「筋トレを始める前は体重50kgちょっとの痩せ型で、喫煙もしており飲酒の機会も多く、泥酔して車上荒らしに間違われ警察沙汰になるなど、健康とは程遠い生活でした。朝ごはんを食べずに仕事に向かい、夕食もカップ麺で過ごすなど自己管理を全くしておらず、気まぐれでランニングや腕立てや腹筋をするも続かず、といった無目的の毎日を過ごしていました」
瀬々敬仁(せせ・たかひと/32)さんは、そうした生活からくる漠然とした自信のなさや不健康さに危機感を覚え、ジム通いを決意したという。
月に25日のジム通い! 筋トレの楽しさへの目覚め
「ジムには宅トレでは味わえない刺激がありました。豊富なマシン、バリエーション豊かなメニュー、すごい身体の人達が懸命にトレーニングをする姿、日々上達していく自分。あっという間にのめり込んで行きました。
最初はBIG3やフリーウエイトを中心に、効率よく全身を動かせるメニューをセレクトし、そこからジムにいる大きい人やYouTube、トレーニングマガジンや月刊ボディビルディングなどを参考にどんどん知識を増やしていきました。とにかく行ける日にはすべて通い、たくさん食べて、がむしゃらにバルクアップを目指しました」
継続により、瀬々さんの54kgの華奢な身体はみるみる変化をみせていく。細かった腕は逞しく肉付き、薄い身体に努力が厚みとなって重なっていった。
はじめての減量 大会の出場を通してさらに進化
「トレーニングを始めて2年が経つころ、周囲から『大会に出てみたら』と勧められるようになりました。最初は流されるようなかたちで出場したわけですが、実際に体験してみて悔しさや喜びを感じ、努力に順位がついたことでより明確なボディメイクの指標になりました」
「減量も試行錯誤を繰り返すなかで、加工品ではなく卵・胸肉・牛肉・青魚から栄養を得ること、できるだけ毎日同じ栄養バランスをとること、たまにはお菓子やスイーツで息抜きをすること、動きながら計画的に絞っていくことなど、出場を経るごとにスキルが身についていきました。我慢できずに食べてしまったあとは、何事もなかったかのように普段の食事に戻すこと、体重を気にしすぎず頑張りすぎず、穏やかな気持ちで取り組むことを意識しています」
こうして体重54kg・体脂肪率15%の面影は消え、64kg・3%の強靭な肉体へと進化を遂げた。
※体脂肪率は市販の体組成計によるものです。
環境変化に大切なのは“意地”と“割り切り”の両立
「現在までに5大会を経験し、そのうち3回が2位という結果なので、次こそは優勝を獲りたいです。今は結婚と子どもの誕生を経て生活環境がガラリと変わり、好きな時間に好きなだけトレーニングできていた独身時代から、朝4時半起きで早朝に1時間程度という隙間を縫うようなスケジュールに変わりましたが、『やり始めたからにはやり続けるしかない』という意地と、逆にできないときは『趣味でやっていること、家庭が第一優先』と、すっぱりと割り切るという気持ちの両立で取り組んでいます。むしろ、時間の確保や食事など奥さんの協力に支えられて継続できているので、本当に日々感謝しています」
教わる側から伝える側へ
「努力して身体が変わるという成果で、自分に自信が持てるようになりました。テストステロンの向上からか、以前より仕事でもプライベートでも活力が生まれ、ポジティブに物事を考えられるようになりました。今後は、自分が得た知識や技術をボディメイクやダイエットに悩む人達に還元していきたいという気持ちがあります」
「なぜ身体が変わらないのか、食事管理が続かないのかなど、様々な問題を共に解決できるトレーナーになりたいです。現在、理学療法士として勤めるかたわら、個人的に教えてほしいと来られる方をサポートしていて、将来的には本格的にトレーナーとして兼務できるようになるのが夢です。そのためにもまだまだ色んなことを学び、経験を詰み、様々な人との交流を大切にしていきます」
取材:にしかわ花 写真提供:瀬々敬仁