベルが高い状態で維持されてしまうことだ。

2000年代に入ってからは「コルチゾンをコルチゾールに変換する特定の酵素」の働きを遮断する、あるいは「コルチゾールをコルチゾンに変換する特定の酵素」を利用して、コルチゾールを不活性化するといったコルチゾールを制御する薬品の開発に乗り出す製薬会社が現れたが、現時点ではまだ実用レベルには至っていないようだ。

コルチゾールのマイナス面

筋肉の異化分解を促し、長期的にコルチゾールレベルが高い状態が続くことで脂肪も貯蔵されやすくなるといったマイナス面を持つコルチゾールの存在は悩ましい。飢餓状態や断食状態を脳は「ストレス」と認識するため、減量や病気治療のための食事制限もストレスであると認知し、コルチゾールの分泌を促すように働きかけてしまう。

コルチゾールレベルが高い状態が続くと特に高糖質食品、高脂肪食品への欲求が高まることも、肥満になりやすい要因だと考えられる。興味深いことに、健康に良いとされる「低カロリー食」は、常に体内のコルチゾールレベルが高い傾向が見られるそうだ。低カロリー食は高コルチゾールの状態が続くため、できるだけタンパク質の割合を増やして、満腹感を持続させることが重要であると考えられる。

まとめ

コルチゾールを上手にコントロールするポイント

❶ 精神的ストレスをできるだけ回避し、回避できない場合は精神的ストレスをできるだけ長引かせないようにすること
❷ 運動がもたらす一時的なストレスはコルチゾールのプラス面を引き出す。ただし、オーバートレーニングによるストレスは、コルチゾールのマイナス面が作用しやすい
❸ いかなる種類のストレスがかかる場合でも、高タンパク質食を摂取することで、筋肉の異化分解を抑え、食欲を抑えることができる

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