大釜かおり(おおがま・かおり/55)さんの人生は、スポーツへの情熱と逆境を乗り越える力強さに満ちている。
「10代・20代のころはスキー、インラインスケート、水上スキーなどアクティブなスポーツに没頭し、身体を動かすことが何より大好きでした。でも、30代で結婚を機に運動の機会が減り、筋肉量が落ちたことで変形性股関節症を発症してしまい、6年間の杖をつく生活を送った末、両股関節を人工関節に置換する手術を受けました。その後も1年は杖を手放せませんでした」
【写真】大釜かおりさんの「薄い背中」から「バキバキ背筋」へのビフォーアフター
現在、ボディコンテスト『ベストボディ・ジャパン』(以下、BBJ)において、最も筋肉量を必要とするカテゴリーのフィットネスモデル部門で活躍する大釜さんが持つ過去は、その身体から想像もできない過酷なものだった。
「その後も、両肩、両手の親指、膝と全身の関節に次々と不調が現れました。さらにヘルニアを発症したときに、『腹筋や背筋を落とすとさらに悪化する恐れがある』と言われました。これ以上筋肉を減らすわけにはいかないと危機感を抱き、トレーニングに打ち込むことを決意しました」
不調を抱えた身体を鍛えるためにファンクショナルトレーニングを学び、トレーナーの資格を取得するまでに至った。
「学びを深めるなかで、身体に不具合があっても正しいトレーニングを続ければ機能の衰えを防ぐだけでなく、筋肥大も実現できるという確信を持ちました。してはいけない動きと可能な動きを解剖学と感覚を通じて学び、自分にできるトレーニングを模索しました」
そして、成長過程の実感のためBBJに挑戦。2019年、トレーニングを初めて一年半で出場したコンテスト初戦の身体については、大釜さんは「身体全体が萎み、薄くなっていた」と思い返す。しかし、そこから驚異的な努力で進化を遂げていく。彼女の肉体とエネルギッシュなオーラは人々を魅了し、2023年には同大会全国頂上戦である『日本大会』で自己最高順位の4位まで登った。また、大釜さんのシグネチャーとなった「ゴリポーズ」という独特のポージングは、団体内で流行するほどの影響力を発揮した。
「昨年は選手としての活動を自粛し、他団体で審査員としての活動に専念しました。でも、やはりステージを見ているうちに、自分もあそこに立ちたいという思いが強くなりました。いつでもステージに立てるように肉体は作り込んできたので、今年は選手としてまた全力を尽くしたいと思います」
さらに、私生活では主婦からトレーナーとなった彼女は「誰よりも人の痛みが分かるパートナー」であることも目標とする。
「身体の不調を抱えながら、それを克服するためにトレーニングをする方はとても多いです。自分自身が身をもって経験してきたことだからこそわかる痛みや苦しみを分かち合い、助けられるトレーナーとして頑張っていきたいです。ただの主婦だった私が、今はお客様の身体や心に寄り添い、サポートできる存在になれていることが嬉しいです」
「私、死ぬ前日までトレーニングするねん」は大釜さんの口癖だ。大釜さんの年齢や身体の制約を超えて挑戦し続ける姿は、多くの人に勇気と希望を与えている。
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取材:にしかわ花 写真提供:大釜かおり
『IRONMAN』『FITNESS LOVE』『月刊ボディビルディング』寄稿。広告・コピーライティング・SNS運用。ジュラシックアカデミーでボディメイクに奮闘している。
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