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人間がゴリラより強い筋肉があるとすれば、どの筋肉でしょうか?

通常のウエイトトレーニングはほとんどの種目で体を捻らないのに対し、スポーツでは体を捻る場面が多くなります。では体を捻るということはどのくらい重要なのだろうか。機能的な要素を備えた、スクワットを行いながら体を捻るという「ローテーショナルスクワット」を題材に井上先生に聞いてみました。

文:井上大輔 <NPO法人 日本ファンクショナルトレーニング協会>

魚類と違って哺乳類ができること

人間の正しい動きを追求するときに、私は「比較解剖学」を用いることがあります。そこには人が人として正しく動くためのヒントが隠されているからです。人間の正しい動きを追求するときに、私は「比較解剖学」を用いることがあります。そこには人が人として正しく動くためのヒントが隠されているからです。よく使われるのは次のような問題です。

「人間はゴリラと力比べを行うと負けてしまうのは想像がつくと思いますが、唯一人間がゴリラより強い筋肉があるとすれば、どの筋肉でしょうか?」
答えは「大殿筋」です。

人間は大殿筋が発達しているから「直立二足歩行」で移動できるのに対し、ゴリラは4つ足に近い形で歩きます。これらのことから、スクワットを行い、大殿筋を使って座った状態から立ち上がる動作を行なって鍛えるのが「人として生活する」ために大事であるということが分かります。

では次の問題です。「サメとイルカではどちらが泳ぐスピードは速く、敏捷性があるでしょうか?」
答えはイルカです。

水族園のイルカショーを見ると想像がつくと思います。では「イルカとサメの違いは?」
これもイルカが哺乳類に対してサメは魚類だということは想像がつきます。

それでは「泳ぎ方の違いは?」
イルカは体を捻ることができるのに対して、サメはそれができないということが分かります。ここで言いたいのは「人間とイルカは同じ哺乳類」ということで、イルカが得意なことは人間にとっても体のパフォーマンスを発揮するときに大事な要素として考えるべきではないかということになります。

通常のウエイトトレーニングはほとんどの種目で体を捻らないのに対し、スポーツでは体を捻る場面が多くなります。人間は歩くときもわずかに体を捻って歩きます。これらのことからパフォーマンスの向上を目的とするトレーニングは体を捻ることが必要不可欠なのではないかと思います。フィットネスクラブには「ロータリートーソー」という、座った状態で体を捻り、腹斜筋を鍛えるマシンがあります。このようなマシンは筋肉をアイソレートして鍛えることには効果を発揮しますが、実際に体を捻るときは立位の状態で行うことが多いと思います。

今回はより機能的な要素を備えた、スクワットを行いながら体を捻るという「ローテーショナルスクワット」について解説していきます。

ローテーショナルスクワットの効用

大殿筋の強化
股関節の伸展、外旋の力の強化
体幹の強化

ローテーショナルスクワットの行い方

ダンベルまたはケトルベルを片手で持ち、頭上に持ち上げます。両足の幅は肩幅ぐらいを目安にします。(写真1−1)

1-1 ローテーショナルスクワットのスタートポジション

そこから体を沈めながら、ダンベルを持ってない方の手でくるぶしを触りにいきます。(写真1−2)

1-2 ローテーショナルスクワットのボトムポジション

しゃがみ込む際には、股関節を屈曲(曲げた状態)で内旋(内側に回転)ローディングを行い、大殿筋にストレッチをかけます。(写真1−3)そこから地面を斜め下に押しながら、股関節を伸展(伸ばす)と外旋(外側に回転)でアンローディングします。(写真1−4)

1-3 股関節をローディングし大殿筋を伸ばした状態

1-4 股関節を外旋、伸展しながらフィニッシュする

動作中はつま先が外を向いていき、膝が内に入りやすくなるので注意が必要です。(写真1−5)

1-5 動作中は膝が内に入りやすくなるので注意が必要

ここで言う「ローディング」とは、大殿筋を伸ばしてエネルギーを貯めること。「アンローディング」とは大殿筋を収縮させて、エネルギーを解放することになります。これらの一連の動作はストレッチ・ショートニング・サイクル(SSC)と言い、スポーツで強い力を発揮するときに必要な動きになります。筋肉は一度伸ばしてから縮めると大きな力を発揮するのです。

大殿筋の動きは、写真1−4のように、股関節の伸展と外旋なので、スクワットやレッグプレスよりも、ローテーショナルスクワットは大殿筋をより、最大限に使う種目とも言えるでしょう。この種目は股関節の動きをつくり、体幹の回旋を行うという非常に優れたエクササイズと言えます。スポーツを行なっている方はぜひこのエクササイズを採用することをおすすめします。

井上 大輔(いのうえ・だいすけ)
兵庫県神戸市出身。滋慶学園大阪ハイテクノロジー専門学校スポーツ科学科トレーニング理論実習講師/整体&パーソナルトレーニングジムを経営(兵庫県明石市)/ NSCACSCS/NPO 法人JFTA 理事長/17歳よりトレーニング開始。大学卒業後、スポーツクラブに就職、スポーツコンサルティング事業にかかわる。同時に操整体トレーナー学院学長松下邦義氏に師事、操整体について学ぶ。/2006年NBBF 全日本選手権 第6位。
NPO法人 日本ファンクショナルトレーニング協会 TEL:078-707-3111


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