牛や豚を扱う肉職人として働きながら、フィットネス競技の舞台へ挑戦する女性がいる。2026年8月1日に開催されたマッスルゲート神戸大会(神戸芸術センター)で、ウーマンズウェルネス一般の部1位に輝いた築本沙緒(ちくもと・さおり/44)さんだ。肉を扱う職人として働きながら、なぜ筋肉を鍛え、競技の舞台を目指したのか。その歩みを聞いた。

食肉を扱う職人仕事

職場での築本沙緒さん
築本さんは、神戸・東山商店街にある食肉加工会社・三朋フーズに正社員として勤務し、牛や豚のカット、筋引きなどを担当する肉職人。さらに、アルバイトでゴールドジムのフロントスタッフとしても働いている。
「女やとなかなかおらん仕事やと思います。牛と豚を主に扱っていて、自分で仕入れもします。無駄なく肉を残すため、歩留まりを考えながら切っています」
技術や包丁さばきだけでなく、体力や集中力も求められる職人仕事。その経験で培った力強さは、今回のステージ上で披露した存在感にもつながった。
産後太り、コロナ太りがきっかけで
築本さんがトレーニングを始めたきっかけは、産後太りとコロナ太りだった。まずは4ヶ月間パーソナルトレーニングを受け、その後は24時間ジムに入会。以降は自分自身で試行錯誤しながら、トレーニングを続けてきた。
「初めは1人でネチネチと高重量を扱うトレーニングを続けてました(笑)」
熱中するあまり、高重量を扱うことによる神経系の疲労から帯状疱疹ができたことも。さらに、ダンベルを落として肋骨に2度にわたってひびが入るという経験もしたが、それでもトレーニングをやめることはなかった。
競技者を生で見て「かっこいいな」と
ゴールドジムのフロントスタッフとして、男性・女性を問わず、多くのボディメイクの競技者と接する中で興味が芽生え、自らも大会出場を目指すようになった。
「競技者のみなさんを生で見ると、『やっぱりかっこええな!』と思って。自分も挑戦してみたいと思いました」
得意部位は脚!週3回の脚トレ
築本さんが選んだウーマンズウェルネスというカテゴリーは、下半身の筋肉量が求められる部門。決め手になったのは、もともと好きだった脚のトレーニングだ。
「ビキニフィットネスよりも、もう少しバルクのある身体を目指したかった」
脚のトレーニングはなんと週3回。筋肉を大きくする日、カットを出す日、パンプアップを狙う日など、自分自身で目的を設定してメニューを組み立てている。
「トレーニングが好きで、男性に負けへんぐらい、できるだけいっぱい筋肉をつけたいんです」
型にはまらず、粘り強く
築本さんが感じる自身の強みは、男性並みの粘り強さだという。
その粘り強さを生かし、決まった方法にとらわれることなく、自分の身体と向き合いながら試行錯誤を重ねてきた。
「型にハマったやり方やなくて、身体の声を聴きながら、自分なりのやり方でトレーニングや減量に挑戦してみました」

築本さんの減量期の食事

築本さんの減量期の食事

築本さんの減量期の食事
トレーニングを続ける中で、狙った筋肉に効かせられるようになった瞬間や、身体が変わったときの達成感も大きな喜びになっている。
「食べて、寝て、動く」を大切に
ボディメイクに取り組む女性トレーニーへのメッセージを求めると、こう答え、豪快な笑顔を見せた。
「無理せんと楽しく、病まんこと。しっかり食べて、しっかり寝て、しっかり動くことを大切にしてほしいです。トレーニングの楽しさや、身体が変わったときの達成感、いろんな成功体験を女性のみなさんにも味わってほしいです」
肉を扱う職人としての仕事にも、トレーニングにも、自分なりの方法で粘り強く向き合う築本さん。初出場でつかんだ優勝をきっかけに、さらに筋肉を追い求めていく。
【マッスルゲートアンチドーピング活動】
マッスルゲートはJBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)とアンチドーピング活動について連携を図って協力団体となり、独自にドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト大会である。
執筆者:久米大郎
都内の出版社で数学書の編集者として勤務。
ゴールドジムでトレーニングに励み、ボディビル競技に挑戦中。2024年マッスルゲート埼玉大会ボディビル65kg以下級3位、2025年東京ノービスボディビル選手権大会男子ボディビル55kg以下級2位。
競技者としての経験を生かし、筋トレ情報サイト「FITNESS LOVE」で取材・執筆を担当。
徳島県徳島市出身、神奈川県大和市在住。
取材・文:久米大郎 写真:岡暁










