「呼吸」とトレーニングの関係と、その活用法を解説します。無関係のように思えますが、しっかりと呼吸をすることで、体づくりにとってのさまざまなメリットを得られます。本日は「呼吸」の重要性と「胸郭の動きを調整するストレッチ」をご紹介します。
呼吸の役割
「呼吸」にはさまざまな役割があります。もちろんそれは生きるための手段であり、他にも中枢神経の活性化(脳のニューロンの活性化)、自律神経のコントロール、血圧の急な上昇の緩和などなど。中枢神経が活性化すると酸素が脳に行き渡るので脳が活性化します。神経系が活性化すると、挙上重量が上がっていきます。自律神経のコントロール、これは交感神経と副交感神経のバランスですが、交感神経が優位なときはアドレナリンを上げて脂肪燃焼を促したり、気持ちや体が活動的になったりします。副交感神経が優位なときは、体は回復へと向かいます。また、例えば興奮した状態でスクワットをするなど、より高重量を扱うという点ではいいかもしれませんが、筋肉の発達にはあまり結びつきません。落ちついて動作をしないと、主導筋に負荷は乗ってきません。しっかりと呼吸ができるということは、体づくりにとってメリットがあります。
呼吸器である肺は胸郭で覆われています。胸郭は胸骨、肋骨などで構成され、それらは広背筋や腹直筋などアウターの筋肉ともつながっていますが、呼吸のときに働く筋肉は肋骨の中にある内・外肋間筋、それを補助して働く胸鎖乳突筋、斜角筋、さらに呼吸筋として横隔膜などがあります。呼吸で横隔膜をコントロールできるということは、骨盤底筋群も働きやすくなるということになります。また肋骨の開閉は腹直筋、広背筋、大胸筋などにも密接に関わっており、胸郭は骨盤と並ぶ体幹部の軸と言えます。メカニズムとしては、息を吐くと横隔膜が上がって肋骨が閉まり、腹圧をかけやすくなります。息を吸うと横隔膜が下がって肋骨が開き、腹圧はかけづらくなりますが、各筋をストレッチしやすくなります。肋骨は、閉めるだけではなく、開閉の両方をできないといけません。「吐く」「吸う」によってコントロールすることが大切です。呼吸の改善方法も紹介します。動作としてはかなり地味ですが、効果は実感できると思います。ぜひ日頃のトレーニングに活用してください。
肋骨の開閉をコントロールするための呼吸の改善方法
腰幅くらいの足幅で四つん這いになる。顔は下に向ける。両手は肩の真下にくる位置に。その状態から息を「ハー」と長く吐き、背中を丸めながら肋骨を閉めていく。できれば息は吐き切るように。吸うときは、鼻から軽く吸う感じで。肋骨は腹筋の中央部に近い部分、みぞおち周辺の部分、腹直筋の上1枚目の近くの順で閉めていき、これを3回繰り返す。その次に左右の肋骨を3回ずつ閉める。
肋骨を閉める順番。「息を吐きながら背中を丸める」というイメージでトレーニング前などに行うと効果を実感できるはずだ。
こちらも呼吸の改善方法。仰向けに寝て股関節の角度を100 〜110 度、足首は背屈(足首を立てる)。こうすることで股関節の筋肉が可動しやくなり、腹圧をかけやすくなる。トレーニングをやっている人は背中が厚く、そのままマットに寝るとアゴが上がり呼吸しづらくなるため、頭の下にタオルなどを敷く。その状態で「ハー」と息を吐き、四つん這い時と同様の順番で肋骨を閉めていく。
地味だけど実感できる! 胸郭の動きを調整するストレッチ
ここで紹介するのは筋の連鎖のストレッチです。すごく地味ですが、実践すると胸郭や肩甲骨の動きがスムーズになることを実感できます。また、胸郭と肩関節は本来は個別に動かせないといけません。しかし、胸郭と肩関節が一緒に動いてしまう、もしくは胸郭を動かさないと肩関節が動かないという人は結構多いもの。肋骨が開いていると、肩関節の動きに胸郭がついていき、一緒に動いてしまいます。これでは肩のトレーニングなどでフィニッシュで負荷が抜けてしまいます。肋骨を閉めた状態で肩関節を動かすことで、こういったことも改善されます。トレーニングにいい影響をもたらしますので、気持ちをリラックスさせた状態で行ってみてください。
いかがでしょうか?呼吸を改善することでトレーニング効果が大きく変わります。是非実践してみてください。
鈴木雅(すずき・まさし)
1980 年12月4 日生まれ 福島県出身。
2004 年にボディビルコンテストに初出場。翌2005 年、デビュー2年目にして東京選手権大会で優勝。2009 年ワールドゲームズボディビル80㎏級3 位。2010 年から日本選手権で優勝を重ね、2018 年に9 連覇を達成。2016 年にはアーノルドクラシック・アマチュア選手権80㎏級、世界選手権80㎏級と2 つの世界大会でも優勝を果たした。
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