40代に突入したあたりから徐々に周囲からかけられる、容赦のないこの言葉。「しょうがないじゃん」と諦めて、右から左へ受け流すか、それとも「くそー、変身してみせる!」と奮起するか。どちらを選ぶかで、その先の人生が大げさではなく激変することもある。須藤貴美子(すどう・きみこ/53)さんの場合は……。
「20代のころは痩せていて、みんなから羨ましがられていたので、『年々ぽっちゃりしてきたねー。トシ相応だけどねー』と言われたときは、『なんでどんどんぽっちゃりしていくんだろう』と。お洋服も気がつくと7号(Sサイズ)に近かったのが11号(Lサイズ)。自分の身体を見るのが嫌になり、見てみぬフリをするようになりました」
諦めかけた須藤さんが、ぐっと踏みとどまり、もうひとつの選択に踏み切ったのは8年前、45歳のときだった。
「体調不良をきっかけに、人生初のジム通いを始めてみることにしました。まったく運動をしたことがなかったのですが、だからこそトレーニングで成果を感じることができ、身体が変わっていくことが楽しくなっていきました」
そんな須藤さんのフィットネスライフが2022年、さらに大きく変わることに。ビキニフィットネスの世界で“絶対女王”の異名をとる安井友梨さん考案の新競技、「ドリームモデル」がこの年から始動。競技コスチュームは露出の少ないイブニングドレスで、ステージ上のポージングも比較的シンプルなど、初心者にも挑戦しやすいルールもあり、須藤さんもコンテスト初挑戦を決めたのだ。
2年目のシーズンとなった2023年は、マッスルゲート奈良大会に出場し、50歳以上の部で優勝するなど躍進。地方大会の優勝者が集う年末のゴールドジムJAPAN CUPでは大健闘の6位入賞を果たした。「このカテゴリーがなかったら、大会を目指そうなんて思わなかった。ドリームモデルを作ってくださり、感謝致します」という須藤さんは、周囲からかけられる言葉の変化にも驚いている。
「最近では、ジムでずっとご一緒だった方たちに、どうしてそんなに体型が変わったんですかと聞かれるようになりました。大会を目指しているので、減量もしていますとお伝えすると『頑張ってくださいね』と励ましてくださいます。また、大会に向けて仕上がっていく身体を見て、同年代の方や女性の方に、『希望になります、トレーニング頑張ってみます』とジムでお声かけいただいたりもして。嬉しかったです。私のパワーになりました」
トレーニング継続の過程では、もちろん“年齢”を実感することもある。
「筋トレの疲労感が後からやってくるのを忘れて、脚トレをやりすぎてしまい……。家に帰ったら起きられなくなり、夕飯も食べられずに朝まで寝込んでしまったことも」
それでも、年齢以上に“伸びしろ”を日々実感できることが嬉しく、また抱く目標も大きく広がり続けている。
「大会に関しては、今年もゴールドジムJAPAN CUPに出場できるように頑張っています!お料理が好きなので、これからは減量中に楽しんで食べられる食事を研究したいと思います。ジムでは、トレーニングに関して質問をしてくださる方がいらっしゃるので、自分なりにお勉強して、正しい知識を伝えられ、周りの方たちにトレーニングの楽しさを感じてもらえたらなぁと思い始めています」
ドリームモデルに出場を決めて以来、競技考案者である安井さんの「自分と未来は変えられる」という言葉を信じてトレーニングに取り組んできた。自分と未来の成長曲線は、これからますます右肩上がりを続けていくことだろう。
取材:FITNESS LOVE編集部 撮影:中島康介(Instagram:k00_op)