ボディコンテストは「個性」に満ちている。そのなかでも、ひときわ異彩を放つ選手を紹介したい。彼女の名前はシュミッド・美紀(みき/42)。かつて世界を舞台に活躍し、今また形を変えて世界へ羽ばたこうとしている。
【写真】シュミッド美紀さんのワールドクラスなゴージャスボディ
ダンスの世界での輝かしいキャリア
20代のころ、シュミッドさんはダンスインストラクター兼パフォーマーとして活躍。メイシー・グレイやDJクラッシュといった世界的アーティストとの共演を果たし、様々なメディアに出演してきた。
「フィットネスの道への岐路となったのは、夫との出会いです。夫は当時、日本のゴールドジム公認トレーナー制が取り入れられた翌年に、トレーナーに就任した経歴を持っています。『ダンスパフォーマンスの向上のためにトレーニングを取り入れるべき』とのアドバイスがきっかけでトレーニングを学んだ経験がもとで、のちにトレーナーへの転身を決意しました」
トレーナーへの転身と学びの軌跡
シュミッドさんが学びの場としたのは海外。フィットネス先進国で活躍する名トレーナーに師事し、人体の構造に基づいた科学的でハイクオリティな知識と指導力を磨き上げた。認定パーソナルトレーナー(NSCA)、認定STOTTピラティス、ストレッチトレーナー(日本ストレッチ協会)、認定TRXコーチ(TRX)の4つの資格を有し、現在は東京都港区にある『club360』にて、大使館関係者など、在日外国人を主な顧客として活動している。
「お客様は、長年専属のパーソナルトレーナーと契約してきた方など、フィットネスへの造詣が深い方も多いため、自身がそれに応え切れる存在であれるように常に学び続けています」
シュミッドさんのトレーニング哲学は、「基礎の徹底」に集約される。
「たとえば、ブルガリアンスクワットを正しく行うには、まずスクワット、スプリットスクワット、ランジを段階的に習得する必要があります。また、フリーウエイトでの基礎種目を磨かなければ、マシンでのトレーニングでも感覚が生かせず、上手く動作できません」
徹底的な基礎の習得が、健康で美しい身体づくりには要なのだと語る。また、自身が産後に骨盤のゆるみや靭帯の過伸展に悩んだ経験から、理学療法士ら専門家の指導を受けながら身体を鍛え直したことも、彼女の指導に一層深みを与えている。
超緻密な食事管理 ビキニ競技選手としての躍進
「トレーナー専業のつもりだったのですが、子育てが落ち着いて時間に余裕ができたため、競技者という立場に自分が立つことに興味を抱きました。トレーニングは元々してきたので、主に食事管理のためにコーチをつけたのですが、こんなにたくさんのルールがあるのかと驚きました」
コーチはミスオリンピアも輩出する名指導者である。その驚きのルールの一部を紹介したい。たとえば、醤油の禁止。エストロゲンに影響を与えるとして、大豆を主成分とする醤油は禁忌だった。また、シュミッドさんの浮腫みやすい体質への対策として、大会1週間前にはガム、粉末状の食事(プロテイン、BCAA、EAA、クレアチンなどの健康食品から小麦など自然食品まですべて)、野菜までもが禁止された。オフシーズンでも水はミネラルウォーターのみに限定され、ガムに至ってはメーカーの指定まであったそうだ。
「日本では手に入らない食材の指定があるときは困りました(笑)。でも、わたしの肉体に合わせた専用の指導内容は正確で、たまに破ってしまうと明らかに身体に悪い変化として現れました」
こうして2020年からビキニ競技に挑戦。初戦から頭角を現し、2020年と2021年のCJBBF(中部日本ボディビルディング&フィットネス)『ジャパンフレンドシップカップ東京』で2位、2021年のFWJ(Fitness World Japan)で3位を獲得した。
「今シーズンはFWJ沖縄・香港大会を経て、オリンピアへの出場を予定しています。競技者としても成果をさらに見せられるよう頑張り切りたいですね」
シュミッドさんの人生は、常に高い志への努力で作られている。その生き方は、華やかな成果は地道で目立たない努力を積み重ねた上にこそ、美しく花開くことを示してくれる。
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取材:にしかわ花 写真提供:シュミッド・美紀(Instagram▪︎miki_fit360)
『IRONMAN』『FITNESS LOVE』『月刊ボディビルディング』寄稿。広告・コピーライティング・SNS運用。ジュラシックアカデミーでボディメイクに奮闘している。