昨年末のゴールドジムジャパンカップでクラシックフィジークオーバーオール覇者となり、一気にコンテストシーンの表舞台に躍り出た五味原領選手。2020年に日体大を卒業し、現在は「スタジオバズーカ」でパーソナルトレーナーとして活動している。
五味原選手は学生時代、ボディビル世界ジュニア選手権にも出場した実績を誇る。昨年はクラシックフィジークに転向し、身体だけでなく、ポージングの美しさも話題を呼んだ。
ボディビルとは違うクラシックフィジークの魅力のひとつである「ポージング」について五味原選手のこだわりを聞いた。
――クラシックフィジークはポーズの自由度が高い分、ボディビルよりも難しい部分もあるのではないかと思います。
五味原 難しいです。まず、クラシックフィジークでは規定ポーズにバキュームポーズがあるので、それができないといけません。自ら選んだ1ポーズを取る「クラシックポーズ」も自分で選べる分、その選択が難しくなります。
――クラシックポーズは「マスキュラー以外のフロントポーズ」とされています。選択肢の幅があるので、そこでセンスを問われると言いますか。
五味原 まずはどういったポーズを選ぶべきか、というところから始まります。芸術的に見せる という点で考えると、ボディビルよりも練習が問われるのかな、と思います。ポージングに芸術性を持たせ、“クラシカル”という曖昧なものを表現しなければいけません。ポージングの芸術性は、それぞれの関節角度や指先まで考えられた動き、目線などはもちろんですが、重心位置や重心線と支持基底面のバランスが1番大切な要素だと考えます。高い重心位置に狭い支持基底面、少し左右にずらした重心線、この一見不安定な状態でバランスを保つことがクラッシックらしさを表現する上で欠かせず、それが美しさという表現に繋がります。
――クラシックポーズは、いろんなポーズを試しながら、自分に合ったポーズを探し当てる?
五味原 例えば、左腕を伸ばしたポーズを取ったら、右にも伸びていないとバランス的に気持ち悪いんです。そういうことを念頭に置きながら脚の位置や骨盤の角度を調整していきます。そうした作業を積み上げていくと、どうしても自分にははまらないポーズも出てきます。反対に、すごくはまるポーズも出てきます。そこで取捨選択をしていきます。だから、大会直前になって慌ててポージングの練習を始めると、自分に合ったポーズも見つけられないし、本当は合っていないのに「自分に合っている」と思い込んだまま出場することになってしまうかもしれません。
――ポージングの練習はどのくらいのタイミングで始めるのですか。
五味原 ポージングは年間通して練習しています。曲をつけて考えた構成で練習するのではなく、即興で3つ4つポージングを取ってみて、良いポージングのパターンができたら忘れないように覚え込ませます。ポージング一つ一つは写真を撮り、支持規定面、重心位置、重心線のバランスなどをグリッド線を用いて整えていきます。このように一つ一つのポージングのレベルを上げながら自分ができるポージングパターンを増やしていき、大会3週間前から音楽に合わせてポージングを決めていきます。
――最初は海外の選手の動画を参考にするのですか。
五味原 そうです。例えばフランク・ゼーンの身体を目指したいと思っても、筋肉の形をフランク・ゼーンに近づけるのは不可能だと思うんです。でも、ポージングによって見た目を近づけるのは可能だと思います。ただ、マネをしているだけでは、骨格も違うので、見た目はよくはなりません。マネから入って、そこから自分の骨格に合ったポーズにアレンジしていくという感覚です。
――バキュームポーズはどのくらい練習したのですか。
五味原 期間で言うと、(できるようになるまで)4カ月くらいかかりました。最初は完全に息を吐き切った状態で(腹部を)引き上げる。これを1日に数回やるんですが、歯を磨くのと同じような感覚で習慣づけていきます。全くできないところからのスタートになるので、「やり方はこれで合っているのかな?」と思いながらも、それでも続けていくと、急にポン!っと(腹部が)入るんです。すると、だんだんと薄く凹んでいく感じになっていって、さらに続けていくと、お腹が背中にへばりつくような感覚、そして次にお腹が上にへばりつくような感覚が掴めるようになっていきます。そうなるまでに4カ月かかりました。
五味原選手の肉体表現はポージングへのこだわりからきている。鍛えた身体をステージで競い合うスポーツでありながら、観客を魅了する芸術的側面を兼ねた競技であることを五味原選手が体現している。
文:IM編集部 インタビュー:藤本かずまさ 撮影:北岡一浩
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