12月10日（日）、埼玉・三郷市文化会館で開催された今シーズン決勝大会『Super Body Contest（SBC）2023 FINAL』では、モノキニの水着で競う「SBC MONOKINI」部門と、SBCの中でも筋量が求められる「SBC」部門、あるいはSBC部門より細身のラインが基準の「SBC TREND」部門とSBC部門など、２つのカテゴリーに挑戦する選手も多かった。吉岡裕恵（よしおか・ひろえ/48）さんもその一人だが、ダブルではなくトリプル。実に3部門にエントリーしたのだ。
5年前は体重80㎏オーバー
着替え時間の制約などもあり難しいチャレンジだが、吉岡さんはSBCとSBC TRENDのビキニ競技2部門に加え、ロングドレスで競う「SBC MERMAID」にも出場。入賞は果たせなかったものの、全ステージを通して笑顔を絶やさず、その表情やパフォーマンスからはステージに立つ喜びが伝わってきた。
「笑顔がちゃんと出ていましたか？そう言ってもらえるのが一番嬉しいです！今日のステージに立つまでいっぱい泣いたので、今、笑顔でいられることが本当に幸せです」
吉岡さんがトレーニングを始めたのは5年前。きっかけは、やはり「痩せたい」だった。
「昔から食べてはダイエット、ダイエットしてはまた食べて……を繰り返し、気づけば80㎏オーバー。これはもうトレーニングしかないと、まずは苦しい自重の筋トレから始めて、ウエイトトレーニングへと移っていきました」
順調に減量が進み、次の目標を設定すべく選んだのがボディコンテストへの出場だ。ただ、人前に出るにあたっては悩みもあった。
「子どもの頃から猫背がひどくて、それがコンプレックスだとも気づかないくらい“自分の当たり前”になっていました。トレーニングをきっかけに指摘を受け、かなり矯正していただきましたが、意識しなければ丸まってしまう。ステージングの指導をしていただいたチエ先生（木下智愛SBCヘッドコーチ兼ディレクター）も、最初は私の姿勢の悪さにビックリされたと思います」
初めてのビキニ姿はブヨブヨお腹
コンテスト初挑戦は、シーズン開幕戦となる2023年4月の千葉大会。SBC部門の40～49歳クラスで4位、TREND部門の40歳以上クラスで5位の結果だったが、大会後に自分のビキニ姿を写真で見てショックを受けた。
「背中が丸まると、自然にお腹も丸まってしまいますよね。それに大幅な減量もあってお腹がブヨブヨにたるんでいたんです」
それでも、ステージに慣れるために場数を踏みたい、そして一つでも順位を上げて成長の証にしたいと5月の静岡大会、8月の東京大会と果敢に挑戦を続けた。
「3大会は何とか出場しましたが、10月の愛知大会は肌の露出が少ないロングドレスのマーメイド部門だけにエントリーしました。こんなブヨブヨのお腹で出ている人はいないし、コンプレックスのお腹をさらけ出すのは自分も苦しい。だから12月のファイナルもビキニは絶対に着ないと決めました」
その固い決心を変え、3部門エントリーにチャレンジしたのは、周囲の励ましがあったからだ。
再びビキニを着る決意
「コンテストに向けたレッスンでは、あまりに自分がうまくできずに他の出場者の方の前でも泣いてしまうこともたくさんありました。でも、去年のファイナリストなど、私から見たら憧れの先輩である皆さんが励ましてくれて。だから、私もみんなと一緒に頑張りたい、一緒に同じ舞台に立ちたいと思えたし、ファイナルでは自分の苦手な部分をちゃんと克服するためにもビキニで出ようと決めました」
迎えたファイナル当日。緊張から引きつりそうな表情を笑顔に変えられたのは、憧れの茶屋葵選手（今大会SBC部門総合優勝）が辛いときにいつも送ってくれた「裕恵さんなら大丈夫」の言葉、そして、木下ディレクターからの「せっかく自分が輝けるステージ。笑顔で立たないと意味がないよ！」というアドバイスが思い出されたからだ。
「私はふだんからマイナス思考で笑顔が苦手でした。でも、チエ先生がおっしゃるように、笑顔ってステージの自分の印象すべてを決めるんですよね。私はポージングもボディメイクもまだまだだけど、笑顔を作ることならできる。だったら、今日は死んでも笑おうって。大げさですけど、本当にそんな気持ちでステージに立ちました」
コンプレックスやマイナス思考を払拭してくれたトレーニングやSBCの舞台にとても感謝しているという吉岡さんは、今日も販売の仕事を終えた足でジムへ向かう。「努力は明日の笑顔を作り、チャレンジは未来の自分を作る」。経験から得た言葉が何より今日の自分にパワーをくれる。
取材：藤村幸代 撮影：上村倫代
