パワーリフティング フィットネス

足指の骨折に危機感を抱き筋トレ開始した55歳パワーリフター 今では年齢別4つの日本記録保持者に

身長151cm。その小柄な体型からは想像できないほど、パワフルな試技を見せてくれた女性は森由美(もり・ゆみ/55)さんだ。

1月19日(日)に兵庫県の明石で開催された、女性限定のパワーリフティングイベント『第4回ストロングガールズ』で森さんは135kgのバーベルを引いて、デッドリフトを成功させた。スクワット120kg、ベンチプレス82.5kgも成功させ、トータル重量は337.5kgを記録。

【写真】年齢を感じさせないパワフルな試技を見せる森由美さん

「パワーリフティングって本当に楽しいんです!」とキラキラした笑顔で話してくれた森さんの競技人生は今から8年前、47歳のときだった。

筋トレの入口は足の指を骨折したことから

当時、寸胴でぽっこりお腹というTHEおばちゃん体型だった森さん。ちょっとした段差に足を引っ掛け、つまずいて足の指を骨折したことにショックを受けた。介護職員として施設で働き、利用者さんの筋力低下を身近に見ていたことからも「筋肉を失うと車いす生活になるかも」と危機感を覚えたそうだ。

「とにかく筋肉をつけなきゃ!とジムに行くようになりました。身体中を鍛えれば筋肉がつくだろうと、ジムにあるマシンを全部やっていたんです(笑)」

鍛えるうちにBIG3をYouTubeで知り、パワーリフティングの存在も知るようになった。順調に重量が伸びていたため、自分の実力を知るために2021年の地元・愛媛県大会に出場。競技者はほとんど男性だったことに驚いたが、それ以上に声援の熱量に感動したという。

「若い女の子でもないのにすごく応援してくれて。うれしくなっちゃって、もっと強くなりたい!って思って今があるんです」と、ふふふと笑う。

死ぬまで自分の足で生活するために

現在はジムのアルバイトや単発の介護スタッフをしながら、パワーリフティングのトレーニングに励んでいる森さん。50代半ばという年齢だからこそ「筋トレは重要」だと言う。

「私の世代は何もしなければ年に1%、さらに高齢になると筋量が落ちるスピードは加速すると聞きました。健康のためにも介護予防の点からも筋トレって大事だと思っています」

森さんは週5でベンチプレス、週2でスクワット、週1でデッドリフトが回るようにメニューを組んでいる。つまり、ある曜日はベンチプレスのみだが、別の曜日はベンチプレス+スクワットもしくはデッドリフトも練習するという具合だ。

BIG3を伸ばすために必要な補助種目もしっかり取り入れている。例えばスクワットの日は、メインのローバースクワットではそれほど重量を持たず、補助種目で高重量を扱っているのだそう。こうすることでメインの重量も伸びていくという。

このときの補助種目はハイバースクワット・ブルガリアンスクワット・レッグプレス。さらに時間があればVスクワットをやることも。レッグプレスやVスクワットはマシン種目なので、森さんは220kg〜230kgを10回行っている。

森由美さん

「完全なる自己満の世界ですが、体重50kgなのに重たいものを挙げるのが楽しくて!」と声を弾ませる森さん。おばちゃん体型とはおさらばし、若々しいと周りから言われるようになった。さらに若い頃は崩しがちだったメンタルも身体と共にたくましくなり、心もマッチョに。

森さんの最終目標は「死ぬまで介護を受けることなく、自分の足でトイレができる自分でいられること」。すでに年齢別で4つの日本記録保持者だが、年齢を重ねても記録の保持者であり続けたいという森さんのパワフルさは、これから輝きを増すだろう。

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取材・文:小笠拡子 撮影:岡 暁

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