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「激痛でタオルを噛みちぎってしまう」安井友梨が経験した壮絶な治療の日々【特別手記#2】

安井友梨選手(撮影:Igor & Jakub)昨年、左足基節骨粉砕骨折という大ケガに見舞われながらも奇跡の復活を果たし、国際大会で快挙となる優勝を成し遂げた安井友梨選手。その舞台裏には、「激痛でタオルを嚙みちぎってしまうほど」の壮絶な治療との戦いがあった。激痛と向き合う中で、安井選手はSNSで自身の状況を発信。その勇気ある判断が、苦境に立たされた安井選手を救った。安井選手自らが綴る、奇跡のドラマの舞台裏。(発売中の雑誌『月刊ボディビルディング2024年3月号』から一部抜粋)

【写真】国内フィットモデル戦で見せた奇跡のドレス&スイムスーツ姿

治療の日々

その日から壮絶な治療との戦いが始まりました。

「やれることは、全部やります。なんでもやらせてください」

鬼気迫る私の熱意に先生も応えてくださり、PRP療法という再生医療などをその日から行っていくことになりました。「何でもやる」と言ったものの、治療のあまりの激痛にタオルを噛みちぎってしまうほどでした。人生初の激痛と向き合う日々。こんな痛いことが、世の中にはあるのかというくらい。

大会に出場出来ない心の痛みの方が、もっと痛い。だからなんだって乗り越えられるはずだ。なぜそこまで今年にこだわるのか? それは私の年齢にあります。そして沢山の方々に応援していただいている以上、私の不注意の怪我では諦められませんでした。

振り返れば、2015年オールジャパンで初優勝してから今日まで8年間という長い間わたり、JBBF、業界関係者の皆さま、選手の皆さま、そして、応援してくださる皆さまのおかげで、”ビキニ選手”安井友梨としてだけでなく、人としても、大変未熟だった私をここまで育てていただきました。皆さまには、言葉では言い表せないほど、心から感謝しております。

どこにでもいるぽっちゃりOLだった私が、30歳をすぎてからビキニフィットネスと出会い、世界一を目指させていただいております。9年間ビキニフィットネスをやらせていただき、オールジャパン8連覇という決して自分一人では手の届かなかったところまで来られたのも、応援してくださる皆さまのおかげです。ビキニ選手として私が唯一自慢できることと言えば、自分自身がやってきたどんなことでもなく、私の”世界一になるという夢”をかなえようと応援してくださる皆さまとのすばらしい出会いだけなんです。そんな想いが私を突き動かしていました。

骨折から2日後にはトレーニングを再開しました。ところが、義足スリッパを履いて、固定と包帯でぐるぐるになった足は、腫れあがり、歩くだけで激痛。正直言って、トレーニングどころではありません。強化してきた下半身のトレーニング種目は、全滅しました。片足種目、フリーウェイト種目、特に強化していたフロントスクワット、クリーン&ジャーク、ブルガリアンスクワット、ジャンピングスクワット、ランジ種目、なにもかもが出来なくなってしまったのです。

電車に乗ることも避けなければならず、全て移動はタクシー移動になり、1日の歩数計は100歩程度でした。それまでは15000歩以上歩いていたのに……。

また骨折してから、眠れなくなってしまいました。24時間痛みが続き、まるで足に心臓があるかのようにずきんずきんと痛みが続いていく。寝ても覚めても痛みが襲ってきました。安静にもしていられません。

トレーニングがまともに出来なくなり、食事療法も相まって、筋肉が驚くほどみるみるうちに減っていき、大会に出られないかもしれないという焦りが日増しに募りました。行き場のないもやもやした気持ちは、誰にも打ち明けることは出来ませんでした。タクシーの移動中に涙が溢れて嗚咽してしまう日々だったのです。

私は一人じゃない

SNSで骨折したことを公開すると決めました。このままずるずる知れ渡っていくなら、自分の口で直接皆さまにお伝えすべきだと。勇気を出して、ありのままの私の力ないトレーニング動画を公開しました。信じられない反響でした。何千というメッセージが届きました。一つひとつ全て目を通してみると、涙が止まらなかったです。一生分の涙が出たのかと思うくらい。

私はこんなに沢山の方々に応援していただいているのかと……。9年間ビキニ選手をやってきて初めてなぐらい、こんなにも激励をいただいたことに驚きました。結果として、このたくさんの激励に私は救われたのです。

私の不注意から8月16日に左足親指を粉砕骨折してしまい、”世界一”になるどころか、ヒールを履いてステージに上がることだけでも”奇跡”だという状況にしてしまい、それでもこんなに沢山の方々がメッセージをくださり、心配してくださり、沢山の治療法について、食べ物やさまざまなアイデアを教えてくださった。全て紙に書き出し、一つひとつ試してみることに。やれること全部やらないと、絶対に後悔してしまう。全部やってダメなら、諦めがつくから。

トイレに行くのも、お風呂に入るのも、台所に行くのも、荷物を運ぶのも、歩くのも、なにもかもが思うようにはいかない。一人では出来ないことに、思うように動かない身体、迫る大会の日。もう先のことを考えるべきではない。とにかく今、今日をどう過ごすか、乗り越えていくかだけで、いっぱいいっぱいでした。

今日のトレーニングや治療といかに向き合って乗り越えられるのか。今まで当たり前にトレーニングをしていたことが、どれだけ恵まれていたのかと。

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文:安井友梨 大会写真:中島康介、Igor & Jakub

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