コンテスト

メンズフィジーク世界ジュニア王者がゴールドジムジャパンカップに出る理由[インタビュー全文掲載]

昨年度のオールジャパン選手権メンズフィジーク23歳未満172㎝超級、そして世界ジュニア選手権メンズフィジーク178㎝以下級を制した穴見一佐選手が11月29日に開催されるゴールドジムジャパンカップへの出場を明言。世界選手権制覇の軌跡とともに、あえて当大会に臨むその理由を聞いた。
取材:藤本かずまさ 撮影:北岡一浩 取材日:2020年8月28日

――トレーニングはどのようなルーティンで進めているのですか。
穴見 「胸上部」「胸中部・下部」「肩」「背中上部」「背中下部」「脚」の6分割です。「腕」と「腹筋」はサブ種目で回してます。
――今日は肩のトレーニングを拝見しました。チーティングを使わず、ストリクトなフォームで行っている印象を受けました。

穴見 メンズフィジークは筋肉の大きさというよりもきれいさを競う競技であることを考えると、チーティングを使って高重量を扱うよりも、時間はかかりますが丁寧にトレーニングをして積み上げていくスタイルのほうがいいのではと思いました。一昨年のオフから今のスタイルのトレーニングに切り替えて、質感やコンディションがよくなり、去年はいい結果が残せました。
――高校時代は陸上でやり投げをやっていたそうですね。補助種目でクイックリフト系は?
穴見 やっていました。
――当初はチーティングを使うクセがあったのでは?
穴見 僕はトレーニング歴は5年ほどなのですが、最初の2年間は反動を使って重たいものを挙げるようにしていました。そのころはトレーニングが下手でした。でも、これはメンズフィジークでは武器にもなるのですが、僕は関節が細く、細かいケガも多かったです。
――ですが、ダンベルショルダープレスのメインセットは95ポンド(約43㎏)で組んでいました。
穴見 最近はトレーニング技術が上達してきたので、少しチーティングを使っても(刺激を)入れられるようにもなってきました。だから、「扱える重量は扱う」ようにしています。
――穴見選手の身体の特徴のひとつにウエストの細さが挙げられます。腹圧をかけないような工夫もしているのですか。
穴見 肋骨を締めてトレーニングをするようにしています。股関節を少し内旋させて、重心は母指球中心。その状態で肋骨を締めてやっています。僕はトレーニングではベルトは一切使わないんです。床引きのデッドリフトでもベルトは使いません。
――ベルトを使わない理由は?
穴見 ベルトがないとトレーニングができない、となるのが嫌だったんです。ベルトを使わずにトレーニングを続けてきて、その中で腹圧のかけ方を習得してきました。
――それでウエストが太くなってしまうことは?
穴見 僕の感覚なんですが、ウエストの太さは骨盤の大きさと肋骨の開き具合で決まってくると思います。肋骨を締めてトレーニングをしていれば、ウエストは太くはならないと思っています。
――自分の身体の特徴がメンズフィジークに向いているという感覚は以前からあったのですか?
穴見 コンテストに出ようと思ったのは、JBBFのメンズフィジークの大会をSNSで見たのがきっかけでした。2015年の大会だったと思います。当時はベストボディ・ジャパンを経てメンズフィジークに出場する選手が多かったので、僕も同じ道を行こうと思いました。ベストボディの出場者の中では肩幅が広くてウエストが細いほうでした。メンズフィジークに向いているとは、他の選手たちからも言われていました。
――メンズフィジークのデビュー戦は?
穴見 18年6月のキング・オブ・フィジーク(以下、キング)です。自分の力をはかるために出場したのですが、10位という結果で終わってしまいました。筋量不足で、ポージングも下手でした。
――そこからどのようにして改善していったのですか。
穴見 ステージ慣れするために同じ年に福岡オープンと西日本選手権に出場しました。実際にステージに立ってみないと分からないことってあるんです。
――ポージングはどのようにして修正していったのでしょう。
穴見 鏡のない場所で動画を撮って、それを見ながら微調整していきました。それを実際に大会に出て試し、また動画を見て課題を修正する、その繰り返しです。18年は研究に充てた年でした。

