巨人軍の若手のトレーニング指導をしているボディビル世界王者鈴木雅選手が、トレーニングをディープに、詳細に解き明かしていくこのコーナー。今回は「なかなか大きくならない」と悩む人が多い「三角筋」。フィジーク競技でも重要視されているこの部位を、前編、後編の2回にわたって解説します。
取材・文:藤本かずまさ 撮影:北岡一浩
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三角筋を構成する3つのヘッド
「肩のトレーニングは難しい」とよく言われます。それは肩関節の動きは複雑で、関与する筋肉の数も多く、ポイントを押さえながら動作をしないと負荷が逃げやすいからです。
三角筋のトレーニングは前部(フロントヘッド)、側部( サイドヘッド)、後部(リアヘッド)の3つに分けて考えます。それぞれの起始部は近い位置にあるのですが、筋肉の走行方向が違うため、一つの種目で前・中・後のすべての部位を刺激することができないからです。まず、その3つのヘッドが肩関節のどういう働きに関わっているかを整理してみましょう。
①三角筋前部
屈曲(前方に上腕を上げる)
水平屈曲(上腕を前方向へ水平に動かす)
②三角筋側部
外転(横方向に上腕を上げる)
③三角筋後部
伸展(後方に上腕を回す動作)
水平外転(上腕を外方向へ水平に動かす)
このように、それぞれの部位の働きに応じた種目を選ぶことで、三角筋全てを刺激することができます。一般的に肩の代表的な種目とされているバックプレスや、プレス系種目は、主に三角筋前部の種目ということも理解できます。
また、同じ種目でも肩関節の内旋、外旋によって効き方が変わってきます。サイドレイズの動作の説明で「小指を上げる」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。筋肉の走行方向から考えると、小指を上げた(上腕内旋、肩関節外転)状態でサイドレイズを行うと、初動でリアが働きます。フロントレイズも、少し内旋した状態で行うと、初動で側部に効きやすくなります。
三角筋を構成する3つのヘッドと、筋肉の走行方向、そして肩関節の内旋、外旋によって筋肉がどのように収縮・伸展するのかを把握することが肩のトレーニングのポイントになります。
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