「年齢を重ねても、正しいアプローチをすれば何歳からでも身体は必ず変化します」
そう語るのは、静岡市で完全個室・マンツーマン指導を行う『パーソナルジム サードプレイス』を運営する斎藤久(さいとう・ひさし/52)さん。トレーニング歴は約22年、トレーナー歴は約10年になる。自身も競技者として、サマースタイルアワードのスポーツモデル部門を中心に出場し、2018年と2021年の日本大会で2位、各大会を通じて優勝8回の実績を持つ。さらに2024年、2026年にはJBBFのメンズフィジーク競技の日本大会であるオールジャパンにも出場した。コンテスト初出場は43歳。斎藤さんは「年齢はただの数字」と語る。

トレーニング指導をする斎藤久さん
斎藤さんがトレーニングを始めたのは30歳のときだった。学生時代は野球に打ち込んでいたが、就職後は運動不足に。健康目的でジムに通い始めたことが、身体づくりの第一歩だった。
「最初は週1〜2回、健康目的で通っていました。友人のコンテストを応援に行ったことがきっかけで、本気でトレーニングを始めました」
その後、43歳でサマースタイルアワードに初出場し、優勝。そこから競技者としての挑戦が始まった。現在も競技を続ける原動力は、「昨日の自分より成長したい」という向上心にある。

2019年サマースタイルアワード決勝大会に出場
「年齢を言い訳にせず、挑戦し続ける姿そのものが誰かの勇気になることを願っています。ライバルたちに負けたくない、応援してくれる人たちに応えたい、フィットネスを発展させたいという気持ちも強いです」
一方で、50代の身体づくりは若いころと同じではない。回復は遅くなり、痩せにくさも感じるようになった。だからこそ、斎藤さんは無理に量を追うのではなく、質を高めることを意識している。
「回復力の管理と怪我予防の重要性を、以前より深く理解するようになりました。無理をせず、質を高めるための戦略的なトレーニングを意識しています」
完璧を目指さず、まずは週1回から続ける
「年齢を重ねると身体は変わりにくい」と感じている人も多い。しかし斎藤さんは、そう決めつける必要はないと話す。
「決してそんなことはありません。正しいアプローチを行えば、何歳からでも身体は変化します。むしろ、積み重ねた経験がある分、効率的に進めることも可能です。私もコンテスト初出場は43歳でしたが、身体は大きく変わっています」

2026年JBBFオールジャパンメンズフィジークにも出場
現在トレーナー歴10年の斎藤さんが運営する『パーソナルジム サードプレイス』(2025年4月29日開業)は、自宅でも職場でもない『第3の居場所』という意味を持つ。大手パーソナルジムで10代から80代まで幅広い年代の指導に携わった経験から、一人ひとりの生活や目標に合わせて、より細かく向き合える場所をつくりたいと考えた。
「トレーニングをするだけの場所ではなく、お客様が安心して過ごせて、悩みも話すことができ、前向きな気持ちになれる場所にしたいと考えています」
通う人の目的は、ダイエット、ボディメイク、健康づくり、姿勢改善、身体機能の向上、筋肉増量、コンテスト出場まで幅広い。競技者だけでなく、運動経験がなく何から始めれば良いか分からない人、一人では続けにくい人も多いという。
初心者を指導するときに大切にしているのは、最初から難しいことを求めないことだ。
「その方の目的や生活スタイル、運動経験、体力などを丁寧に確認します。初心者の方に、いきなり難しい種目や無理な負荷を課すことはありません。正しいフォームと安全性を重視しながら、一人ひとりのレベルに合ったメニューを提案します」

サマースタイルアワードプロである斎藤さんが一人ひとりのライフスタイルに合ったトレーニングを指導する
また、続かない人が運動を習慣にするには、最初から完璧を目指さないことが重要だという。
「週に何回もトレーニングしなければならない、食事を全て変えなければならないと考えると、始める前から負担になってしまいます。まずは週1回でも運動する時間を決めて、続けることを優先することが大切です」
斎藤さん自身のトレーニングは週5回。胸、背中、肩の3分割を基本に、腕と腹筋を適宜加えている。現在は怪我の影響で脚のトレーニングができないため、スポーツモデルからメンズフィジーク競技へと挑戦の形を変えた。1回のトレーニングは約2時間。重視しているのは、基本種目のフォームだ。
「重さだけでなく、狙った筋肉にしっかり刺激を入れる丁寧な動作を意識しています」
食事では、PFCバランスを自然に意識している。PFCとは、タンパク質、脂質、炭水化物の三大栄養素のこと。普段は高タンパク・低脂質の食事になりやすいが、甘いものも好きだという。
「甘いものが大好きなので、食べたら動くことを意識しています。外食では好きなものを食べます」
競技者として厳しい身体づくりを経験しているからこそ、一般の人に同じ生活を求めることはしない。大会に出る人と、健康づくりやダイエットを目的とする人では必要な方法が違う。だからこそ、一人ひとりに合った現実的な提案を大切にしている。
指導の中で印象に残っているのは、身体だけでなく表情まで変わっていく人の姿だ。
「トレーニングを通して表情が明るくなり、性格まで前向きになられた方の変化は、何度見てもうれしいものです。身体が変わることで、人生まで豊かになる瞬間を共有できるのが喜びです」

「甘いものが大好きなので、食べたら動くことを意識しています。外食では好きなものを食べます」競技では食事制限が必要だが、外食では息抜きも大切と語る。
約2カ月で体重が7kg減少し、筋肉量や姿勢の変化を喜んだ人。最初は不安を感じながらも、トレーニングと食事を続け、大会出場に挑戦した人。運動初心者だった同年代の利用者からは「ダイエットやトレーニングに年齢は関係ないと感じた」という言葉もあった。
「数字の変化はもちろんですが、自信が付いたり、前向きになったりする姿を見ることが何よりうれしいです」
競技者としての斎藤さんは、自分自身を追い込む。一方、トレーナーとしては寄り添いを第一にしている。
「身体を変えるには、ただ厳しいトレーニングをすれば良いわけではありません。目的に応じた運動、適切な食事、休養を継続する必要があります。競技を通じて得た知識や経験を、お客様の目的や生活に合わせて分かりやすく伝えることを意識しています」
今後も競技者としては、納得いくまで自己ベストを更新し続けたいという。そしてジムは、地域の人にとって『なくてはならない健康の拠点』にしていきたいと話す。
身体づくりを始めるのに、遅すぎることはない。最初から大きな目標を立てる必要も、完璧に取り組む必要もない。
「運動は、運を動かすと書きます。運動を始めることで身体が変わり、気持ちが変わり、人生も良い方向に変わっていくと思います。年齢はただの数字です。一番若いのは今です」

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取材・文:柳瀬康宏 写真提供:斎藤久










