人呼んで「笑顔で人を救う福島の会津っ娘」。東京女子プロレスの遠藤有栖さんは、入場からいつも笑顔だ。しかし自力初勝利はデビューから1年後という、苦しい時期も経験している。その中で、プロレスラーになるきっかけを作った憧れの人、そしてデビューしてすぐにシングルマッチで戦った先輩……この二人の身体に近づくためにトレーニングを積んだ。そんな有栖さんへのインタビュー後編は、デビューしてから出会った理想のプロレスラーについて聞いた。
坂崎ユカとの試合中に「この人みたいになりたい」という気持ちが沸いた

プロレスラーになってからの身体づくりについて語った遠藤有栖さん(撮影・橋場了吾)
遠藤有栖さんはデビュー前から、怪力レスラーとして活躍している近藤修司さんのパーソナルジムに通っている。
「(WRESTLE-1時代の)近藤さんは、めちゃくちゃ怖い人だと思っていたんですが、才木(玲佳)さんも教わっていたことがあると聞いて、私も行こうと思いました。最初は、とにかく辛い。おもりがついていないシャフトすら持ち上がらない。全部、支えられながらやっていた感じでした。筋力が落ちすぎていたんですよね。それで近藤さんのパーソナルに加えて、ジムにも通って……お金がないのに毎日のようにジムに通い詰めました。近藤さんに教えてもらったことを『ここを鍛えるには、こうして』みたいなメモを取って、ジムで繰り返しやって、という感じでした」
ここでデビュー戦の映像を見ながら話すことに。デビュー時はまだ筋肉が足りなかったという有栖さんは「細いな~」と感想を漏らす。それから自力初勝利をつかむまで1年がかかった。そんな話をしていたら、ある選手の名前が出た。
「(坂崎)ユカさんと試合をして、頑張れるようになったんですよ。勝てない時期は、技の精度を上げなきゃという気持ちでいっぱいでした。あとは身体づくり。もう誰でも持ち上げられる力をつけようと。筋トレをすることで、モチベーションを一気に上げていましたね。その中で特に脚を鍛えていましたね。ユカさんとは、デビューして4カ月後にシングルをしたんですが、『私、この人について行く』と思いました。自分がなりたいプロレスラーの理想形が、ユカさんですね。試合をしていても、ユカさんがキラキラしているんですよ。ユカさんと戦ったことで、自分の未来が楽しみになったんです。ユカさんを肌で感じて、強!って思って。試合中から『この人みたいになりたい!』という気持ちになって(笑)。試合は負けたんですけど、悔しいよりも『もっと頑張る!』という気持ちが初めて芽生えたんですよね。で、ユカさんはこのあともっと大きくなるんですよ、身体が。その後、タッグでは何回も戦ったんですが、ユカさんはアメリカへ行ってしまったので、私はまだ1回も勝てていないんです。だからシングル、したいですね。(2025年1月に)2年ぶりにタッグで戦いましたけど、足りなかった……。まだまだでした。2年間、必死に練習しましたけど、追いついていなかったです」
怪我をしない身体をつくり、アジャコングを投げ切ることが目標

「什の掟」でどの選手も投げ切ることが目標だ(©東京女子プロレス)
才木さんに憧れ、坂崎さんに憧れ、パワーをつけた遠藤さん。現在のフィニッシュホールドは什の掟(じゅうのおきて)。アルゼンチン・バックブリーカーの要領で相手を持ち上げ、回転しながらショルダー・ネックブリーカーで叩きつけるという怪力技だ。そのようなパワーをつけるまで練習を重ねた遠藤さんが、トレーニングで気をつけていることは何なのだろうか。
「怪我をしないのが一番です。自分の限界を超えた重量でトレーニングしすぎるのは、ダメだなと思います。『もっと行けるかも』と思ってやってみると、ぎっくり腰になったり膝を痛めたりしていたんですよ、私。なので最近は『これ行ける』と思っても、今はやめておこうと自制するようにしています、特に大事な試合の前は。ユカさんが大きくなっていくのを見て、私も一点集中ではだめだと思って肩周りも重点的にやっているんですけど、瞬発力が落ちると意味がないので、近藤さんにどっちもいい感じで組み合わせたメニューを作ってもらっています。今の目標は、什の掟で誰でも投げ切ることです。什の掟を決めた相手で、一番重かったのは平田(一喜)さんですかね(平田はDDT所属の男子レスラーで公称172cm・78kg)。アジャ(コング)さんは、持ち上がらなかった…水車落としは何とか投げきれましたけど、すぐ起き上がってきてダメージなかったんだなって」
高校時代は、女性らしさ、可愛らしさに惹かれた時期もあったが、今は自分の中の「女の子」は消えたという。
「今は……身体を大きくしたいです。私、はじめましての方に『プロレスラーです』というと、『え、こんな小さいのに?』みたいに言われるのが本当に嫌で。なので、その度に『はぁ……』ってなっちゃうんですけど(笑)。でも、ちょっと腕を見せたときに『おぉ!』となる筋肉はほしいですね、本当にまだまだなので。私はプロレスラーが天職だと思っているので、プロレスラーとして生きていく。リングはプロレスラーみんなが輝ける場所だと思っているので、ユカさんを理想に頑張っていきたいですね」
執筆者:橋場了吾
札幌市出身。ラジオ局で社会人としてのキャリアをスタートさせ、
イベントプロデュースの傍ら、プロレスラー、タレント、ミュージシャンなどのインタビューを行う。