――その取り組みが19年に開花しました。
穴見 トレーニング方法を変えたこともあって、身体も変化していきました。キングではリベンジを果たすことができました。そこで自信がついて、ジュニアで世界を目指そうと思ったんですが…。
――ですが?
穴見 オールジャパンの初日、176㎝超級で予選落ちしたんです。そこで一気に自信を失いました。
――昨年のオールジャパンは2日間に渡って開催されて、穴見選手が出場したジュニアのカテゴリーは2日目に行われました。
穴見 もう開き直りました。初日で惨敗したので、気負わずにステージを楽しもうと思いました。
――2日目のコンディションは?
穴見 初日と変わらなかったです。手前味噌になってしまいますが、僕はコンディションの調整は得意なんです。ピークを外すことはありません。
――それはどうやって身につけたのですか。
穴見 僕はベストボディに2年間で8大会ほど出ているんです。同世代の選手の中では出場回数は最も多くて、その経験が生かされています。どんなものをどれくらい食べたら身体はこうなる、というのが感覚的に分かるんです。毎回同じ量の炭水化物を食べても、毎回同じ反応になるとは限りません。でも、経験を積んでいくと、そのときの感覚で「もうちょっと食べたほうがいいな」というのが分かるようになるんです。
――ジュニアでは優勝しました。
穴見 トップ6にも入れないだろうと思っていたので、自分にとっては意外な結果でした。
――初日が予選落ちで、2日目にジュニアで優勝して、そして世界ジュニアでも優勝するというのも、すごい流れです。
穴見 18年のキング、19年のオールジャパン初日で悔しい思いをしたのがよかったんだと思います。自分がテングにならないように、いいタイミングで鼻を折られると言いますか。オールジャパンのときは1日で気持ちを切り替えなければいけなかったので、メンタルの強さは養われたと思います。世界大会ではスケジュール通りに進行されないことが多々あるんですが、動じることはなかったです。
――世界チャンピオンになって、今年は選手として注目の年になるはずでした。
穴見 当初はオールジャパンの176㎝超級のトップ6と世界ジュニアの2連覇を狙っていました。年齢的に今年がジュニアに出られる最後の年なんです。
――ところが、今年のオールジャパンは中止になりました。そして現在、穴見選手が出場を明言しているのが11月のゴールドジムジャパンカップです。
穴見 僕はJBBFも好きだし、ゴールドジムも好きなんです。今年は選手であるのと同時に、大会を盛り上げる役目も担いたいと思っています。多くの選手に出てもらいたいので、SNSでも積極的に発信するようにしています。
――出場するカテゴリーは?
穴見 メンズフィジークの176㎝超級です。マッスルゲートもそうですが、初めて大会に出る方もいると思うので、僕なりにコンテストに出場する楽しさをお伝えできればと思っています。
――11月21日のマッスルゲート東京大会にも出場する?
穴見 はい、そこではボディビルとメンズフィジーク、どちらに出るか考えているのですが、両方に出ようかなと思っています。ボディビルにも挑戦したい気持ちがあって、いい機会だと思っています。
――今年は社会人1年目になります。トレーニングへの向き合い方が変わった部分はありますか。
穴見 仕事を言い訳にしたくないので、社会人になってもトレーニングの内容や頻度は学生のころと変えないようにしています。
――減量にはいつごろから入るのですか?
穴見 10月に入って始めようと思っています。
――減量幅は?
穴見 6㎏です。
――1週間で1㎏のペースですね。結構なハイペースです。
穴見 以前は4週間だったんですが、去年からは6週間取るようにしました。そうすることでかなり楽に落とせるようになりました。普段はジャンクなものを食べているので、そういうものを食べなくなるだけでも落ちていくんです。減量期間中も空腹は作らず、むしろ積極的に食べるようにしています。そうするようになって質感がよくなりました。
――現在、トレーニングにおける課題は何でしょう。
穴見 自分では弱点部位はないと思っています。だから、全ての部位が強くもあり、裏を返せば全ての部位が弱くもある。どこかの部位が強いということは…。
――それ以外のどこかの部位が弱いということでもあります。
穴見 そうなんです。だから、全ての部位が課題ということになります。オールジャパンのトップ選手は、みんなそうだと思います。バランスよく、全ての部位が一流になることを目指しています。

穴見一佐(あなみ・かずさ)
1997 年8月27 日生まれ、福岡県福岡市出身。身長177㎝、体重72kg(オン)78kg(オフ)。大会デビュー戦は2016 年のベストボディ・ジャパン・カレッジ部門。2018 年よりJBBFメンズフィジークで活動。

マッスルゲート東京
2020年11月21日(土)江戸川区総合文化センター

ゴールドジムジャパンカップ
2020年11月29日(日)品川区立総合区民会館(きゅりあん)

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佐藤奈々子選手
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