腰痛を予防するため、ウエイトトレーニングの際にリフティングベルトを装着するトレーニーを多く見かけます。リフティングベルトは腹圧を高め、背骨を固定しやすくすることで、腰痛を予防するための効果的なツールの一つと言えます。しかし、もっと効果的で実用的な腰痛予防の方法があります。それは股関節のヒンジ動作をマスターすることです。
文:井上大輔 <NPO法人 日本ファンクショナルトレーニング協会>
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腰痛にならないためには股関節のヒンジ(ちょうつがい)を使おう!
股関節はデッドリフトやスクワットのエクササイズを行うときにヒンジの動作を行います。ヒンジとはドアのちょうつがいのことを言います。写真1−1のようにデッドリフトの際に股関節中心に上体がまっすぐの状態で倒れることを言います。
これは簡単なことのように思いますが、腰痛を患っている人はできていない場合が多く見られます。多くの人が写真1−2のような状態になりがちです。写真1−2のようになってしまう人は原因がいくつか挙げられます。一つは、股関節、特にハムストリングスが硬い場合、もう一つは骨盤の後方移動ができていない場合、最後は体幹が弱い場合です。写真1−2の姿勢になる人の大半は3つとも当てはまります。皆さんも一度鏡の前で試してみてはいかがでしょうか?
ヒンジが大切な理由
日常やスポーツではベルトを着用しないで、腰を守る必要があります。そのためには「腹腔内圧」を高めることが大切です。腹腔内圧は骨盤底筋と横隔膜が平行になる必要があります。つまり背骨がまっすぐになっていることが必要なのです。簡単な方法としては写真1 −1のように棒から体幹が離れないようにすることで腹腔内圧を高めるこれらの姿勢が可能になります。
そしてこの状態を維持することが大事で、股関節が硬いとヒンジの状態が保てず写真1 −2のような姿勢になり腰痛になってしまうのです。ヒンジ動作を行うことは腹圧を高めるために必要で、リフティングベルトなしでも腰痛になる可能性を低くすることが可能なのです。
日常やスポーツで必要な片足ヒンジのトレーニングを行おう。
再三記事に書いているように、日常生活やスポーツは片手片足で動作を行うことがほとんどです。したがって今回ご紹介するエクササイズも片足で行う「デッドリフト」になります。片足といってもいきなり片足になるのも難易度が高くなりますので、半片足の「スタッガードポジションでのルーマニアンデッドリフト(以下RDL)」になります。
RDL スタッガードポジションの効用
股関節の伸展力の強化
殿筋、ハムストリングス、体幹の強化ヒンジ動作の向上
RDL スタッガードポジションの行い方
両手にダンベルを持ち、足を前後に広げます。(写真2 −1)
体幹をまっすぐに保つことを意識しながら、殿部を後方に突き出すようにして、上体を倒していきます。体幹が保持できなくなる手前で止めて、再び上体を起こし、スタートポジションに戻ります。(写真2 −2)
リグレッション(原点回帰)と プログレッション(エクササイズの発展)
RDL スタッガードポジションのリグレッション
ダンベルRDL(写真3−1)
ダンベルを用いて通常の両足でのRDL を行います。注意点はお尻を後ろに突き出し、体幹をまっすぐに維持することです。
RDL スタッガードポジションのプログレッション
①ワンハンドダンベルRDL スタッガードポジション(写真3−2)
前方についている支持足の反対の手にダンベルを持ち、片方に重量がかかっている状態でバランスを取りながらRDL を行います。その際、骨盤が傾かないように注意して行います。
リフティングベルトは、高重量のエクササイズを行うときのみ、安全性を考えて装着することをお勧めします。もしそうでない場合は、腹圧を高めることを意識し、天然のコルセットをつける方が良いと思います。また、ヒンジ動作を行うことで体幹を強化し、股関節を柔らかく使うことで、障害予防やパフォーマンス向上にも効果を発揮します。皆さんもヒンジ動作が行えているか、チェックしてみてはいかがでしょうか?
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井上 大輔(いのうえ・だいすけ)
兵庫県神戸市出身。滋慶学園大阪ハイテクノロジー専門学校スポーツ科学科トレーニング理論実習講師/整体&パーソナルトレーニングジムを経営(兵庫県明石市)/ NSCACSCS/NPO 法人JFTA 理事長/17歳よりトレーニング開始。大学卒業後、スポーツクラブに就職、スポーツコンサルティング事業にかかわる。同時に操整体トレーナー学院学長松下邦義氏に師事、操整体について学ぶ。/2006年NBBF 全日本選手権 第6位。
NPO法人 日本ファンクショナルトレーニング協会 TEL:078-707-3111