“戦慄のくびれ”をキャッチフレーズにK-1ラウンドガールとしても活躍したパーソナルトレーナーの柳本絵美さん。代名詞であるくびれは、「削る、減らす、絞る」ではなく、「くびれができる場所の確保」が大前提。ウエストまわりが縮んで、くびれる場所がないという人、必見!
昨シーズンはパーソナルトレーナーの仕事と並行して、2年半ぶりにボディコンテストに復帰することを決めました。復帰の理由は昨年4月に30歳という女性としての節目の年を迎え、自分のなりたい身体も少しずつ変化してきたから。そして、やはりコロナ禍も私にとっては大きな契機になりました。
じつは、コロナ感染拡大の3カ月後に適応障害になってしまったんです。ジムもお休みでお客様に何もしてあげられず、私自身も運動ができない。食事も家のそばで買ったものを母と食べる毎日。そんな出口が見えない中で自分の存在意義が分からなくなってしまったんですね。
体重も6㎏増と、しっかりコロナ太りも経験し、改めて感じたのが「日々トレーニングをして健康に暮らす」ことの大切さと愛おしさ。少しずつ以前の生活を取り戻し、またいろいろなことに希望を持ち始めたタイミングで、もう一度自分の今なりたい身体で大会に挑戦してみようと思うようになったのです。
これまでは理想としている砂時計のような体形を目指し、また上半身が細いというコンプレックスを払拭すべく筋量を求めるトレーニングがメインでした。デッドリフトやフリーのスクワットでも重さ重視。ただ、私はもともと側弯症で胸椎がS字に曲がりやすく、重さを持つたびに胸椎が縮んで背中に痛みが出ていました。それでも、より重いウエイトをと頑張っていたんですよね。
でも、いくら筋肉を大きくしたいからといって痛みを押してトレーニングするのは、お客様に指導する立場としても違うんじゃないかと。自分自身もコロナ禍を経験したことで痛みや違和感なく健康に過ごしたいなと思うようになり、セルフケアや今回ご紹介しているコンディショニングをしてからトレーニングに入ることを重視するようになりました。
このコンディショニングは私が勤める『LOWMEL(ローメル)』のみんなと意見交換しながら生まれたメソッドです。コロナ禍で誰もが心身の疲れを感じているなか、どんなアプローチが健康で美しい身体につながるだろうと考え、肋骨や胸椎などの「胸郭」の柔軟性や「呼吸」にフォーカスするという答えにたどり着きました。
胸郭は可動性が高いので、曲げたりねじったりと3Dで動かすことで呼吸も深く入ります。その結果、自律神経も整うのでPMSの改善やストレスの軽減にもつながっていきます。しかも、肋骨と骨盤の距離が開くことによって「くびれ」もできやすくなる。これこそみんなが求めていたものじゃん!と(笑)。
私のところには、くびれを目的にたくさんの方がいらっしゃいますが、肩まわりなどの上半身と下半身のバランスを見たときに、お腹だけが大きいと感じる方にはアウター先導ではなくインナーをしっかり使うことをお勧めしています。硬くなっているアウターの筋肉はゆるめたり、ほぐしてあげたりするべきで、「とにかく収縮させる」というのは近道ではないかなと思っています。
インナーを鍛えるには低重量高回数のトレーニングが必要ですが、そこで重要なのが、やはり呼吸です。私たちは無意識のうちに1日2万回も呼吸しています。トレーニングならヤバいくらいの高回数(笑)。つまり呼吸の質を高めることで、意識していなくても1日2万回「くびれトレーニング」ができることになるわけです。くびれを作る種目としてSNSではサイドベントやシットアップがよく知られています。私もネット検索を信じて、2017年のベストボディ・ジャパンに向けては15㎏くらいのウエイトを持ってサイドベントを必死にやっていました。そうしたらウエストが太くなり、腕は逆に細くなっていき……。
目指す身体に合わないトレーニングをやってしまったんですね。サイドベントもシットアップも目的によってはもちろん間違いではないけれど、くびれを目指すならより早く効率的にできることがあるよということは、これからも伝えていきたいと思っています。
トレーニングや食事に関して私がもう一つ気をつけているのが、「ゼロか100か」でやらないこと。やると決めたらとことんやって、イヤになったらやめるという振れ幅が激しくなると、自己嫌悪に陥ってしまうんですよね。
私は最近、トレーニングの一環で新たにポールダンスを始めたのですが、トレーニングや食事、趣味など何かに挑戦するたびに楽しさを感じ、自分を好きになれるように持っていけると、自分でどんどん幸せを作っていくことができて無理のない食習慣、運動習慣になっていくと思います。
取材・文:藤村幸代 撮影:中原義史 (初出:Woman’sSHAPE Vol.24)